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玄冬の門をくぐったら、あらゆる絆を断ち切る

BEST TIMES 6/16(木) 19:00配信

五木寛之氏の最新刊『玄冬の門』から、「元気に老いる」ために五木氏が説く7つのすすめを、今日から3回シリーズでご紹介します。 

 かつて『林住期』(幻冬舎)を書き、社会人としての務めを終えた人々に「これからは自分の好きなことをしましょう。この時期こそが人生の収穫期なのですから」と呼びかけた五木寛之氏が、今度は、そのさらに上のステージに達した高齢者に向けて書いたのが、このたびKKベストセラーズから出版された『玄冬の門』です。


 ちなみに、本書のタイトルになっている「玄冬」は、中国で、人間の一生を4つ(青春、朱夏、白秋、玄冬)に分けたときの4番目の時期である「玄冬」を指します。
 インドでは「学生(がくしょう)期」「家住期」「林住期」「遊行(ゆぎょう)期」という分け方をするので、このインンドでの分け方に従えば「遊行期」にあたる時期です。
 本書で、五木氏は、元気に老いるための7つのすすめを提唱しています。それは、

 1.同居自立のすすめ
 2.非相続のすすめ
 3.再学問のすすめ
 4.妄想のすすめ
 5.趣味としての養生のすすめ
 6.楽しみとしての宗教のすすめ
 7.単独死のすすめ

の7つです。

 初回の今日は、1「同居自立のすすめ」と2「非相続のすすめ」の2つのすすめについて、本書から抜粋してご紹介します。

1.「同居自立のすすめ」

《遊行期の人には、社会とつながっていないといけないという意識も、必要ないと思います。コミュニティに参加することが高齢の人たちにとって大事なことのように言われますが、コミュニティとは水のように淡々とした関係を保って、まわりに迷惑をかけないことが一番の社会に対する貢献だと思いますね。
 結局、これから先、イヤでも高齢者に対する風当たりが強くなってきます。このあいだ、軽井沢で若い人が大勢乗っていた深夜スキーバスがひっくり返った事故がありました。ドライバーが六十五歳だったので、高齢運転者に若者が犠牲になったと言う人たちがいて、それを言われたら、もう六十過ぎたら車の運転なんかできません。
 社会とのつながりを断って、生活の中で楽しみを見つけていくことが遊行期の人にとっての一つの小さな冒険だと思います。どんなに親切な家族でも、家族がいると自分の思うようには生活できないものです。みんなが食事を作っているのに、自分だけ別の食事を作るわけにもいかないでしょう。だいたい、現役の家族が七十、八十になった人と生活のリズムを一緒にしようというのが間違いではないのか。
 (……)
 そういうことを考えていると、やはり家族と一緒に住んでいることの心強さはあるけれども、一方でそこに不自由さがあるような気がします。ですから、一旦家族の絆から解放されて、独立して生活をやってみる必要があると思いますね。
 夫婦も、同じ一軒の家の中に住んでいても、ある年齢以降は別々に、勝手に生きるほうが本当はいいのではないでしょうか。ですから、共棲自立のすすめというか、一緒に住んでいるけれども、生活のリズムその他、何時に起きるかも、お互い勝手にやる。いつまでも手をつないで買い物に行くとか、そんなことしなくてもいいという人もかなりいるんじゃないでしょうか。ことに女性にはね。》

 

2.非相続のすすめ

《とりあえず、相続は考えないことです。いまの普通の、ある程度の大都市のサラリーマンは、自分の預貯金と、ローンを払い終えた家を一軒もっていると考えると、数千万円の資産のストックがあると言われています。そういう人たちが、子供への相続などを考えるからダメなので、九十までに全部使い尽くしてしまおうという計画を立てて、「九十過ぎたら、もう野垂れ死にでよい」という気にならないといけないと思うのです。
「子孫のために美田を残さず」に徹する必要がある。
 一般には、相続する資産をもっている人が家族に大事にされる傾向があります。おじいちゃんが亡くなったら、いろいろもらうものがあるからと家族は考える。でも、その人が「いや、相続はさせない。俺が生きているうちにあるものは全部使ってしまう」と宣言したら、どうなるか。「じゃあ、勝手にすれば」と言って離れていく家族もいると思いますね。おじいちゃんが、なぜ自分のもっているお金も使わないでいるかというと、家族に大事にされたいからなのではないか。
 いまの非常に現実的な戦いというのは、七十過ぎて、これまで自分がやったことのないような、外国へも行ってみたい、あれもしたいこれもしたいということで、大金をはたいて実行しようとすると、まわりの家族が必死にストップをかけることです。お金を使わせないためにです。》(続)

 

 

 

 

文/小笠原豊樹/編集部

最終更新:6/22(水) 13:03

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