ここから本文です

プリンスは依存症患者たちを救えるか──その死から学べること

Forbes JAPAN 6/8(水) 10:01配信

オピオイド系鎮痛剤の乱用が年々増加するなか、残念ながら米国では人気ミュージシャン、プリンスと同じ原因で死亡することがまったく珍しいものではなくなっている。多くの家族や友人たちは愛する人を失った悲しみに加え、鎮痛剤への依存症を不名誉な事と決めつける人たちから不当な扱いを受けてきた。プリンスの死から私たちが学べることがあるとすれば、それは「依存症は人を選ばない」ということだ。



プリンス・ロジャーズ・ネルソン(57)は今年4月21日、強力な鎮痛剤「フェンタニル」の過失による過剰摂取で死亡した。フェンタニルの鎮痛作用はモルヒネの80倍、ヘロインの数百倍も強力だといわれている。

80年代からボディガードを務めてきたウォレス・サフォードをはじめ、親しい間柄だった人たちによれば、プリンスは音楽以外にほとんど関心を持たず、薬物どころか飲酒の習慣さえないクリーンな生活を送っていた。

「オピオイドの正しい処方を推進する医師の会」のアンドリュー・コロドニー理事長はプリンスについて、「オピオイド系鎮痛剤の過剰摂取で命を落としたその他の多くの人たちと同じように、依存症によって死亡した。ハイになることを目的に薬物を利用する、いわゆる乱用者ではなかった」と話している。

米国立衛生統計センター(NCHS)によると、米国では2014年、処方薬として購入できるオピオイド系鎮痛剤の服用に関連して死亡した人の数が前年比16%増加。1万8,893人に上った。また、フェンタニルなど合成オピオイドによる死者は同年、前年比79%増加した。
--{診察が依存症のきっかけに}--
診察が依存症のきっかけに

プリンスの悲劇的な死は私たちに、鎮痛剤依存症やそれに苦しむ人たちの治療法を見直す必要性を、改めて知らせてくれたといえる。自らの誤った選択によって依存症になる人もいる一方で、多くの人たちは医師が処方した鎮痛剤をきっかけに、依存症になっているのだ。

友人たちによれば、プリンスは『パープルレイン』のツアーの頃から股関節の痛みを抱えていた。5月上旬に発行された捜索令状からは、ミネソタ州のマイケル・トッド・シュレンバーグ医師が前月7日と20日に、プリンスを診察。「医薬品」を処方していたことが分かっている。

米国では毎日、処方されたオピオイド系鎮痛剤の誤った使用によって1,000人以上が救急外来に運びこまれ、治療を受けている。これらの薬を乱用している、または依存症であると判断された人は2014年、200万人近くに達した。

鎮痛剤依存の問題に取り組むスティーブ・ラムラー・ホープ基金の創設者は、「尊敬されるミュージシャンだったプリンスは、飲酒の習慣もなかったとされ、信仰心の厚い人だったとみられる。その死は、過剰摂取に対する汚名を拭いさる助けになるだろう」と語る。

「過失による過剰摂取とそれによる死は、人生に失敗し、落ちぶれた人だけに起きるものではないことを証明している」

プリンスはその功績によって記憶され、高く評価されるだろう。だが、米国には「薬物依存症」「ジャンキー」のレッテルを貼られ、誰にも気づかれないまま同じように命を落とす数千人の人たちがいる。大スターの死は私たちに、依存症はそれに陥る人を選ばないということを改めて教えくれる。そして私たちは、そのことを学ばなくてはならない。

CJ Arlotta

最終更新:6/8(水) 10:01

Forbes JAPAN

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Forbes JAPAN 2017年1月号

株式会社アトミックスメディア

2017年1月号
11月25日(金)発売

890円(税込)

Forbes ID 無料会員登録を受付中!
今ならもれなく電子版最新号をプレゼント

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。