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興収では初登場1位! 『デッドプール』が日本で大ヒットを記録した意義

リアルサウンド 6/9(木) 11:12配信

 先週末の動員・興収成績はトピックが満載だった。まず、307スクリーンで公開されて、土日2日間で動員26万4270人、興収3億4204万0700円を記録して動員ランキングで初登場1位となったのは『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』。邦画界を席巻しているティーン恋愛ムービーの強さを示したかたちだが、その動員力の最大要因となったのは高畑充希と共に主演を務めたEXILE兼三代目J Soul Brothersの岩田剛典に違いない。近年のテレビドラマ、映画界におけるLDH関連グループの進出については、ネットを中心にその視聴率の低さや奮わない興行が取り沙汰される機会も多いが、三代目J Soul Brothers関連に限っていえば、2014年の登坂広臣(能年玲奈とのW主演)の『ホットロード』のヒットに続いて、本作で大きな結果を残したことになる。以前から指摘しているように、メディアにおいてはヒロインの方が注目されがちなティーン恋愛ムービーだが、観客の圧倒的な女性比率の高さをふまえれば当然のように、動員の鍵を握っているのは主演男優の方なのだ。

 伏兵『植物図鑑』に5週連続動員1位を阻まれた『ズートピア』。しかし、土日2日間で動員26万3766人(1位とたった504人差という稀にみるデッドヒート!)、興収3億5060万9200円と依然その下落率は低く、累計興収は60億円を突破。公開中の『名探偵コナン 純黒の悪夢』をこのタイミングで早くも抜き去って、2016年公開作品の暫定ナンバーワンとなった。リピーターも多く、このペースでいくと70億円突破も確実、今週末は動員1位に返り咲く可能性も十分にある。

 土日2日間で動員24万8473人を動員して、初登場3位となったのは『デッドプール』。もっとも、注目すべきは興収の3億8333万2900円という数字の方。これは『植物図鑑』や『ズートピア』を上回っていて、アメコミ・スーパーヒーロー映画としてチャレンジングな判断となったR15指定作品という“弱み”が、観客一人当たりの入場料の高さという“強み”へと転化されたかたちだ。さらに、同作は世界中での大ヒットに盛り上がる日本のファンの期待を受けて、当初アナウンスされていた6月4日の公開日から急遽3日前倒しされて、平日の水曜日公開という異例の措置がとられていた。それによって、週末の3億8333万2900円というのもスーパーヒーロー映画のシリーズ第1作としては十分に立派なものだが、先週末の時点までで公開5日間に動員49万6904人、興収7億1175万6100円という見事な数字を残している。

 その「公開日前倒し」にも象徴されるように、今回の『デッドプール』の日本でのプロモーションは、徹頭徹尾「映画ファンを味方につける」方法に貫かれていた。アメコミ・スーパーヒーロー映画界隈において特にこれまでファンからの批判の多かったタレントによる吹き替えではなく、吹き替え版はすべてプロの声優を採用。日本のアーティストによる主題歌やテーマソングもなし。その代わり、街中に巨大デッドプール・カーを何台も走らせ、「俺ちゃん」という主人公の一人称を浸透させるためにSNSを効果的につかうなど、草の根的なプロモーションに力を入れていた。

 先日も、今週末公開の『マネーモンスター』のプロモーションのために来日したジョディ・フォスターがテレビではNHKとローカル局のTOKYO MXにのみ出演し、地上波の民放キーステーションへの出演をスルーしていたことが話題となったが、これまでのタレント頼り、民放のワイドショー頼りの外国映画のプロモーションに変化の兆しがあることは素直に歓迎したい。

 民放各局にとっては、自局が製作した作品の宣伝を何よりも優先し、外国映画は二の次というのが常態化している昨今。全体的な視聴率の低下も止まらず、何よりもタレントを利用したプロモーションの露出先のワイドショーの視聴者層と、外国映画の観客層には大きなズレがある。国民的な関心を集めなくてはいけない年間興収トップ5を狙うような超大作映画は別として、ハリウッド大作も含む“通常”の外国映画においては、映画ファンを味方につけた、より草の根的なプローションの方が効果的であること。今回の『デッドプール』の日本での大ヒットは、それを証明したのではないだろうか。

宇野維正

最終更新:6/9(木) 14:37

リアルサウンド

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。