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僅か3年で楽天がスペインから撤退を決めた理由

HARBOR BUSINESS Online 6/12(日) 9:10配信

 6月に楽天がスペイン、英国、オーストリアからeコマース事業を撤退することがメディアで報道された。筆者が在住するスペインで楽天が撤退を決めた背景について言及したい。

 結論から先に言えば、撤退を決めた理由は「アマゾンに勝てなかった」ということに尽きる。

 2013年に楽天がスペインに進出した時は、かなり期待されていた。

「スーパーeコマースの戦いは楽天かアマゾンか、どちらが勝つか?」といったタイトルで商業メディアを賑わせたものだった。

 しかし、問題は既に充分にスペイン市場に浸透していたアマゾンに比べ、楽天はこの3年間をもってしてもスペインでの知名度を上げることができなかったのが撤退の一番の要因である。

◆スペイン人の6%にしか浸透しなかった楽天

 楽天は進出当初、テレビ宣伝などを行なって知名度を高めることに努めた。しかし、楽天の知名度は消費人口の僅か6%までにしか浸透していなかったということであった。(参照:「Cinco Dias」)

 スペインの人口は4600万人。アマゾンは2011年にスペインに進出して、既に〈1460万人がアマゾンで買いものをしている〉にも関わらず、である。(参照「El Pais」)

 すでに認知度が高いアマゾンに対抗して成長して行くには、かかるコストが成長度合に比べ相当に高くなる。それゆえ撤退を決めたといえる。しかも、自社のロジスティクスセンターを持っていないことも、効率を競っての薄利商売では不利になる。

◆アマゾンと楽天の雌雄を分けた規模の差

 一方のアマゾンはスペイン進出6年目になるが、急激な成長を象徴するかのように既に800人の従業員を抱え、マドリード州のサン・フェルナンド・デ・エナレス市に〈3万2000平方mのロジスティクスセンターを構え、それを現在7万5000平方mに拡張している〉。

 当初(2012年)に〈2万8000平方mで従業員40人からスタートした〉ロジスティクスセンターである。このロジスティクスセンターの拡張の推移を見るだけでもアマゾンの著しい成長を知ることが出来る。更に、ソフトウエアー部門の開発としてマドリード市内に〈1700平方mの開発センターを今年3月に開設〉している。

 バルセロナに30人の従業員を抱えているだけの楽天とは雲泥の差である。

 スペインだけに限って言えば、象の前に犬が挑戦して行くようなもので、最初から勝敗は決まっていた。楽天はアマゾンと真っ向から対決するのではなく、スペインでの販売では商品を狭くセグメントして一点に集中しての販売を展開して行くべきだったかもしれない。

◆楽天、欧州での今後は

 楽天がeコーマスの営業を8月末まで続けると決めたのは〈法的に問題なく円満に従業員を解雇するためである〉という。(参照:「20minutos」)

 この辺は、やはり従業員を大事にする日本企業の精神が宿っているのだろうか。しかし、失業率の非常に高いスペインで、企業が最後まで従業員を世話するということは日本で想像できない程に良い企業イメージをつくる為の大事なことである。撤退するがよいイメージを残すのは決して悪くはないだろう。

 今後の楽天は、ドイツとフランスに営業を集中するという。その理由は、アマゾンはヨーロッパの主要国で高い市場占有率を誇っているが、ドイツとフランスはスペインや英国でのアマゾンの市場占有率よりも低く、そこに楽天はまだ成長の余地はあると見ているようだ。

 スペインでの失敗を教訓に、奮闘を期待したい。

<文/白石和幸 Photo by @Kmeron for LeWeb12 Conference via flickr(CC BY 2.0) >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/12(日) 12:51

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