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日本サッカーにも「ウイング」の育成と台頭を望みたい

SOCCER DIGEST Web 2月11日(木)16時0分配信

日本には「混血種」のようなウイングバックが多い。

 ウイングの役回りは、タッチライン際という局面において、1対1や2対2あるいは2対3をいかに打開するか、にある。サッカーの中でも特殊なポジションで、敏捷性や勘の良さという野性と技術の洗練が必要になる。単独の突破力、そして連携を成立させるためのインテリジェンスが不可欠だ。

 進化を続けるモダンサッカーにおいてウイングは、“過去の遺物”のように捉えられることもある。しかしその革新にこそ、ポゼッション型アタッキングフットボールの未来があるのだ。

 ウイングの役割はポゼッションに唯一無二の光明を与える。一方でウイングプレーヤーも、ボールを大事にするチームでなければ「守備力が足りない」と切り捨てられ、その価値の半分近くを失ってしまう。

 すなわち、ウイングとポゼッションはいわば一心同体なのだ。相思相愛で離れがたい間柄と言える。余談だが、バルサがスポルティングと強いパイプを持っていることは必然かもしれない。

 翻って日本は、サイドバックにもウイングにも人材が乏しく、一方で混血種のようなウイングバックが多い。ウイングバックはどちらの性格も兼ねた存在にも映るが、ポゼッション重視の攻撃サッカーを完成させるパーツにはならないと言われる。拙著『「戦術」への挑戦状』で記していることだが、クライフに至ってはウイングバックの“撲滅”を強く訴えているほどだ。

 Jリーグでは、FC東京の石川直宏がウインガーの条件に当てはまるだろうか。また横浜F・マリノスの齋藤学、浦和レッズの関根貴大もサイドでボールを持ち出すときにはウイングの匂いが濃密に漂う。決してボールをこね回さず、周りをタイミング良く使えるし、鋭い切り返しで縦も中も突ける。さらにFC東京の水沼宏太も、クロス精度に定評があるうえ、幅を使いながら周りと呼吸を合わせる上手く、ウイングの素質を持っている。

 日本サッカーにも、ウイングの育成と台頭を待望する。

文:小宮良之

【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。

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最終更新:2月11日(木)16時0分

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