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『裸足の季節』監督&キャスト陣インタビュー 世界の映画祭で絶賛の“5人姉妹”はどう選ばれた?

リアルサウンド 6/14(火) 16:29配信

 トルコの小さな村で古い慣習と封建的な思想の祖母と叔父とともに暮らす5人姉妹が、自由を取り戻すべく奮闘する模様を描いた映画『裸足の季節』が6月11日に公開された。トルコ語作品ながら、第88回アカデミー賞フランス映画代表に選ばれ、同外国語映画賞にノミネートされたほか、第68回カンヌ国際映画祭ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞受賞、第73回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネートなど、世界各国で数々の賞を受賞している。リアルサウンド映画部では、初長編監督作にして華々しいデビューを飾ったデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督をはじめ、五女・ラーレ役のギュネシ・シェンソイ、四女・ヌル役のドア・ドゥウシル、三女・エジェ役のエリット・イシジャン、長女・ソナイ役のイライダ・アクドアンにインタビューを行い、5人姉妹の配役や撮影時のエピソード、脚本執筆の裏話を語ってもらった。

■イシジャン「自分の妹のことを考えながら演じていた」

ーー5人姉妹のメインキャストたちはオーディションやスカウトによって選ばれたそうですね。最初からどの役を演じてもらうかを想定した上で、彼女たちに決められたんでしょうか?

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督(以下、エルギュヴェン):最初は選択肢を広く持っておきたかったので、それぞれの役柄を想定しながらも、決めた役柄とは別の役柄を演じてもらうという可能性も持っていました。ただ、かなり早い段階でやはり直感を信じるべきだと思ったので、すぐにその考えは捨てて、彼女たちには最初に想定した役柄でそのまま演じてもらいました。

ーー5人の性格や性質が役に反映されている部分もある?

エルギュヴェン:そうですね。次女のセルマはおっとりしていて口数が多くないので、もともと物静かなタイプだったトゥーバ(・スングルオウル)はこの役に合うと思って彼女に決めました。この5人姉妹はシャイなタイプと明るいタイプ、性格的にその違いをはっきりと分けたかったので、キャスティングの段階でそれは意識していましたね。イライダ(・アクドアン)は、自分に対して自信を持っていて、リーダー的なところもある一方、魔女的な要素もあって、猫のようにワッと飛びかかってくるような一面もある。そこが長女のソナイ役にピッタリだと思いました。非常に感情が豊かで感性が高いドア(・ドゥウシル)には、四女のヌルを演じてもらいました。主人公でもある末っ子の五女・ラーレは、いい意味でずるがしこい。少しお行儀が悪いところもあって、自分の権力を主張していくキャラクターです。ギュネシ(・シェンソイ)には、そのような部分をうまく表現できるかオーディションで試してもらいながら、彼女に決めました。

ーー5人姉妹の中で唯一本格的な演技経験があったエリット・イシジャンを三女のエジェ役に起用したのはなぜでしょう?

エルギュヴェン:エジェは、5人姉妹のエネルギーの行く先をコントロールをする役割を担っていて、この映画の方向性を決める重要な役柄でもあります。いろいろなことに注意を配っていて、エネルギッシュでかわいらしい印象がある一方、特にラーレとの関係の中で明らかになっていきますが、非常にミステリアスなキャラクターでもあります。私は撮影中、基本的に1人にしか指示を出しませんでした。指示を受けた人を通して、みんながお互いにそのエネルギーをしかるべきところに向けあってくれていたんです。その役割を担っていたのが、エリットでした。

ーーエリットは非常に重要な役割を担っていたわけですね。撮影前に何か準備はしましたか?

