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現代の「姥捨て山」 老人ホームの闇

WiLL 4/28(木) 15:33配信

まるで現代の姥捨て山

高齢化社会を突き進むわが国を震撼させた、神奈川県川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ」で起きた入居者の連続転落死事件。施設の元職員が三件の転落死全てに関与していたと供述したが、それ以外にも、同施設内では入居者に対する職員の虐待や窃盗事件が次々と明らかになっており、問題の深刻さは闇より深いと思わずにはいられない。
 この事件に日本中が憤慨したことは言うまでもないが、その裏に「またか」「やはり」といった諦観に似た感情を抱いた人も少なくなかったのではないか。
「老人ホームで老人が死んだというのは、我々記者にとっても、そして時勢的にも“普遍的”すぎるのかもしれません。そこに“姥捨山”がたしかに存在しているのに、社会全体で見て見ぬふりをしている」
 知人の新聞記者は肩を落とした。
 川崎の事件において、警察は入居者三人の転落事故を当初、「事件」とは看做さず、現場検証ひとつ行っていなかったという。容疑者の元職員が偶然、別件で逮捕されたことで真相が判明するわけだが、老人問題がいかに看過されているか、これ以上にわかりやすい事例はあるだろうかとも感じる。
 近年、老人ホームを舞台とした様々な事件が続発している。たとえば一昨年から昨年にかけて、東京・北区の医療法人社団・岩江クリニックが運営する格安の「高齢者向けマンション」で起きた悲劇も、筆舌に尽くし難い凄惨なものだった。
 一般的な有料老人ホームの利用料が一カ月二十万円を超える所がほとんどという現状と照らし合わせると、同施設の利用料が高くても十五万円というのは破格の料金設定だった。かつ「東京・北区の生活保護者限定」という入居条件が設定されていたことで、近隣の老人たちが次々に入居していった。
 だが二〇一五年二月十七日、東京都は高齢者虐待防止法に違反するとして、同クリニックに改善を指導した。
 その実態は、入居者がベッドに紐で縛り付けられて身体を拘束され、手の自由が利かないようミトン(手袋)を着用させられていた、というもの。施設関係者が内部の写真をマスコミにリークしたことで、この衝撃的な光景が日本全体に知れわたることとなったのだ。
 食事は決まった時間に三食提供されるものの、老人向けとはいえない揚げ物ばかりのメニュー、狭い部屋に心身不自由な老人たちが閉じ込められ、介護や看護とは程遠い不親切なサービス。酷い時にはそれすら受けることもままならず、希望なき一日一日をただ過ごしていかなければならない。それが実情だったのである。
「老人向け施設」とは名ばかりだ。姥捨て山といっても虐待はしない。姥捨て山以下の実態がそこにあった。

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最終更新:4/28(木) 15:33

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