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トランプが槍玉に挙げた 民主党「金権政治」

WiLL 5/24(火) 16:41配信

米国は金権政治

 アメリカ大統領選でドナルド・トランプの躍進が目立ちます。四月中旬の現在、予備選の最終結果はまだ予断を許さない状勢ですが、日本に対する挑発も含め相次ぐ暴言で物議をかもしながらも脱落することなく善戦を続けています。トランプの進撃は一体何を意味するのか。
 欧米の知識人が言うことは何でも正しいと思っている日本の愚かな知識人は、アメリカの政治を美化しがちです。しかし、リベラルの民主党と保守の共和党が公正に争って勝った者が大統領になるというような思い込みは幻想にすぎません。実態は政治家と企業の間をロビイストが取り持ち、ロビイングを通じてより多くの金を集めたほうが勝つ──という完全な金権政治なんです。
 今回の大統領選では共和党でトランプ、民主党でバーニー・サンダースが善戦しているわけですが、この二人には共通点が三つあります。
 一つは、トランプは共和党の中でも極右、サンダースは民主党でも極左と呼ばれており、アメリカの政治のメインストリームから外れていることです。極右と極左は両極端に見えるが、実は共通点が多い。
 二つ目は、金をバラまくようなロビイスト団体から無視されていること。日本では報道されませんが、彼らにはロビイストを通じての献金がほとんど入ってこない。トランプは自分の資産を湯水のように使い、サンダースは労働組合からの寄付を細々と集めながら、あれだけ善戦しているのです。
 三つ目は、軍事・外交は二の次で、国内問題の解決を優先していること。大統領選でこんな発言をしているのはトランプとサンダースだけです。
 暴言を吐くたびに逆に勢いを増していくような印象を与えるトランプは、カンは鋭くても頭がいいとは思えない。メディアに対して挑発的な発言を繰り返していますが、その時々の思いつきで大衆に受けそうなことを言っているフシが見られます。政治的に損か得かにはおかまいなく、思いつきをすぐ口に出してしまうようなところもある。
 しかし、立派なことも言っている。共和党の保守派にはネオコン(新保守主義者)と孤立主義者がいます。ネオコンは金のために戦争をやるような連中で、軍需産業のヒモ付きだからどうしようもない。私にはトランプの孤立主義のほうがまっとうにみえます。孤立主義の知識人が整理し、再構成したかたちで見ると、トランプが唱える外交軍事政策に関する五つの原則は、国の現状を憂えるものとして説得力がある。

 第一原則 アメリカ政府は国民と領土と憲法を守るためにある。世界平和というものはアメリカ政府が請け負うべき仕事ではない。
 第二原則 戦争は最後の手段。ネオコンが言うようなさまざまな選択肢の一つではない。
 第三原則 同盟関係は国益にかなうかどうかで結ぶべし。フェイスブックでお友達の輪を広げましょうというようなたわいのないものではない。莫大な金と貴重な人命を費やし、東欧の核戦争に巻き込まれる可能性のあるNATOからは脱退すべきである。
 第四原則 国際政治に介入し、他国の国家建設を助けようとするのは思い上がりである。国内問題を直視すべし。
 第五原則 戦争で最初に犠牲になるのは市民の自由と安全である。

 今、アメリカのプアホワイトと言われている人達には、「アメリカには他国のことをかまう余裕はない」「無駄な軍事費は使わずに自国内に引きこもれ」などといったトランプの主張が受けている。だから「メキシコとの国境に万里の長城を築いて不法侵入を防げ」みたいな発言にもなるのです。黒人やヒスパニックと同じような賃金で働くプアホワイトは、自分の仕事が奪われかねないから、トランプの主張を支持するわけです。以前は白人に生まれさえすれば高い生活水準で暮らせましたが、今や多くの白人にとってその余裕はなくなっています(ちなみに、アメリカの人種構成比率は、白人六三%、黒人一三%、ヒスパニック一七%、アジア系五%、先住民その他二%となっています)。

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最終更新:5/24(火) 16:41

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