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「テロリスト」vs「公安外事三課」の闘い【大島真生】

WiLL 2015/3/16(月) 16:16配信 (有料記事)

日韓ワールドカップを狙ったテロ計画

 イスラム教過激派組織「IS」がフリージャーナリストの後藤健二さん(四七)を殺害したとしてインターネット上で公開した映像は、日本人に大きな衝撃を与えた。映像では、跪かされた後藤さんにナイフを突き付け、カメラの向こうの日本人に英語で語り掛けるイギリス人とみられる黒い覆面姿の男が、「アベ(安倍晋三首相)、お前の国民を、場所を問わずに殺戮する」「日本にとって悪夢が始まる」などと邦人を狙った無差別テロを予告する声明を発したからだ。
 イスラム過激派が、日本をテロの標的として名指しをしたのは今回が初めてのことではない。二〇〇四年三月、ウサマ・ビン・ラディン(二〇一一年に殺害)の指導下にあった国際テロ組織「アルカーイダ」の傘下組織のものとみられる声明が、アラブ首長国連邦のアラビア語紙「アルクッズアルアラビ」に掲載されている。
 日本を「米国の下僕」と名指ししたこの声明では、二百人の死者を出したスペイン列車爆破テロと同様の攻撃を日本に加えると予告していた。声明を出した組織は、マドリードで列車爆破テロを実行したアルカーイダ系のテロ組織「アブハフス・アルマスリ旅団」を名乗っていた。
 だが、今回と大きく異なるのは、湯川遥菜さん(四二)と後藤さんという二人の邦人を実際に殺害したうえで、対象を日本に限定してテロ攻撃を明言している点だ。二〇〇四年の声明では、米国の下僕として日本だけでなくイギリス、イタリア、オーストラリア、サウジアラビア、パキスタンの五カ国も挙げており、テロ予告というよりは、二〇〇一年九月の米同時多発テロを受けて「テロとの戦争」に邁進していた米国と、それを支持する西側諸国への牽制というニュアンスが感じられた。
 また、日本で実際にイスラム過激派によるテロが可能かという疑念も強かった。
 米中枢同時多発テロの主犯格でアルカーイダのナンバー3だったハリド・シェイク・モハメドは、米捜査当局の取り調べに「二〇〇二年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会を狙ってテロを計画したが、日本にはインフラ(支援網)がなく、断念した」と供述していたことが当時、明らかになっており、警察幹部も「警戒はしているが、声明どおり日本人がイスラム過激派のテロに巻き込まれるとしたら、やはり海外だろう」と語っていた。
 だが、時代は変わった。日韓W杯からは十三年もの月日が過ぎた。「自分にはISと交渉するチャンネルがある」と語り、ISに合流して戦闘員になりたいとする北海道大生を仲介した日本人イスラム法学者の元大学教授まで現れている。
「中東系の外国人は日本では目立つ」として高を括っていた警察幹部も、「米国への憎悪を剥き出しにするイスラム過激派が米国の同盟国である日本を十三年間、放っておいたと考えるのは楽観的過ぎる。もちろん我々も手をこまねいていたわけではないが、二〇二〇年東京五輪に向けて国際テロの脅威は確実に高まっている」と指摘する。
 北大生の存在は、中東系ではなく日本で生まれ、日本で育った日本人による「ホームグロウン・テロ」の脅威も顕在化させた。自国でテロに及ぶホームグロウン・テロの脅威は世界中に広がっている。
 昨年十月、カナダの首都オタワの連邦議会議事堂で起きたライフル銃乱射テロは、イスラム教に改宗したケベック州出身の地元カナダ人による犯行だったが、イスラム過激派との関係が疑われているのだ。
 ISが「フルカーン」と呼ばれる広報部門を持ち、高度な映像編集の技術とインターネットを駆使する洗練された宣伝活動を行っている事実は、感化されたホームグロウン・テロリストの誕生を日本でも現実のものにしかねない危険性を生じさせている。シリアに渡航しようとした北大生の行動も、こうした宣伝活動の成果と言える。本文:12,248文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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大島真生(産経新聞記者)

最終更新:2015/3/16(月) 16:16

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