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無知、不勉強、小泉元総理の反原発放言

WiLL 3/2(水) 13:28配信 (有料記事)

比較対象が無茶苦茶

『文藝春秋』二〇一六年一月号に掲載された「小泉純一郎独白録」を読んで、愕然としました。小泉さんの原子力に対する無知、不勉強を自ら白状したような酷い内容です。「こんな人が日本の総理大臣を務めていたのか」と呆れ果てました。
《今やっと川内原発の二基が再稼働したけど、原発なくても大丈夫なんだ。ドイツはゼロ宣言しても、まだ原発八基ぐらい動いているだろう。日本は宣言せずに、四年半も実質ゼロでやれている(一五年十一月末時点では、国内四十三基中二基が営業運転中)》
《大飯三、四号機が定期検査入りして再び原発ゼロになって、「冬が来れば、ゼロが駄目だというのがわかる」と言われたんだ。ところが、寒い冬も暑い夏も停電ないよ。困らないんだ》
 現在(二〇一六年二月)は、原油価格の下落やLNG(液化天然ガス)価格の値下がりによって多少は緩和されていますが、原発停止を埋める火力発電所の稼働アップによる化石燃料の輸入増加により、最大で年間三・六兆円の国富が海外に流出しました。一日約百億円の損失です。小泉さんは、この事実を国民に一切知らせていません。
 一九七三年、オイルショックの年の総発電量に占める火力発電の割合は、七六%でした。その後、この反省を踏まえ、原子力発電所を建設するなどして、エネルギーの自給率向上に努めてきた結果、原子力発電が約三〇%を占め、東日本大震災直前の火力発電の割合は六二%にまで低下した。
 ところが震災後、火力発電の割合は八八%に上っています。オイルショックの年より増加しているのです。日本は足元を見られ、ジャパンプレミアムという割高な値段で購入しなければならなくなっていた。小泉さんは、“やっていけている背景”を国民に伝えていません。家計が赤字で苦しんでいるときに、「借金してもやっていけているんだからいいじゃないか」と開き直っているようなものです。
 中東情勢の不安定化により、いつまた原油価格が高騰しないとも限りません。エネルギー安全保障の観点も欠如しています。
 燃料費の増加について、小泉さんはこう述べます。
《食事している時に俺に「原発がなかったら石油、石炭の輸入額が三兆六千億円も増えるから、国富の損失だ」って、経団連の幹部が言ってきたこともあったよ。でも日本は、食料輸出と食料輸入と比べたら、輸入がはるかに多くて赤字なんだ。「じゃあ、食料輸入赤字で『国富の損失だ』と言ったことあるか」って言ったら、それ以来、原発ゼロで貿易赤字になるなんて一切言わなくなったよ。その人、社長だからね。面白いもんだよ》
 一体、何を言っているのでしょうか。比較対象が無茶苦茶です。
 食料は貿易自由化や減反といった国の長年にわたる農業政策の結果、生じた構造的な問題であって、その話と原発停止による燃料費の増加、すなわち原発を稼働させていれば生じない損失額とを比較すること自体、おかしな話です。
 社長がそれ以来、一切言わなくなったのは、「もう、小泉さんに何を言っても無駄だ」と諦めたからではないでしょうか。本文:13,806文字 この記事の続きをお読みいただくには、WiLLプレミアム on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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奈良林直(北海道大学大学院教授)

最終更新:3/2(水) 13:28

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