ここから本文です

スペインが受注したサウジの高速鉄道計画が難航。原因は「砂漠の砂」

HARBOR BUSINESS Online 1月17日(日)9時21分配信

 スペインの12社から成るコンソーシアムがサウジアラビアに建設中の高速列車(AVE)の工事に支障が生じているという。既に解決済みとされていた砂漠の線路に溜る砂の多さが安全運行に支障をきたす様相を呈しているのだ。それをスペイン側に伝えるべく、昨年12月19日付でサウジアラビア鉄道公社のジェネラル・マネジャーバサウ・アウメッド・グルマン氏の署名による書簡がスペインコンソーシアムに送られ、4日以内の解決を要求したという。その書簡にはそのコピーを検査管理をしているドイツのエンジニア組織DBインターナショナルに送っている旨も明確にされていたという。

 問題の高速列車とはサウジアラビアの2つの巡礼地メッカとメディナを結ぶ450km間の列車で、建設総工費は67億3600万ユーロ(9100億円)。当初、フランスの高速列車(TGV)が受注する可能性が強いとされていたが、スペインのファン・カルロス前国王(当時国王)がアブドラ前国王(当時国王)をリヤドに訪問して説得に努めたという。しかも、AVEの方がTGVより建設工事の見積もりで20%安価であったということも手伝って、スペインの12社から成るコンソーシアムが受注した。そして2012年に契約が交された。が、問題は線路に溜る砂漠の砂の処理と暑さが列車の正常な運行の障碍になるので、それをどのように解決するかという点にあった。(参照:「El Pais」)。

 しかし、建設工事が開始されてから現在までこの問題が未解決になっているとサウジアラビアの鉄道公社が指摘したのである。それを上述したようにサウジ鉄道公社が書簡で公にしたのである。

 書簡の主旨は、線路の土台の上に堆積する砂を防止するという問題が9か月も解決されておらず、その区間での列車の試運転も始めねばならない時期に来ているので早急なる解決を請うというものであった。更に、堆積する過度の砂から判断して、線路を敷く土台が砂の侵入を少なくするには不適切な構造であるということが明白になっているとも指摘したという。

 当初、この問題の解決策として、線路に枕木と砂利を使わず、舗装道路のようなコンクリートの上に線路を敷く構造を採用した。そして、舗装面に傾斜を設けて砂の溜りを少なくし、更に、125か所にセンサーを設置して、列車が通過した時の発信する音で、砂が溜っているか否かをチェック出来るシステムを配備するという計画だった。また、砂が風で線路のほうに運ばれるのを防ぐコンクリートの防禦壁も設けることも決まっていた。しかし、現在建設を進めている過程で、砂の堆積を緩和するこれら一連の策が役に立たないことが判明したのだ。

◆コンソーシアム内でも軋轢が

 上述の書簡が現れる以前に、コンソーシアムを構成しているコパサ(Copasa)とイマティア(Imathia)の2社が昨年10月22日付でコンソーシアム本部に送った書簡の中では、線路を敷くコンクリートの土台のサイズと構造が正しいく造られていないと言及され、その修正の為の費用をこの2社は負担しないと伝えていた。(参照:「El Confidencial」)。更に、2社はメッカとメディナの間を結ぶ区間の砂の動きが充分に研究されていないことにも触れたという。

 高速列車は砂丘を横断し、そして石に砂が堆積した砂漠も通過するが、そこでは風の動きで砂が猛烈なスピードで移動して堆積する。128.88kmの地点からコンクリートの土台になるが、そこから高さ5メートルの防禦壁を設けて砂の侵入を防ぐことになっている。しかし、まだ建設されていないその防禦壁が現状の堆積する砂の量から見て果たして 役に立つか否か疑問が生まれたというのだ。

 事態の深刻さを鑑みて専門調査期間イネコ(Ineco)が問題とされている117-227km地点の区間1620平方mの砂漠の状態を調査し、1年前にその最初の調査報告がコンソーシアムに渡されたという。それによると、建設予定になっている防禦壁では砂の侵入を防ぐには不十分であるという調査結果になったという。

◆契約優先で事前調査が疎かに

 コパサとイマティアが指摘しているように充分に事前の調査が実施されていなかったということになる。そしてその調査書がコンソーシアムに渡されたのは1年前ということは、既に建設工事が進められている最中に渡されていたことになる。工事を開始する前に充分に調査したのではないのだ。この点についてスペイン電子紙『El Confidencial』は〈受注する前に充分な調査を進めることは控える傾向にある〉と指摘している。何故なら、その後、〈受注を他社にもって行かれると、調査に費やした費用がまったく無駄になってしまうからだ〉と言及している。

 しかし事前の現場調査が不十分だと今回の双方の契約のように、スペインコンソーシアムが完成後も12年間そのメイテナンスを負担することになっていることから、現状の儘だと、砂漠の砂を除去する作業をコンソーシアムの負担で12年間続けて行かねばならないかもしれない。

 2月16日にはスペインの国王フェリペ6世がサウジを公式訪問することになっている。それまでにスペイン国家の面子にかけてこの問題を解決しておかねばならない。なにしろ、今年末が完成予定になっているのだ……。

<文/白石和幸 photo by Talgo spain >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:1月18日(月)18時7分

HARBOR BUSINESS Online