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増え続ける「カープ女子」の背景に、ローカリズムの変容とマツダスタジアムの聖地化【経営学から見たカープ】

ベースボールチャンネル 2月22日(月)8時0分配信

広島出身に限らず広がる、「カープは誇り」

 球界だけでなく、世間的にも注目された「カープ女子」。
 突然、今まで球場に来なかった10~20代の女性が多く訪れるようになった。
 カープ女子は選手を応援することはもちろん、大量のグッズを購入するなど球団の経営面に大きく寄与している。

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 この現象に世間は驚き、2014年度の流行語大賞にも選ばれた。他球団もこれをモデルに女性ファン獲得にさまざな施策を打ちだした。

 カープ女子の勢いは、増すばかりである。今キャンプも女性ファンが多く、来場者は黄色い声援を送っていた。
 なぜこれほどまでに人々に注目され、いわゆるブームになっているのか? 再検証を行ってみたい。

 ブームの発端になっていると言われているのが、TVを筆頭にしたメディアの力だと言われている。確かに拡散したのはマス・メディアの力やSNSの発達などによるところは大きい。
 しかし、その根源にはローカリズムの変容と、マツダスタジアムの聖地化があるのではないかと考えている。

 昔から、広島東洋カープは広島のアイデンティティとして、存在してきた。広島の地を思い出し、県外へ出ても地域の一員として誇れるものであった。

 しかし、それが広島出身者だけでなく、他の地域、特に首都圏へ広がったのが特徴的だ。
 カープの応援スタイルは、日常的に着用することのない真っ赤なユニフォームや帽子を身につけることができる。そして、球場では一体感のあるスクワット応援をし、チーム(組織)の一員だと感じることができる。

 この経験が、広島出身者以外でもカープを強く感じることでき、強烈なインパクトを残すのである。

レジャーとしてマツダへ足を運ぶ

 社会情勢も都市部ではなく、地方に目を向けられている。洗練されたものではなく、あえて田舎臭いものを新鮮だと感じる。また、それを応援していく楽しみがあるのだろう。そのような現状をみても「カープにハマっていく」ことは理解できる。

 そして、その本拠地であるマツダスタジアムは、ボールパークとして確固たる地位を築いている。神宮や東京ドームで応援しているファンは、「いつかあの素晴らしい球場で試合を見てみたい」とファンにとって聖地化されていったのではないか。

 ゆえに、球団が意図して作ったものではなく、ファンコミュニティから生まれた現象ではないか。このファンコミュニティの現象を敏感にとらえ、グッズなどでうまくカープ球団の戦略に取り込んでいったのが、今日までの動きではないか。

 マツダスタジアムのコンセプトは「三世代が楽しめるボールパーク」だ。
 いわゆるファミリー層をメインターゲットにしており、若い女性に特化しているわけではない(ファン層が広がったとも言える)。

 むしろ、その若い女性層に早くから力を入れていたのは、パリーグの球団であり、ソフトバンク、日本ハム、楽天はファンクラブの約半分は女性会員と言われている。

 事例として、ソフトバンクは2006年から「女子高生デー」というイベントを開催し、2014年から「タカガールデー」として当日の入場者は約7割が女性というイベントになっている。また、タカガール専用サイトもオープンさせ、女性層へのファンサービスを手厚くしている。

 カープもグッズのラインナップを見れば、女性向けも増えた一方で、そこに特化しているわけではない。ここにもう一つ興味深いデータがある。2013年に旅行雑誌において、1球団単独で初めてカープ版が出版された。

 売れ行きは好評で、その後はソフトバンクや日本ハム、楽天なども制作された。しかし、第2弾が制作されたのはカープだけである。

 売り上げの傾向をみると、首都圏を中心に、関西圏でもよく売れたそうだ。これらを見ても、ファンが広島だけでなく首都圏を中心に全国に点在し、ファンがカープをレジャーだと捉え、ツーリストになっているともいえる。

 もちろん広島県内の若い女性ファンも多く、一概には言えないが、このブームの現象の分析として、広島県外、特に首都圏の女性ファンの動向は大きく影響したのではないだろうか。


藤本倫史

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:2月22日(月)8時0分

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