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アベノミクスで「増税版バカの壁」に風穴が【田村秀男】

WiLL 2015/1/12(月) 14:25配信 (有料記事)

エコノミストや日経新聞が喧伝する楽観論は幻想だった

 衆院総選挙での自民党圧勝は、ひとえに安倍晋三首相の政治センスによる。首相は二〇一五年十月に仕組まれていた消費税再増税を先送りすると同時に、「アベノミクス解散だ」と宣言して争点を経済政策に設定した。消費税増税で日本経済が沈むことも、民主党など野党側がアベノミクスに代わる日本再生案を示すことができないことも国民大多数が見抜いたし、首相はそんな世論を汲み取ったのだ。
 総選挙後の緊急課題は、二〇一四年四月からの消費税増税ショックからどうアベノミクスを建て直すか、である。そこには、安倍首相が総選挙勝利で獲得した巨大な「ポリティカル・キャピタル」(政治資本)がモノを言う。言い換えると、総選挙自体がアベノミクスを巻き直すための新たな動力を呼び込んだのである。
「政治資本」とは、蓄積し、増殖する資源である資本という概念を政治家に適用した用語で、党内の支持勢力の大きさ、世論の支持率の高さなどで計られる。安倍首相は金融緩和による脱デフレを掲げて二年前の衆院総選挙で民主党を政権の座から引きずり降ろしたあと、異次元金融緩和、機動的財政出動と成長戦略の三本の矢であるアベノミクスで高い支持率を維持した。ところが、今年四月の消費税率八%への引き上げのあとに景気は急降下し続けてきた。
 十月下旬、経済指南役の本田悦朗内閣参与・静岡県立大学教授は首相に対し、「七~九月期に年率三・八%以上の実質成長率にならないと、今年度はマイナス成長に陥る恐れがあります」と試算値を提示していた。その時点で、八、九月の消費、実質賃金や設備投資などの経済指標の悪化がはっきりしていた。
 消費税増税前の駆け込み需要の反動がくる四~六月期に景気が急下降しても、七~九月期には「V字型」回復を遂げるという内閣府や財務省寄りの学者・エコノミストや日経新聞が喧伝する楽観論は、幻想だった。
 安倍首相は、「エコノミストや経済学者は、ほんの数人を除けば信用できない。日銀も間違ったな」と周辺に漏らした。デフレに舞い戻るという悪夢を首相は何よりも恐れた。消費税増税しても金融緩和で景気へのマイナス効果を相殺できるとして、首相に「予定どおりの増税」を進言してきた財務省御用の東京大学教授たちや黒田東彦総裁にも、首相は不信感を露わにしたのだった。
 今年度全体がマイナス成長になれば、「アベノミクスは失敗」とのレッテルを野党からはもちろん、与党内の反安倍勢力からも貼られ、世論の支持率も急落しよう。マイナス成長を指し示すデータが判明する来年春頃には安倍首相の政治資本は一挙に喪失、安倍追い落としの政局に突入しかねない。本文:16,238文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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田村秀男【産経新聞特別記者】

最終更新:2015/1/12(月) 15:28

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