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「オーガニックの効果」を誇張、スウェーデンのスーパーの実験動画が問題に

Forbes JAPAN 6/12(日) 9:00配信

スウェーデンでオーガニック食品販売のパイオニアとして知られるスーパーチェーンのコープは2015年、スウェーデン環境研究所と共同で、ある家族の協力を得て実験を行った。食費節約のためにオーガニックではない食品を食べてきたこの家族が2週間にわたって、オーガニック食品だけの食生活に切り替え、毎日尿サンプルを提出したものだ。



実験の結果は「The Organic Effect(オーガニックの効果)」という動画の形で公表され、その視聴回数は数千万回にも達した。それによると、オーガニック食品に切り替える前は家族の尿には殺虫剤や殺菌剤などの農薬が含まれていたものの、切り替えて2週間後にはまったく含まれなくなった。5人家族の母親は「子どもたちの体内から、たくさんの化学物質が取り除かれた。もう以前の状態には戻したくない」と動画の中で語る。

つまりは、みんなオーガニック食品に切り替えればいいのだ、という簡単な解決策のように聞こえる。健康のためなら割高な価格も払う価値があるはずだと。

だがこの話には続きがある。メラニー・メロンは懐疑主義団体Skepchickのウェブサイトへの連載の中で、この実験について「オーガニックのいいとこ取り」だと指摘した。確かに実験で、家族の尿には従来の農業で使われている殺虫剤の成分はほぼゼロになった。しかし大部分の人は認識していないが、有機農法でも殺虫剤は使用している。そして実験では、有機農法で使われる殺虫剤の成分については検査を行っていなかった。

これはたとえば、数人のグループにスクリュードライバー(ウォッカをオレンジジュースで割ったもの)を飲んで貰い、その後スクリュードライバーの代わりにキューバ・リブレ(ラムとコーラ)を飲んで貰って、「キューバ・リブレは体内のウォッカ濃度をゼロにする」と結論づけるようなものだ。

メロンはこう書いている。「有機農法で使われる殺虫剤の残留濃度を測定して実験を行えば、実験前は体内の殺虫剤成分はほぼゼロ。実験後には成分が検出される。だからといってオーガニック食品が子どもにとって有害だという結論に至るかといえば、そんなことはないだろう。それと同様に、今回の結果を元に従来の食品が有害だとも言えない。体内に化学物質があるという事実と、それが有害であるかどうかという問題は別だ」
--{不正確な広告としてコープを訴追へ}--
報告動画はまた、実験で検知された農薬成分の濃度が人体に既知のリスクをもたらすレベルではないことにも触れていない。だが動画を見た人々の大部分は、この実験の結果に、実質的にはマーケティング戦術以上の価値がないとは気づかなかっただろう。

そして実験から1年以上が経過したなか、スウェーデンの作物保護協会が、人々を誤解に導き、また不正確な広告を行ったとしてコープを訴追する意向だと報じられた。

殺虫剤メーカー9社で構成される同協会は、コープの販促キャンペーンは非倫理的、違法で不正に操作されていると主張。コープに対して問題の広告の使用をやめ るよう求めており、使用が中止されなかった場合には200万スウェーデンクローナ(約2,618万円)の罰金支払いを求めている。

罰金の 金額はさほど高額ではないが、この問題はスウェーデンのみならず世界全体で、象徴的な意味において重要だ。問題の動画は大きな影響力を持ち、オーガニック食品は従来農法で栽培された食品よりも安全で健康にも環境にもいい、という誤った説を固定させる一因となった。既に被害は出ているが、それでも人々を 誤解に導く販促キャンペーンの非難はいつだって、遅くなってもしないよりはマシなのだ。

Kavin Senapathy

最終更新:6/12(日) 9:00

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