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平均寿命は200年で倍に、それでも人は必ず死ぬ理由

JBpress 2月9日(火)8時0分配信

 (文:村上 浩)

 この200年間における人類の平均寿命の伸長度合いには目を見張る。1840年を起点にとれば、我々の平均寿命は1時間あたり15分も伸び続けており、この200年で倍になった計算となる。

 しかしながら、最先端テクノロジーをもってしても不老不死の実現はおろか、150歳まで生きることすら全く不可能に思える。なぜ、ヒトは老いから、死から逃れることができないのか。

 人類が思考を手にしたときから問われ続けているだろうこの難問に、エディンバラ大学進化生物学の教授である著者は、進化論を武器に切り込んでいく。

 進化論を軸に考えれば、最初に疑問に思うべきなのは「なぜ、ヒトは永遠に生きられないのか」ではなく、「なぜ、ヒトはこれほど長く生きられるのか」であることがよく分かる。著者は巧みな比喩と刺激的なエピソードを交えながら、進化が老化と死にどのような影響を与えてきたのかを教えてくれる。またその過程を通して、自然選択がどのようなものであるかが理解できる。

 死と老いの真実に近づくためには、生命誕生時にまでさかのぼる必要がある。およそ35億年前に誕生した単細胞生物に、新たな仲間として多細胞生物が登場したのは8億年前のこと。「協力的な細胞からなるアパート」である多細胞生物は、新しい細胞を使って損傷を受けた細胞や病原体に感染してしまった細胞を作り直せる、専門化した免疫細胞が病原体を撃退できる、という強力なメリットを持っている。つまり、多細胞生物は自らの集団に自衛隊や医療団を抱えているようなものなのだ。

 しかし多細胞生物への進化は、分裂や修復という役割を担った幹細胞が野放図に増殖してガン化してしまうという無視することのできないデメリットを伴ってもいた。つまり、「ガンにかかる危険性は、動物の多細胞性と、多細胞性によって得られる長寿に伴う代償」なのである。

 それでは、細胞の数が多ければ多いほど、身体が大きくなるほどガンにかかる確率は高くるはず。ところが、様々な生物種のガン罹患データは、大型の種だからといってガンに罹り易くなるわけではないことを示している。進化がガンをどのように飼いならして長寿を実現したのか、謎は少しずつだが確かに明らかにされていく。

■ 超高齢の人たちは老化が停止している?  

 ヒトが老いを感じるのは、鏡に写る顔にシワが増えたときだろうか、階段を駆け上がっただけで息があがってしまったときだろうか。その感じ方には個人差があるだろうが、老化の死亡率への影響は確かなもの。19世紀の保険数理士であったベンジャミン・ゴンベルツは、多くの人が何歳で死亡したかを示すデータを調べ、「死亡率は一定の期間ごとに倍になる」ことを示した。

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最終更新:2月19日(金)17時15分

JBpress