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ダジャレで新しいアイデアを発想する「ダジャレノベーション」

Forbes JAPAN 6/15(水) 15:00配信

受験シーズンにコンビニの菓子棚を見てほしい。御利益に溢れたネーミングの数々。単なるダジャレを超えて、「願掛けマーケット」が確立されている。ダジャレとは言葉の結合であり、ここから新しい市場が生まれるのだ。



ダジャレ発想法というとForbes JAPAN読者のみなさんには、本質的ではないといわれてしまいそうです。しかしながらジェームス・W・ヤングは著書『アイデアのつくり方』の中で、「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせでしかない」と語っています。その観点でいえば、異なる意味の言葉を組み合わせて生まれたダジャレは、まさにアイデアそのもの。しかも生まれた時点でキャッチーさを備えたアイデアになっているといえるでしょう。またイノベーションの父といわれるシュンペーターは『経済発展の理論』の中で、「イノベーションとは新結合である」と定義しています。その観点でいえばダジャレは言葉の新結合ですから、イノベーションの一種ととらえることもできそうです。

事実、ダジャレを使った成功事例は世の中にたくさんあります。例えば受験シーズンに盛り上がる願掛けお菓子の数々。カールが「ウカール」を出したのが始まりだといわれていますが、それに続いたキットカットの「きっと勝つ」受験応援施策でさらなる広がりをみせました。いまやCanael Corn(Caramel Corn)やToppa(Toppo)など、各社が願掛けお菓子市場に参入しています。ダジャレが一市場を築いているといっても過言ではないでしょう。

お菓子だけではありません。最近何かと話題の地方創生。お金が潤沢にあるわけではないぶん知恵が必要とされる地域の課題に、ダジャレが効くという事例もあります。例えば青森県鶴田町の、頭の薄い人たちが集まって結成した「ツル多はげます会」。この会が主催する「ハゲ頭で世の中を明るく照らそう」という趣旨の「中秋の有多毛(うたげ=宴)」は日本全国のみならず海外のメディアでも取り上げられ、名物イベントになっています。「毛がないからけがしない」ということで交通安全運動に展開したり、他地域と連携して「全国ひかりサミット」を共催したり。全体的にダジャレばかりのこのチャーミングな取り組みは、鶴田町のPRとして効果的なだけではなく、地域の結束を深めるイベントにもなっているようです。

一方、鳥取県。2014年当時、日本で唯一スタバがなかった鳥取県の知事が「スタバはないけど、日本一のスナバはある。」と発言し、「すなば珈琲」の誕生につながりました。スタバが鳥取にオープンする際に「米系コーヒー店のレシートを見せたら半額」といったキャンペーンが話題になっていたのを記憶しているかたも多いのではないでしょうか。知事のダジャレ発言がきっかけとなったこの騒動で、スターバックスシャミネ鳥取店はオープン初日、売り上げ全国1位を記録。すなば珈琲も来店客が5倍という結果に。現在すなば珈琲は3店舗に拡大しています。ダジャレは元手がかからないため、地域活性施策としても、うまく使えば効果的だといえそうです。

そういったダジャレのポテンシャルに着目。イノベーションを生み出すためにダジャレを用いる手法を「ダジャレノベーション」と名付けて、企業の新商品開発やワークショップなどで実践しています。先日は、YCAM(山口情報芸術センター)研究員の津田和俊さん、アートディレクターの江波戸李生さんとともに、「ダジャレシピ」と題して新しい料理を考えるワークショップを開催しました。大学生から50代まで、様々な世代の男女20名が参加。パズルになったポテト「ポテトリス」や、いろんな素材を一緒に揚げた「十羽一唐揚げ」など、70を超える新しい料理が誕生しました。白熱する会場を眺めながら、ダジャレはアイデアに飛躍とキャッチーさをあたえてくれるものなんだと再認識。今回は料理がテーマでしたが、新商品開発はもちろんのこと、新しいテクノロジーの活用法を考えるとき、世の中にひとこと物申すとき、言いにくいことを伝えるときなど、ダジャレノベーションが活躍するシーンはまだまだありそうです。そして何より印象的だったのは、参加者の楽しそうな姿。日本中の打ち合わせがあんな雰囲気になったとしたら……。会社も、世の中も、人生も、もっと楽しくなるだろうなと、そんな可能性を感じました。

ちなみにワークショップに合わせて江波戸さんがつくってくれたダジャレノベーションのロゴマークは、駄という字が「駄馬」に由来することから着想したもので、太い馬の形をしています。この駄馬というのは、荷物を運ぶための太い馬だったんだとか。荷物を運んでくれる有益な馬ということですね。そう考えると駄洒落も駄目な洒落ではなく、有益な洒落だといえるはず。洒落たことは無理でも、駄洒落なら気兼ねなくいえる。楽しみながらアイデアを出し合うことで、新しい市場までできてしまう。そんな有益さを、ダジャレは備えているはずです。

一説によると、年をとると記憶力は弱まるけれど、ものごとを関連づけて考える脳の力は増すといいます。だからおじさんになるとみんなダジャレを言いたがる(思いついてしまう)らしい。ならばダジャレの価値が高まれば、若者だけではなく年齢高めの世代が活躍できる社会になるはず。そうすればこれからの日本はもっと面白くなるんじゃないか。sharing economyもいいけれど、shareing economy(シャレによる経済活性)っていうのも、あるんじゃないかと。冗談みたいな話ではありますが、割と本気でそう思っています。

電通総研Bチーム◎電通総研内でひっそりと活動を続けていたクリエイティブシンクタンク。「好奇心ファースト」を合言葉に、社内外の特任リサーチャー25人がそれぞれの得意分野を1人1ジャンル常にリサーチ。各種プロジェクトを支援している。平均年齢32.8歳。

鳥巣智行◎電通総研Bチーム所属。クリエーティブ/コピーライター。SoftBank「Pepper」の会話システムや、森永製菓「おかしな自由研究」の商品開発を行う。「ダジャレノベーション」や「マジックワードカード」など、新しいアイデアのつくりかたを研究・開発中。

電通総研 Bチーム

最終更新:6/15(水) 15:00

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