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米ビジネス界で流行拡大 “天才になれる薬”の効果とリスク

HARBOR BUSINESS Online 6/14(火) 9:10配信

 眠気を振り払い、もう一頑張りしたい。誰もが活目するようなアイデアを生み出したい。プレゼンで聴衆を惹きつける活力が欲しい……。そんな時、コーヒーやエナジードリンクに手を伸ばす習慣は過去のものになりつつあるのかもしれない。

 アメリカのビジネスパーソンの間では、15~20年前よりスマートドラッグの流行が顕著だったが、近年はリバイバルが起きつつある。

 スマートドラッグとは認知能力を強化し、創造性や記憶力、集中力を向上させるサプリメントや薬剤の総称。その定義は広く、DHA(魚油)のような食品から、リタリンやモダニフィルなどの処方箋が必要になる向精神薬までが含まれる。

◆エリートの5人に1人がスマドラ使用

 近年、米ネイチャー誌が1400人を対象に「スマートドラッグの使用経験の有無」を調査したところ、5人の1人が「使用している」と回答。経営者や弁護士、プログラマー、研究者など、知的生産性が求められ、競争が激しい職業ほど使用する傾向は大きいという。そして、スマートドラッグによる能力の向上を実感するビジネスパーソンは少なくないのだ。

 例えば、実業家で、ベストセラーとなった『シリコンヴァレー式 自分を変える最強の食事』の著者でもあるデイヴ・アスプリーもそのひとり。彼の朝は、ピラセタムやアニラセタム、CILTEPなど、おおよそ聞いたこともないような薬剤を約15錠飲み下すことから始まる。

 彼は米『CNNマネー』のインタビュアーに対して、「(スマートドラッグを飲むことによって)限界なんてないように感じる。まるで自分がアップグレードされたようにね」と語り、自身の成功はスマートドラッグによってもたらされたと言ってはばからない。

 こうした世相を反映し、シリコンヴァレーではスマートドラッグに関連したスタートアップが花盛りだ。代表的なものはNootroboxだろう。グルーポンの元プロダクトマネージャー、ジェフリー・ウーとYouTubeの元マネージャー、マイケル・ブラントが設立した同社は、賦活作用に特化したゼリーキューブ「Go Cubes」(コーヒー3杯分の覚醒作用がある)や記憶力を強化する錠剤「Rise」などを販売。近年には、TwitterやFacebookに投資したことで知られるヴェンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツから200万ドルもの融資を受けており、スマートドラッグ市場の発展性を象徴する事件とされている。

◆日本で入手可能なスマドラを試してみた

 こうしたアメリカのスマートドラックの二次ブームがやがて日本にも波及する可能性は高い。業務における生産性の向上はあらゆるビジネスパーソンの命題であり、スマートドラッグがその解答のひとつならば、試してみたいと考えるのは決して突飛な発想ではないからだ。

 しかしながら、日本ではいまだスマートドラッグの認知度は低く、“胡散臭い健康食品”と見なされる傾向がある。そこで本サイト記者が日本で入手できる主要なスマートドラッグ4種をそれぞれ1週間ほど試してみた。下記がその報告になる。

◯ピラセタム(市価:1箱30錠/約1400円)

 1964年に開発された脳機能調整薬で、最も代表的なスマートドラッグ。脳の一部の血流量と酸素消費量を増やし、臨床実験において失語症や痴呆などの改善が確認されている。

 今回、もっとも効果が体感できたスマートドラッグ。服用以前は複数のタスクを同時に抱えると注意が散漫になり、仕事と無関係のWebサイトをチラ見することがあったが、服用すると心の雑念や動揺が消え、明らかに処理できる仕事量が増えた。

◯アーカリオン(市価:1箱60錠/約2600円)

 スルブチアミン(ビタミンB1の合成誘導体)を有効成分とするスマートドラッグで、日本でも比較的ポピュラー。記憶力と思考力向上の効果があるとされる。

 スマートドラッグの口コミサイトでは「頭がパキっとして意欲的になる」「安心感が出て集中力が上がる」などの意見が散見されるが、記者の体感では、確かにやる気が出た気がしないわけではないが、明確に「ここが変わった」といえる変化はなかった。

◯チロシン(市価:1瓶120錠/約1400円)

 アミノ酸の一種で、ドーパミン(意欲や快感のもととなる神経伝達物質)やノルアドレナリン(興奮を引き起こす神経伝達物質)の材料となる。

 ピラセタムと同様、確かな効果を実感。劇的な覚醒感や興奮はないものの、頭の中のもやが消えて意欲が増加。服用以前はある作業から次の作業への移行の際にわずかな躊躇のようなものがあったが、それがなくなり、結果的に多くの作業をこなせるように。

◯アニラセタム(市価:1箱20錠/約6000円)

 ピラセタムの強化版。その効果はピラセタムの数倍とも。

 今回試したなかでは最も値段が高く、効果も高いと評判のアニラセタムだが、記者にはまるで効果がなかった。体質などによりスマートドラッグの効果は増減するが、口コミサイトでは「飲み過ぎるとずっとしゃべり続けてしまう」など驚きの体験談が多く見られるため、非常に意外な結果だ。

 記者の体験が示すように、スマートドラッグの効果には明確な個人差がある。これがスマートドラッグの胡散臭さの源でもあるのだが、アメリカでは複数のスマートドラッグを組み合わせることでより確かな、より高い効果を得ようとするユーザーが少なくない。この行為は「スタック」と呼ばれ、長い月日をかけて膨大なスマートドラッグを試し、自分にベストの組み合わせを見つけ出していく。先出のデイヴ・アスプリーも長年のスタックの結果、15錠の“黄金比”にたどり着いたのだという。

◆スマドラ服用常態化を危険視する声も

 もちろん、こうした乱用に近いスマートドラッグの服用を危険視する声もある。イェール大学メディカルスクールの神経生物学者エイミー・アーンステンは「ユーザーの多くはスマートドラッグを運動競技におけるステロイド(筋肉増強剤)のようなものだと考えています。しかし、それは適切な喩えではありません」と指摘する。脳は前頭葉や海馬など、いくつもの部位からなる複雑な器官だ。各部位はその他の部位と密接に影響しあっており、スマートドラッグの使用はそうしたバランスを破壊する可能性があるという。その結果、どのような障害がいつ生じるかは誰にもわからない。今のところ、多くのスマートドラッグにおいて致命的な副作用は報告されていないが、だからといって、それはスマートドラッグの安全性を保証するものではないのだ。

 もうひとつ、アメリカで巻き起こっている議論は、スマートドラッグの使用が従業員の待遇格差をもたらすのではないか、というものだ。スマートドラッグを飲むことで確実に生産性が上がるのならば、飲まない従業員の生産性は相対的に低くなり、悪い評価をつけられることになる。その結果導かれる最悪の未来は、社会の構成員全員がスマートドラッグ漬けになるというものだ。

 あなたのオフィスにスマートドラッグが姿を現し始めた時、あなたはそれを手に取るだろうか、それとも拒絶するだろうか。<取材・文/小神野真弘>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/14(火) 9:10

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