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父の再婚相手に四姉妹は―― 『咲ク・ララ・ファミリア』 (越智月子 著)

本の話WEB 6/9(木) 12:00配信

「〈姉妹〉って同じ親から生まれても、見た目も違えば、持っている才能も違う。でも本音でぶつかろうと思えば、それが出来る他ならぬ存在ではないでしょうか」

 本書に登場するのは、長女・橙子(ゆずこ)、次女・柊子(しゅうこ)、三女・桐子(きりこ)、四女・楓子(ふうこ)と名付けられた、森戸家の四姉妹。14年前、母が出奔して以来、ずっと家を守ってきたしっかり者の次女は、ある日、突然62歳の父から思いがけない言葉を聞かされる。

「実はお父さん、もう一度、結婚しようかと思ってるんだ」

 この宣言から、若くして結婚した長女、引きこもり気味の三女、定職に就かぬまま一人暮らしをしている四女、とバラバラになっていた四姉妹の家族会議が開かれるのだが……。

「父娘の縁談をめぐる物語といえば、小津安二郎監督の『晩春』がありますし、向田邦子さんの『阿修羅のごとく』では、父親の愛人問題をきっかけに疎遠だった四姉妹の間に新たな葛藤が生まれる。昭和の名作には遠く及びませんが、多様化する平成という時代の中で、父と娘たちを中心としたホームドラマを描けたらなと考えました」

 ファザコン気味の娘たちと、新しい妻との間に様々な問題が起こるのは必然だ。さらに本書では、父の結婚相手として現れた西園寺薫(さいおんじかおる)は、なんと20歳以上年下の〈美しい男〉であり、姉妹は大いに戸惑うことになる。

「LGBTのことを問いたかったというより、薫というひとりの人間を四姉妹が受け入れていく過程を描きたかった。男であれ、女であれ、父親よりずっと年下の相手が家に入ってきたら、違和感を持たずにはいられない。それでも、同じ時間を過ごす中で時おり通じ合えることがある――いつ何がきっかけでという形で、本人たちは意識できないかもしれませんけど」

 著者の越智さん自身、いちばん上に姉、2人の兄がいる。「小説の中とは違って、13歳上の姉は私のことを本当に可愛がってくれた」というが、7年前に他界した父に対して「超ファザコンだった(笑)」と話し、実家の庭にある桜の樹を、小説のモチーフとして印象的な場面で登場させた。

「タイトルは最初、別のものを考えていましたけど、本ができる直前に変えました。合格祝いの電報で〈サクラサク〉と打つように、嬉しい瞬間を表す『咲ク』と、いまだ未完成のサグラダファミリアをかけて、『咲ク・ララ・ファミリア』。憎みあったりいがみあったり、いろいろあっても家族っていいな、と思える瞬間をたくさんちりばめたつもりです」

越智月子(おちつきこ)

1965年福岡県生まれ。女性誌ライターなど経て、2006年『きょうの私は、どうかしている』でデビュー。『モンスターU子の嘘』『帰ってきたエンジェルス』ほか。

聞き手:「オール讀物」編集部

最終更新:6/9(木) 12:00

本の話WEB

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