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【戦後70年 特別寄稿】昭和天皇とヴィクトリア女王(下)

WiLL 2015/9/11(金) 18:01配信 (有料記事)

英大衆紙の不敬記事

 私たちは過去の戦争について考える際に、とかく米日両国の戦争という見方にとらわれがちですが、幕末以来の歴史を眺める際には英日の優勝劣敗の歴史として見ると、別の視角が開けてくるのです。ここでヴィクトリア女王と昭和天皇のお話、それも話しづらい話題である戦争責任についての話に入りましょう。ヴィクトリア女王はいまから百十三年前に亡くなられましたが、昭和天皇はいまから二十六年前に亡くなられました。  
 私は昭和六十三年、西暦の一九八八年九月十九日、イギリスのダラムにおりました。そこでヨーロッパの日本関係の学者が二百人ほど、ダラムのお城の大広間に集まりました。全欧日本学会が開かれるその夜、会長のニッシュ博士が開会に先立ち、
「BBC放送が先ほど、裕仁陛下が御不例であると放送いたしました」  
 と告げたのです。“seriously ill”の言葉に、大広間はしんと静まり返りました。その報せは日本に関心をもつ各国の学者の念頭を学会の間中、ずっと離れませんでした。休み時間の話題になっただけではなく、天皇御不例の報道に接して、 「裕仁天皇の昭和の日本とは、世界史的に見ていかなる時代であったのか」  
 という問題意識が、図らずも参会者の間に広まったからです。  
 イギリスでは昭和天皇御不例のニュースが流れるや、イギリスの大衆新聞『サン』とか『デイリー・スター』がまことに不敬でありますが、「地獄がこの真に悪逆なる天皇を待っている」という大見出しを第一面につけました。九月二十一日号に、“Hells Waiting for this Truly Evil Emperor”と印刷しました。  
 これは酷い、趣味も悪い、失礼である。私がそう感じたのは私が日本人で、その私は立憲君主制の支持者で、裕仁天皇に対して敬愛の情を抱いているからですが、なにも私だけではありません。これは酷い、趣味も悪い、失礼である、と感じた方はイギリス人にもおりました。  
 その夜の学会のパーティーでも、イギリスの日本学者たちは概ね顔をしかめ、しきりと話題にいたしました。『デイリー・スター』が第二次世界大戦の生き残りの兵士の日本に対する反感を伝えたのは、そういう感想もあるのは事実なのだから致し方ない。しかし、『サン』が論説にも見出しと同様の「地獄がこの真に悪逆なる天皇を待っている」と述べたのは許し難い、英国の日本学者たるものよろしく反論を書くべきである、などと口々に申しておりました。本文:16,397文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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平川祐弘(東京大学名誉教授)

最終更新:2015/9/11(金) 18:01

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