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恥、忍耐、尊厳を喪失した戦後日本の欺瞞とアメリカ【佐伯啓思】

WiLL 2015/8/6(木) 15:22配信 (有料記事)

今年は、本当に「戦後70年」なのか?

 新聞や雑誌をはじめ多くのメディアで戦後70年特集が組まれ、安倍首相は戦後70年の“節目”として談話を発表するとしています。しかし今年は、本当に「戦後70年」なのでしょうか。  
 この何年か、私は新入生に、4月28日は何の日か訊いてみたのですが、知っている学生はほぼゼロでした。サンフランシスコ講和条約の発効の日だというと、ようやく「あああれか」という感じでした。4月29日の昭和天皇の誕生日や5月3日の憲法記念日についても、答えられる学生は半数にも満たなかったのです。  
 サンフランシスコ講和条約にせよ、昭和天皇にせよ、憲法にせよ、すべてあの戦争絡みであって、いまの若者にとっては過ぎ去った歴史的出来事になってしまったように見えます。しかし実は、その彼らも、サンフランシスコ講和条約で固められた現在の体制のなかに生息し、憲法を当然のものとして受け止めています。  
 となると、あの戦争は遠くなったどころか、本当はあの戦争の産物である「戦後体制」のなかにどっぷりと浸かっており、しかもその自覚をまったく失っている、ということになるのではないでしょうか。
 戦争が正式に一応終息するのは、1945年(昭和20年)9月2日のミズーリ号上で行われた降伏調印であり、アメリカなどもこの日を戦争終結の日と捉えているようですが、国際法的形式にしたがっていえば、本当の戦争終結は、1952年(昭和27年)の4月28日に発効したサンフランシスコ講和条約によって、ということになります。  
 講和条約の第一条には、日本と連合国との戦争状態はこの条約の発効とともに終了する、とあります。この条約は主として英米蘭などとの講和であって、中韓やソ連を含むものではありませんでしたが、国際法上、公式に戦争を終結したのは52年4月28日ということを意味します。  
 つまり、正式かつ公式的には日本の「戦後」は52年から始まったことになるのです。したがって、「本当」は今年で戦後63年ということになります。
 ところが、国民の多くもメディアも、「戦後」と言えば1945年の8月15日から始まったと信じて疑いません。
「そこまで形式にこだわる必要はないのではないか」とすれば、それは決定的に大事な点を見落としたことになります。本文:19,953文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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佐伯啓思(京都大学名誉教授)

最終更新:2015/8/6(木) 15:22

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