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10年ぶりの新作はコメディに 『梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱』 (牧村泉 著)

本の話WEB 6/14(火) 12:00配信

『邪光』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。その後も『幻痛(ファントムペイン)』など新たな筆致のサスペンス作品で注目を集めた著者の、実に10年ぶりとなる新作である。

「書けなくなり、書くのが辛くなって見ないふりをした時期もありました。でもそうしてても、世界から取り残されているという感じがすごくあって」

 リハビリのように新たな作品を書き始めたが、編集者とやり取りをするうちに、かつて執筆していた小説を書き直してみることに。それがこの『梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱』である。

 東京で結婚した32歳の珠希は、会社を辞めて叔父のソース会社に転職するという夫の史人と共に、大阪に引っ越すことになった。しかも夫の実家に義理の母と同居。そこには旧い電化製品、ぶら下がり健康器などから見たこともない位牌まで、いっぱいのガラクタが。さらに間もなく史人の前妻との娘・樹里亜が彼氏の祐太朗と一緒に転がりこんで来る。一方、学生時代の友人で働いている麻里子は、娘の萌を預かってほしいと連れてくる。屋敷内に幽霊が見えると言う萌。徐々にストレスをためた珠希は、夫の前妻の千郷に会いに行くが――。

「ネタバレですが、最初は幽霊が見える女の子が古道具屋にいるという話でした。付喪神とか、そういう話を考えていたのですが、あまりワクワクしなかった。それで一軒家に持ち込んでみたんです。ゴミ屋敷というのはガラクタだけでなく、いろんな人が集まってくるというイメージ。たとえば結婚式を挙げずに結婚すると、親戚と顔を合わせる機会もないままに家族ができてしまいますよね。まして旦那の前の奥さんの子供なんて、正直、家族ではない。だから絶対に家族にはならない人たちという関係性をすごく考えました。たまたまひとつ屋根の下にいるだけ、でもどこかで完全に切りようもない、そんな形が見えてくると面白いなと思いました。それをパズルのようにポンポンと配置していった感じです」

 不倫や略奪愛など、元妻のほうから見ると結構ヘビーな話でもあるが、今回はコメディを書きたかったと言う。

「ちょっとコメディから外れたかもしれないけど楽しかった。今まで深刻な状況で笑える話を書いたことがないので、なんだバカみたい、早く笑ったほうが楽になれるよ、というのを表現したかった。以前の原稿を読み、デリカシーのなさとかも感じましたが、デリカシーのない人たちが出てくる話なので、今回は目をつぶって(笑)」

 執筆中はすごく幸せだったという牧村さん。今後の活躍にまた期待したい。

牧村泉(まきむらいずみ)

1960年、滋賀県生まれ。関西大学卒業。2002年、第3回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。著書に『邪光』『ストーミーマンディ』など。

聞き手:「オール讀物」編集部

最終更新:6/14(火) 12:00

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