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ファッションエディターとデートする方法と、そのサバイバル術

ハーパーズ バザー・オンライン 6/10(金) 21:03配信

コメディアン志望のブランドン・ボラー・チャペルは、USバザーのエグゼクティブ・エディターのローラ・ブラウンと交際中。その彼が、ファッションエディターとデートするということが実際どんなものなのか明かしてくれた。
 
遅い午後の陽射しが降り注ぐ、サンセット・タワー・ホテルの11階で、俺はパンツ一丁でアイロンボードの前に立っていた。危なっかしい手つきで、ガールフレンドに最近プレゼントしたTibi(ティビ)の白いブラウスのシワと格闘する間、彼女は階下のレストランでのディナーへ出かける準備で、眉毛を増量中だ。 
 
俺のガールフレンドはハーパーズ バザーのエグゼクティブ・エディターのローラ・ブラウン。ディナーのゲストは、エミリー・ラタコウスキーと彼女のミュージシャンのボーイフレンド、ジェフ・マジッド、そして俺は家賃を払うためにウェイターをしている25歳のコメディアン志望。俺はシャツをひらひらさせて、「これってシックなの?」と大声を出した。
 
8ヶ月前、俺はローラのテーブルを担当し、下心をサイドディッシュに添えて卵料理をサーブした。そして彼女のレシートの下に電話番号を書いて渡したんだ。いいかい、ピッチャーが投げるボールを見たら、踏み込んで、最高のスイングをしなきゃ。ストライクアウト(彼女に拒否されるとか仕事をクビになるとか)するかもしれないけど、外野席にボールを飛ばせるかも(ローラ・ブラウンとデートすること)しれないだろ。そして俺の場合は、その趣味の良さが評価されて、立派なキャリアを築いた人に激しく魅かれてしまったからには、少しでも追いつけるように変えなきゃならないことがいくつかあった。

彼女の影響を受けたことの一つがワードローブだ。昔から俺のワードローブときたら、ちぐはぐなサイズで支離滅裂なものばかり。ある日、俺がナゾな胸ポケットが付いていて、オフホワイトのストライプが入った、ピチピチの白いTシャツでデートに現れたら、ローラはこれはイケてないと優しく注意してくれた。彼女は、負傷した脚が腐りかけた兵士を見る南北戦争の軍医のように俺を見た。「あなた、このシャツを着たいの?」 

彼女は俺の脚を切断しなきゃならないと、俺はもうわかっていた。「このシャツはダメですか?」 
 
彼女がのこぎりを下ろすとき、俺はウィスキーを呑み込んだ。「最高のシャツではないわね」 
 
ギャップで『プリティ・ウーマン』した(彼がジュリア・ロバーツ役で、さまざな服を試着し購入したという意味)後、Saturdaysでデニムジャケットを選び、俺たちはニューヨークのストリートを気取った感じで歩いた。着ている服で(助けを求めて泣くこともなく)なりたい人物になれるという意外な新事実に浸って、正直言ってジェームス・ディーン並みに俺ってクールという気がした。

俺の悟りは、何を着るかを超えて、それをどう着こなすかまで広がった。BL(Before Laura = ローラに出会う前の)暗黒時代だったら、シャツをタックインして着るなんて、アホな奴がすることだと俺は言っただろう。 
 
ある日、ローラとのまた別なデートの支度をしていたときに、俺は新品のラルフ ローレンのオックスフォードシャツの後ろの裾を自由になびかせたまま、ボタンを留めた。またもや上手に叱られた。俺はなだめる彼女にしがみつきながら6歳のガキのように抗議した。「シャツをタックインなんて絶対にやるもんか!」 

「わかるわ、だってあなたはミレニアル世代(米国で1980~2000年頃に生まれた世代を指す)だものね」 
 
タックインした。さらにほかのシャツもタックインした。今となっては、履いたズボンが全部見えていなければ、正真正銘の下品とさえ思う。最近顔を出したホームパーティーでは、ほかのすべての男性ゲストがシャツの裾を出したままにしているのを見て、恐怖に乗っ取られた。ここでは支配者がいないから、皆だらしなくなっているんだなと俺は納得した。でも俺はシャツの裾をきちんとしまって、強い気持ちで立っていた。類人猿の群れに立ちはだかるマナーの砦のように。

ファッションセンスが磨かれたことで、今やどんなソーシャルな場にも堂々と入っていけるので、俺がバカ者だとすぐには気づかれないだろう。だけどローラの友達たちは賢いので、彼女たちを長く騙すことはできない。ほとんどついていけない会話の中にいるとしばしば気づくが、そんなときは飼い犬のように加わるだけだ。 
 
誰かがシフォンのドレスを着たジェシカ・アルバがどんなに輝いて見えたかについて話したとき、俺は「ときにはオリジナルのアイデアを持つシフォンを見るのもいいね」と返した。それ以来、シフォンとはファブリックの一種であるということを学んだ。 
 
誰かほかの人がグッチの話題を持ち出したときに、「彼がブランドに活力を与えたいというのはわかるよ。でも最も忠実な顧客を彼が遠ざけるのを見るのは嫌だな」と遮ったこともある。ローラは俺をジッと見つめて尋ねた。「あなた、誰の話をしているの?」「え? もちろんデヴィッド・グッチだろ」 
 
またその後で、誰かがルイ・ヴィトンのプレフォールコレクションについて話したときには、俺はバカバカしいくらいボッていたと不平を漏らした。ちょっと面白がってローラは聞いてきた。「ブランドン、プレフォールって何かしら?」「プレフォールはさ、ハイになったすぐ後の瞬間のことだよ。ほら今にもドーンと落ちそうだと気づく瞬間」 

確かに俺はカール・ラガーフェルド(デザイナー! フォトグラファー! ローラの写真に時々カメオ出演してる!)ではないけれど、断片的に拾い上げているんだ。俺は本当に使えそうなものを耳にするまで「赤ちゃんの周りでは自由に話しましょ、どうせ何もわからないから」的な立場を演じているのさ。

いや、冗談です。俺は単に彼女が好きだからここにいるんだ。それから言葉の意味を知る限り、彼女は本当にシックなんだよ。

最終更新:6/10(金) 21:03

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