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“いじめ自殺”教育現場に求められる「発想の転換」【門田隆将】

WiLL 2015/8/3(月) 18:06配信

絵に描いた餅だった「いじめ防止対策推進法」

 ああ、またか。そんな感想で済まされるものではない。実態を知れば、怒り、それも、どうしようもない激しい感情が、ふつふつと湧いてくるのではないだろうか。
 岩手県矢巾町の中学二年、村松亮君(13)が七月五日、いじめを苦にJR矢幅駅で列車に飛び込んで自殺した事件は、真相が明らかになるにつれ、怒りと失望、そしてこの国の教育行政のお粗末さに、あきらめにも近い感情を日本中に広げている。
 村松君は連日、特定のグループから頭を叩かれ、髪の毛を掴まれて机に頭を打ちつけられていた。その姿は度々、目撃されており、いじめの事実は周囲の誰もが知ることだった。さらに、村松君自身も担任と交換していた「生活記録ノート」に〈なぐられたり、けられたり、首しめられたり〉と書き、〈先生にはいじめの多い人の名前をおしえましょう。もうげんかいです〉 〈づっと暴力、づっとずっとずっと悪口、やめてといってもやめない〉 〈氏にたい あーもうやだ〉 〈もう市ぬ場所はきまってるんですけどね。まあいいか〉……等々、SOSを出し続けていた。それに対して、担任の女性教師は、〈上から目先ですね〉とか、〈明日からの研修たのしみましょうね〉と、最後までSOSに対応しなかったのである。
 同様の事件が何度起こっても、それらを教訓としない日本の教育行政と現場には、怒りと虚しさを抑えられないのは当然だろう。
 その原因はどこにあるのか。
 私は、まず、いじめによる自殺の意味を大人が「認識していない」ことにあると思っている。それは、いじめによる自殺とは「復讐である」ということだ。力のない、いじめの被害者には、それ以外に反撃する術がない。
 今回の事件もまた、村松君がおこなったのは、一義的には「いじめをやったワル」たちに対して、二義的には、SOSを発しても、自分を助けてくれない「学校を含む大人たち」に対しての「復讐」だったと思う。自分が「死ぬ」ことによってしか、自分の思いを伝えられない社会は、「地獄」そのものだ。
 私は、一昨年成立した「いじめ防止対策推進法」のきっかけとなった大津中二いじめ自殺事件のことを思い起こす。万引きの強要や集団リンチを受け、「葬式ごっこ」や「自殺の練習」までさせられていた中二の男子生徒は、最後には自宅に押しかけられて、お金を奪われる。自殺を仄めかすメールを加害者らに送るが相手にされず、翌日、自宅マンションから飛び降り自殺する。しかし、いじめの当事者たちは、自殺した生徒の顔写真に落書きし、穴を空けたりして笑っていた。そして、自殺後のアンケート調査では、「死んでくれて嬉しい」「死んだって聞いて笑った」と記載している。学校と教育委員会はいじめに気づいていたが、虚偽の発表をおこなって激しい非難が巻き起こったのは周知の通りだ。
 しかし、この事件をきっかけに成立した「いじめ防止対策推進法」が「なんの効力も発揮していない」ことを、今回、村松君が自らの「死」で証明してみせた。

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最終更新:2015/8/3(月) 18:46

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