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除染亡国論ー「1ミリシーベルト神話」が復興を阻む【櫻井よしこ】

WiLL 2014/5/7(水) 15:25配信 (有料記事)

なぜ復興が進まないのか?

 東日本大震災から三年が過ぎました。この間、被災地の歩みを自分なりに見てきましたが、新聞やテレビなどが伝えるように被災地の復興はなかなか前に進んでいません。なぜ進まないのか。その理由のひとつとして、メディアや政治家、さらに被災地の人を含め、多くの日本国民に科学的視点が欠落していることがあるのではないかと感じています。たとえば放射能に対する認識です。
 福島の人たちをはじめ、私たちが放射能を恐れるのは、第一にそれが目に見えないこと、さらに線量を多く浴びると健康に悪影響を及ぼし、癌を発生する恐れがあるからです。
 しかし、一人の患者が癌にかかったとしても、この人の癌は放射能ゆえなのかということはなかなか判断できません。なぜなら、煙草も塩分も、太りすぎも瘠せすぎも、無茶な生活も皆、癌の原因になるからです。原因が特定しづらいからこそ、疫学調査が必要です。その点、世界で最も信頼されているのが広島、長崎の被爆者の疫学調査です。
 日本が戦後初めて国勢調査を行った昭和二十五(一九五〇)年、二十八万四千人の被爆者が登録されました。政府はそのなかから継続して調査をすることができる約二十万人を選び、この人々と、年齢、性別の一致する対照群を比較のために選びました。そして被爆者を爆心地からの距離によって分け、一人ひとりに詳しい聞き取り調査を行いました。
 被爆の瞬間、どのような状況で被爆したのか、戸外にいたのか屋内にいたのか、立っていたのか座っていたのか、または周りに遮蔽物があったかなかったかに至るまで、詳細に調査しています。
 この膨大な数の人々に原爆手帳を配付し、彼らの健康調査を日本政府は幾十年も続けました。その結果、世界の科学者たちが辿り着いた結論は、百ミリシーベルト以下の低線量被曝の健康への影響は認められないというものでした。
 ただし、これは影響がないという宣言ではありません。百ミリシーベルト以下の低線量被曝では、放射線が癌をひき起こす科学的なエビデンス(証拠)がないという意味です。癌の原因には、前述のように多くの要素があり、各々百ミリシーベルトの放射線と同等かそれ以上の要因となることも考えられるからです。
 科学的な要素に加えて、政治的、経済的、社会的、心理的な要因も考慮する必要があります。そこで、国際放射線防護委員会(ICRP)は、年間百ミリシーベルト以下の低線量被曝の人体への健康被害は明らかではないとしつつも、被曝量はできる限り少ないのがよいとの視点に立って、次のような基準を設けました。本文:10,410文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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櫻井よしこ

最終更新:2014/5/7(水) 15:25

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