エリット・イシジャン:撮影に入る前に監督から何本かDVDを渡されて、観ておくように言われました。5人全員共通のものもあれば、役によって違うものもありましたね。それに加え、監督とはストーリーのバックグラウンドについてかなり話し合いを重ねました。家族のこと、時代のこと、もし自分がその場にいたらどうするだろうというようなことをたくさん話しました。映画の中で私がジョークを言うシーンがありますが、あれは監督が自分の兄弟や従姉妹たちと実際にやっていたやりとりを基にしているんです。私にも妹がいるので、撮影前には妹と一緒に、先生と生徒などお互いの役柄を決めて、ままごとをするような形であらゆる役柄を演じる練習をしました。映画の中で、姉妹の絆はとても濃厚です。だから私も妹のことを考えながら演じていましたね。

ーー今回の作品で初めて本格的な演技に挑戦した3人は、実際にそれぞれの役柄を演じてみていかがでしたか?

ドア・ドゥウシル:私はヌルに共感するため、彼女の感情を分かち合うことを心がけながら演じました。映画の中で、腹を立てたヌルが椅子を投げつけるシーンがありますが、私自身も実際に演じていて腹が立ってしまうほどでした。

イライダ・アクドアン:監督や演技指導の先生たちのサポートが大きかったですね。私は以前から演技の練習をしていて、演じる上ではその役柄の特徴を理解するようにしていました。今回も役柄を理解した上で撮影に臨んだので、芝居だけで多くのものを出す必要はありませんでした。みんなとは本当の姉妹のように、いつもお互い助け合っていましたね。

ギュネシ・シェンソイ:状況は違うけれど同じような感情を抱くことってありますよね。演技については「こうしなさい」ということではなくて、演じる役柄の状況に置かれた時、あなたならどうするか。それを想像してくださいということで指導を受けました。監督や演技指導の先生の指導にはとても助けられましたね。

■エルギュヴェン「アイスクリーム屋になることも考えた」

ーー今回の作品は、今年のカンヌ国際映画祭「批評家週間」の審査員も務めていたアリス・ウィノクールさんとの共同脚本ですよね。どの程度があなたによるもので、どの程度が彼女によるものなのでしょうか?

エルギュヴェン:クリエイティブな面からすれば、脚本は私1人によるものです。アリスは私が書いたシナリオについて、感想や意見を言いながら、ボクシングのコーチのような形で私の作業を見守ってくれていました。時には意見がぶつかり合うこともありましたね。例えば、銀行のシーンがありますよね。アリスはシナリオの段階ではあのシーンを非常に嫌っていたんです。でも、私は自分の意見を通してあのシーンを採用しました。できあがった映像を観たアリスがあのシーンを気に入ってくれたので、結果的によかったですけどね。

ーーなるほど。クレジット上は共同脚本ではあるけれど、基本的にはあなた1人で書いたものだということですね。そもそも彼女とはどのように出会い、どのような形で一緒に仕事をすることになったのでしょうか?

エルギュヴェン:アリスとは2011年のカンヌ国際映画祭で出会いました。私もアリスも、当時手がけていた長編処女作となる企画を完成させるためにアトリエに招待されたんです。アリスはそのまま初長編監督作『博士と私の危険な関係』を完成させましたが、私のプロジェクトはとてもお金がかかるもので、製作段階で様々な問題が発生したため、結局頓挫してしまったんです。そのプロジェクトの資金集めなどをやっていた時に発想が生まれたのが、『裸足の季節』だったのです。最初のプロジェクトが頓挫してしまったので、もしも次の作品もダメになってしまったら、映画を作るのは諦めて、オーストラリアに渡ってアイスクリーム屋になろうと考えていたんです。その話をアリスにしたら、彼女は「そんなバカなこと言うんじゃない!」と言ってくれたんです。それをきっかけに、私はシナリオを書き始め、ひと夏で50ページぐらいの草稿を書き上げました。なので、脚本を書き上げるエネルギーを彼女に焚き付けてもらわなければ、この作品も完成していなかったと思います。そして、当時頓挫してしまったプロジェクトは「Kings」という作品なのですが、その後無事製作にこぎ着けることができ、私の長編監督作第2作として、ハル・ベリー主演で10月から撮影に入る予定です。

宮川翔

最終更新:6/14(火) 16:29

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