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「台湾総統選」が持つ意味【門田隆将】

WiLL 2015/11/10(火) 18:07配信

朱立倫に候補者をすげ替えた国民党の真意

さすが東アジアの「運命を決する」とも言うべき、選挙である。異例の経過を辿る台湾総統選が興味深い。
 十月十七日、台湾の与党国民党は臨時党大会を開き、「総統選候補」を洪秀柱・立法院副院長(67)から朱立倫・国民党主席(54)=新北市長=にすげ替えた。投開票は来年「一月十六日」であり、その三カ月前に与党公認候補が代わるという前代未聞の事態である。
 しかし、私は、なりふり構わぬこのやり方に、さもありなん、と思っている。それは、この選挙が文字通りの「生き残り」を賭けたものだからだ。生き残りとは、狭義には、国民党という存在の生き残りであり、広い意味では、台湾、そして日本を含む東アジアの民主主義の今後にもかかわるのではないか、と思っている。
 来年の台湾総統選は、一体、どんな意味を持つのか。「蔡英文vs朱立倫」という激突が何を意味するのか、少し考えてみたい。
 洪秀柱女史が、なぜ国民党の総統候補を降ろされたのかは、直接的には、もちろん支持率の低迷である。しかし、重要なのは、その支持率低迷の原因となった彼女の発言だ。
「最終的には、中国との統一が必要だ。ただし、統一するのは私たち中華民国だ」
 洪女史は、こんな発言を繰り返し、支持層に困惑を広げた。なぜなら、「国力」からいっても中国との統一が台湾中心になるわけがないからである。しかし、いずれにしても、彼女の発言から、国民党の本音が「中台統一」に向かっていることが、あらためて明らかになったのだ。
 台湾のおよそ七割の人々が中国との関係で「現状維持」を望んでいることは、これまでの各種世論調査で示されてきた通りだ。民主主義が存在しない中国と一緒になりたくはないが、さりとて台湾独立へ向かえば、中国の軍事侵攻を呼ぶ。そこで、「現状維持」という策が最も支持を集めているのである。
 繰り返された洪女史の発言に焦ったのは、総統選との「同日選挙」で当落が決まる立法院の国民党候補者たちだ。七割の有権者を敵にまわしては、自分たちが“壊滅”してしまう。台湾の立法院で、与党国民党が全体の三分の一以下に落ち込めば、民進党による「憲法改正」が現実問題として浮上してくる。
 つまり、それは長く台湾を支配してきた「国民党」の終焉を意味するのである。

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最終更新:2015/11/10(火) 18:07

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