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「父はこんなに野蛮じゃない」実在した反乱軍リーダーの家族が『コール オブ デューティ』を提訴

おたぽる 2月16日(火)11時0分配信

 急速に進歩を遂げた3Dグラフィックス技術で、ゲーム世界の“住人”も今や実写に近い存在感を持ちはじめている。モデルとなっている実在の人物を、ビジュアル面でもありありと再現できるようになったといえるが、これがまた別の問題を引き起こしているようだ。先日はアンゴラ反政府軍のリーダーの家族が亡き父親が不名誉なかたちでゲームに登場しているとしてゲーム会社を訴えたのだ。


■家族「父親が“野蛮な”リーダーとして描かれている」

 2002年に一応の収束を見せたものの、30年以上の長きにわたって続いたアフリカ・アンゴラ内戦――。その反政府側・アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)の創始者で元リーダーの故ジョナス・サヴィンビ氏の家族が、人気のFPSシリーズ『コール オブ デューティ ブラックオプス2』に同氏のキャラクターが登場し、“野蛮人”のように描かれているとして同作を制作販売しているアクティビジョン・ブリザードを訴えている。フランス・パリに住む故ジョナス・サヴィンビ氏の3人の子息が、アクティビジョン・ブリザードのフランス支社をナンテールの裁判所に提訴したのだ。

 ゲーム内に登場するサヴィンビ氏は圧政を敷いていたアンゴラ解放人民運動(MPLA)に立ち向かう反乱軍のリーダーとして描かれている。顔や体格、軍服や星印の飾りがついたベレー帽まで忠実に再現されており、実在した同氏をモデルにしていることは周知の前提である。

 家族はゲーム内のサヴィンビ氏が“野蛮な”リーダーとして描かれていると主張しているのだが、アクティビジョン・ブリザード側はこれに反論。「どちらかといえば好ましいキャラクター」として登場していると述べている。ゲーム内での人物設定でも、サヴィンビ氏は主人公・メイソンたちの味方側の勢力として登場しているからだ。はたして判決はどちらに軍配があがるのだろうか。


■“歴史上の人物”と表現の自由

 02年に67歳で戦闘中に戦死したジョナス・サヴィンビ氏だが、戦火が収まった今日でもアンゴラ国内での影響力はまだ根強く、一部では“神格化”がはじまっていると指摘するのは元BBCのアンゴラ特派員であるジャスティン・ピアス氏だ。

「BBC」の記事によれば、結果的にその志は遂げられずに反乱軍のリーダーのままであったサヴィンビ氏は、現役当時に魔女疑惑のある女性を生きたまま火あぶりにすることを命令したり、当時自身の立場を脅かす勢いがあったUNITAの外交官、チトー・チングンジ氏とその家族を秘密裏に暗殺した作戦の指揮を執ったとも言われおり、“神格化”するには疑問も多いということだ。

 例えばカンボジアのポル・ポト元首相や、ウガンダの“アミン大統領”など、血塗られた過去の経歴を持つリーダーたちはいくつもの映画やドラマに登場している。また、いわゆる“911”の首謀者であるといわれているオサマ・ビンラディンが11年に米軍の特殊部隊によって、殺害されたことが公表された後には、ビンラディンを銃殺する自作ゲームなどもいくつか登場している。いったん“歴史上の人物”になってしまうと、肖像権をはじめとするプライベートな権利を主張するのはたしかに難しいのかもしれない。


■ノリエガ元将軍の訴えは棄却

 実は『コール オブ デューティ ブラックオプス2』が訴えられたのはこれが初めてではなく、1980年代のパナマで軍事独裁政権を敷いたノリエガ元将軍もまた、同ゲーム内で自分をモデルにしたキャラクターが登場しているとして提訴し、14年7月に裁判を起こしている。

 ノリエガ元将軍は同作の中で誘拐や殺人を犯した凶悪な人物として描かれたと主張してアクティビジョン・ブリザードを訴えたのだが、米・ロサンゼルス郡地裁は同作の内容は「表現の自由」の範囲内にあるとして昨年10月にノリエガ氏の訴えを棄却している。この前例を考慮すれば、ジョナス・サヴィンビ氏の家族の主張もまた難しいものになるのかもしれない。

 しかしながら、現在のコンテンツ制作のクリエイターにとっては、これまで以上に肖像権を含む著作権に注意を払わなければならないことは、東京五輪のエンブレム問題などをみても明らかだろう。コンテンツもキャラクターも蓄積する一方であることから、チェックが行き渡らずうっかりしていると予期せぬ“パクリ疑惑”が持ち上がってくるからだ。そしてこのジョナス・サヴィンビ氏のようにまだ歴史的評価の定まっていない人物を題材にする際にもそれなりの配慮は必要なのだろう。
(文/仲田しんじ)

最終更新:2月16日(火)11時0分

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