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問題作『Unbroken』は「反日映画」なのか【古谷経衡】

WiLL 2015/8/12(水) 11:35配信 (有料記事)

強調される「日本」と「サド性」

本作は二〇一四年十二月二十五日のクリスマスに全米公開(グアム含む)されているが、未だ日本では公開の目処すら立っていない。そのため、一四年末にグアムの映画館で話題の『unbroken』を見てきた。
 結論から言うと、「気持ちの悪い駄作」である。
 ご存知の方も多いと思うが、本作は大東亜戦争中に日本軍の捕虜になったアメリカ軍兵士、ルイス・ザッペリーニの捕虜収容所での体験を綴った原作小説を映画化したもの。
「日本兵はアメリカ人捕虜の人肉を食べていた」などというおぞましい原作中の表現が、映画のなかにも登場するか否かが日本の一部メディアで注目されていた。だが、人肉食のシーンはさすがに史実に忠実ではないと考えたのか、一切登場していない。
 以下、簡単に本作のあらすじを追っていこう。物語の開始は第二次世界大戦前の一九二〇年代。主人公のルイス少年はイタリア系移民一世の両親を持つ貧しい家庭に生まれたが、ランナーとしての才能を兄に見出され、やがて地元の予選を勝ち進んで一九三六年のベルリン・オリンピックの中距離ランナーとして出場、一躍有名人となる。
 次期五輪(一九四〇年東京)への出場も有望視されていたが、戦争勃発によって東京五輪は幻となり、ルイスはB24爆撃機の搭乗員として中部太平洋戦線で日本軍と戦う日々を送る。
 そんな折、B24のエンジントラブルから太平洋のど真ん中に墜落、ルイスを含め乗員三名のみが生き残り、約二カ月間にわたって漂流生活を続ける(漂流中に一名死亡)。
 実に本作の前半部分のほとんどは、この太平洋での漂流シーンに費やされている。この辺り、明らかに二〇一二年にアカデミー賞(四冠)を受賞した『ライフ・オブ・パイ──トラと漂流した二二七日──』を意識した構成となっている。
 長い漂流生活で身も心も限界を迎えたルイスは死の寸前、日本の軍艦に救助されるが、ここからが怒濤の「日本軍による米兵捕虜虐待シークエンス(場面)」の始まり。
 まず、ルイスはマリアナ諸島の日本軍基地に送られ、日本兵から殴る蹴るの暴行を受けたあと、全裸にされて冷水をぶっかけられるという屈辱をひと通り受け、日本本土の捕虜収容所(東京)に移送される。
「本当はオリンピックで来るはずだった東京に、捕虜の身で来ようとは……」
 日本兵は捕虜たちに、毎日のように暴行と陵虐を繰り返す。
 なかでも、「渡辺」を名乗る若い日本人将校(ミュージシャンのMIYAVI氏役)が、異様な嗜虐性でルイスの前に襲い掛かってくる。キスでもしそうなほど顔に口を近づけて、冷徹な英語で「お前たちは日本の敵だ」と静かに言い放つ渡辺は、特有の切れ長の眼光がさらにサド感を漂わせている。
 渡辺は倒錯した日本人として描かれているが、その嗜虐性は明らかにスピルバーグの『シンドラーのリスト』に登場するナチのSS将校、ゲート少尉にそっくりである。
 ゲート少尉は、その日の気分でユダヤ人を射殺することを趣味にしている男だが、渡辺は射殺こそしないものの、気分で殴る蹴る、竹刀で叩くなどの暴行を加えるサド性は明らかにゲート少尉を彷彿とさせるものだ。本文:10,232文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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古谷経衡(評論家)

最終更新:2015/8/12(水) 11:35

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