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キャロライン・ケネディ米大使 笑顔とシワは「○」 実力は「?」

WiLL 2014/4/12(土) 15:58配信 (有料記事)

大使ポストの値段

 どんな高額の申し出にも屈しない高潔な人間などまずいない。
ジョージ・ワシントン

「すべての大口寄付者の喉まで出かかっているのに語られない疑問がある。大統領に望ましい外交ポストに任命してもらうには、本当のところ、いくら払えばいいのか。」

 バラク・オバマ大統領二期目の開始早々、『ニューヨーク・タイムズ』(二〇一三年二月一日付)に掲載された、米国大使ポスト「売買」の実情を伝える記事の冒頭部分である。
 もちろん、いくら市場重視の米国とはいえ、表向き、大使に限らず公職の売買などもってのほか。実際、一九八〇年に制定された外務職員法(Foreign Service Act)は、職務の専門性を重視し、職業外交官以外の人物の登用、いわゆる政治任用に厳しい制約をかけている。にもかかわらず、歴代大統領は大使ポストの三割に非職業外交官を起用してきた。
 大統領選挙期間中は政治任用の濫用を厳しく批判していたオバマ候補も、大統領就任後は、むしろいままで以上に政治任用を「活用」し、その数は大使の四割近い。
 政治任用には大きく分けて、二つのタイプが存在する。ひとつは、政治任用の本来の趣旨に沿って有能で政治力のある人物、たとえば大物政治家を戦略的に重要な国の大使に任命する場合である。そしてもう一つが、純粋(?)の官職売買ともいうべき、大統領選挙運動中、多額の寄付あるいは集票に多大な貢献をした、外交とは無縁の素人を任命する場合である。
 冒頭に記した「喉まで出かかっている疑問」に答えるべく、いかにも米国らしく、大学教授が本格的な数量分析を行い、その結果が上述の『ニューヨーク・タイムズ』の記事でも触れられている。原論文の四通りの推計値を(一ドル=百円換算で)単純平均し、日本と欧州主要四カ国(英仏独伊)大使の値段を示したのが表1である。あくまで推計値であって、実際にその金額が支払われたわけではない。目安として見ていただきたい。なお当然ながら、五カ国とも政治任命である(日本はジョン・ルース前大使)。
 選挙費用の高騰に伴って大使の価格も鰻登りで、欧州やアジアの快適な任地は一億円未満ではとても手に入らないといわれており、推計値もそれを裏付ける(日本の推計値上限は一億一千万円)。もちろん、職業外交官など問題外。プロは中央アジアやアフリカ南部など、セレブが行きたがらない任地で我慢するしかないのだ。
 なお、フランスの値段が高く、イタリアも伝統的に最重要ポストとされるイギリスと肩を並べる水準なのは、観光地にはプレミアムが付くことによる。
 その政治任用の大使たちには一体、どんな人物が選ばれているのか。各省長官や最高裁判事と同じく、大使も上院の承認が必要なので、大使候補は上院での質疑応答を切り抜けなければならない。
 元外交官で作家のジェームズ・ブルーノは「なぜ米国はこんなに多くの愚かな資格のない駄馬を海外に派遣するのか」(『ポリティコ・マガジン』インターネット版、二〇一四年二月七日付)と題した論評で、次のような最近の実例を紹介している。
 ホテルチェーン・オーナーのノルウェー大使候補は任地国が立憲君主制であることを知らず、テレビドラマ・プロデューサーのハンガリー大使候補は米国が任地国に持つ戦略的利害が何か全く返答できなかった。
 ところが、こうした「残念な人」であっても、まず上院での承認を得ることができる。大使ポストの「売買」は民主・共和両党にとって貴重な資金源であり、大使候補の能力識見に目をつぶるのが暗黙の了解事項となっているのだ。
 米政界の大立者ジョン・マケイン上院議員といえども、嫌味をいうのがせいぜい。「この信じられないほど高い資質をお持ちの候補のみなさんにこれ以上、質問はありません」と。本文:6,027文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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福井義高(青山学院大学教授)

最終更新:2014/4/12(土) 15:58

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