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フロリダ同性愛バー襲撃テロ 国内分裂の矛盾突くIS

Japan In-depth 6/13(月) 9:09配信

米フロリダ州オーランド市の人気ゲイバー「パルス」で、過激派組織「イスラム国」(IS)の思想に影響を受けたニューヨーク州生まれのアフガニスタン系米国人オマル・マティーン容疑者(享年29)

が12日早朝、合法的に入手したAR-15ライフルや銃で同性愛客を標的にした攻撃を行い、50名が死亡・53名が負傷した(日本時間13日6時現在)事件は、米史上最大・最悪の銃撃事件となり、米政府はイスラム過激派のヘイトクライム(憎悪犯罪)テロ攻撃と認定した。

米欧の軍事的攻撃により本拠地のイラクとシリアで弱体化したISに忠誠を誓うマティーン容疑者の行動は、米国内で高まるイスラムへの憎悪感情や銃規制を決められない米国政治の無能ぶりを巧妙に突き、米国が自国の矛盾や問題を解決できないことを浮き彫りにした。テロ直後の現在の米国は表面上「反テロ」で団結しているが、いずれ世論が割れ、米社会がさらに分裂して弱体化し、ISや他のイスラム過激派を利するだろう。

このテロは、米大統領選で「反イスラム」的姿勢をとり、銃規制に反対する共和党のドナルド・トランプ候補(69)と、「寛容社会」の言説を用い、銃規制を訴える民主党のヒラリー・クリントン候補(68)が本選で一騎打ちとなるタイミングで引き起こされたため、本選では銃規制や同性愛者政策や対イスラム政策が争点になり、国論分裂を深めよう。

バラク・オバマ大統領は、過激派の意図を敏感に感じ取り、記者会見で「米国人として結束して立ち向かわなければならない」と訴えた。だがすでに、分裂の兆候は表れている。

保守派とリベラル派はテロ非難で一致しているが、多くの保守派論客は今回の事件が「イスラム過激派によるテロ」である側面を強調し、マティーン容疑者の動機の一部が同性愛者嫌悪であることに触れない。同容疑者は以前、同性愛者の多いマイアミ市で二人の男性がキスをしているのを目撃して憤り、父親にその感情をぶちまけていた。

共和党のダン・パトリック・テキサス州副知事(66)は、「人は種を蒔けば、その刈り取りもする」という新約聖書の句を引用したツイートを行い、テロの犠牲になった同性愛者は、天罰を受けたと示唆した。また、同党のトランプ候補は、「オバマ大統領は、やっと『イスラム過激派』という言葉を口にするだろうか。イスラム過激派を名指ししないなら、恥じて辞めるべきだ」とツイートしている。トランプ支持者のイスラム憎悪は増幅される。

一方、民主党のクリントン大統領候補の論点は「ヘイトクライム」であり、「イスラム」ではない。同氏は声明を発表し、「犯人は、LGBT(性的少数者)プライド月間にゲイバーを襲った。LGBT の皆さん、私を含め、多くの味方がこの国にはいる」と述べた。ISの狙い通り、米国の国論は団結どころか、すでに割れている。

さらに今回のテロは、進まない銃規制がテロリストを助長している事実を改めて米国民に突き付けた。だが、その銃に関する世論は分裂している。

マティーン容疑者は、国際セキュリティ企業G4S勤務の要員で、テロに使用した火器を合法的に入手していた。2015年12月2日にカリフォルニア州のサンバーナーディーノ市で、ISに忠誠を誓う米国生まれのパキスタン系米国人サイード・リズワン・ファルーク容疑者(享年28)らが合法的に入手した銃を乱射して14名を殺害し、17名に重軽傷を負わせたテロを彷彿とさせる。

マティーン容疑者もファルーク容疑者も、現行の銃規制では、法的に問題ない購入者だった。日本のように銃所持を禁止してしまえば今回のようなテロは防げるが、サンバーナーディーノのテロ後、規制が強化されるどころか、護身のため銃を購入する人が保守派・リベラル派を問わず増えた。今回の事件後も、「テロに際しての護身用」として製品を売り込む銃器産業がさらに潤うことになるだろう。銃規制派と反銃規制派の対立は激化し、この面でも米国内の分裂による全体的な米国の覇権衰退を望むISの思うツボである。

結局、最も有効なテロ対策は国民の団結なのだが、今の米国民にも米政治家にも、そのような意思も能力もない。テロリストはますます、仕事がしやすくなろう。

岩田太郎(在米ジャーナリスト)

最終更新:6/13(月) 9:09

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