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自衛隊幹部はもっと寝よう 寝不足では中国に勝てない

JBpress 6/15(水) 6:10配信

 ジェームス・スタヴリディス元米海軍大将は、NATO軍司令官を2009年から4年間務めた優秀かつ高名な軍人である。その彼が、「睡眠は兵器」という論説を米国のネットメディア「ハフィントンポスト」に掲載した。

アメリカ海軍のミサイル巡洋艦「ヴィンセンス」

 スタヴリディスは同論説で、軍人の睡眠こそがミサイルや戦闘機よりも重要な戦力であり、国益を守るために必須の要素だと主張し、不眠不休を尊ぶ米軍の組織文化を批判する。

 実はこの不眠不休を尊ぶ文化は、自衛隊の方がよりひどい。しかも、今後の自衛隊の改革によって、さらに悪化する蓋然性が高いのである。その意味で、スタヴリディスの指摘は、日本の離島防衛を考える意味で非常に重要な意味を持つ。

 まずはスタヴリディスの主張を簡単に紹介しよう。

■ 睡眠不足で200人の民間人を虐殺した米軍

 私は40年間を海軍士官として過ごしてきた。私は軍艦乗りだったので月のほとんどを海上で過ごしたが、その際は1日に18~20時間働いて過ごしていた。士官の通常の責務以外にも活動中の部下たちに対してリーダーシップを発揮し、マネジメントを行い、皆をまとめあげねばならかったからである。

 これは海軍だけの話ではない。陸海空軍全てが短時間睡眠である。これは海外展開し、緊張度の高い作戦に従事しているためである。陸軍と海兵隊の士官にとって、戦闘活動中は数時間しか寝ないというのは珍しいことではない。情報を処理し、情報マップを作成し、詳細な作戦計画を策定し、実際に作戦を展開するという行為は膨大な時間がかかる。空軍も戦闘活動中のパイロットはなかなか休憩できるものではない。

 だが、これらは非常に高いコストをもたらすことになる。人間は睡眠不足による疲労困憊状態では、大変な損害をもたらす間違いを犯しやすくなるからだ。士官が戦闘において間違った決定をすれば、畏罪のない民間人や部下である軍人が死んでしまうのである。

 こうしたことは実際に起きている。例えば、1980年代中葉、ペルシャ湾に展開したミサイル巡洋艦「ヴィンセンス」(下の写真)は、民間機であるイラン航空655便をイラン軍の戦闘機と勘違いして対空ミサイルを発射し、撃墜してしまった。その結果、200人以上の罪のない乗客が死亡した。当直だった士官の間違った判断は明らかに国益を損なった。国益の棄損につながる戦術的な決定の多くは、寝不足の指揮官によるものである。

  (* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47074)

 したがって、軍の指揮官は、睡眠を最新技術と同じくらい、軍人の能力を強化する武器だと考えるべきである。つまり、艦長、大隊長、戦闘機パイロットに、十分な睡眠を得るための空間と時間を与えるべきなのだ。

 確かに軍の組織文化は、指揮官たちを部下から見て超人的な存在であることを要求する。指揮官たちは、1時間の昼寝、もしくは6時間の睡眠が必要だということが部下からの信頼を少しづつむしばんでいくのを感じるのだ。だから、カフェイン、レッドブル、ニコチン、本格的なドーピングに頼って不眠不休であろうとする。

 リーダーに不眠不休のスーパーマンであることを求める軍の組織文化は間違っている。軍の指導者が倫理的・道徳的・戦術的に正しい決定をするために、その事実を認めるべきだ。休む指揮官こそが、最高の指揮官なのだ──。

■ 睡眠不足は現代戦ではより深刻に

 スタヴリディスの以上の指摘は、現代戦ではより重みをもち、そして、自衛隊では深刻な問題となる。

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最終更新:6/15(水) 12:45

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