ここから本文です

【よくわかる講座:メンタルヘルス】3.メンタルヘルス対策の「視点」

日本の人事部 6/16(木) 7:30配信

(1)四つのメンタルヘルスケアが目指すもの

メンタルヘルス対策の推進が強く求められる中、前述したように厚生労働省では2000年に「四つのメンタルヘルスケア」からなるステップに基づく指針を示し、企業によるメンタルヘルスへの対応を促している。以下に、「四つのメンタルヘルスケア」を進めていくポイントを解説する。


1)セルフケア~労働者が自ら行うストレスへの気づきと対処
2)ラインによるケア~管理者が行う職場環境の改善と相談への対応
3)自社内の産業保健スタッフによるケア(内部EAP)
4)外部の専門家によるケア(外部EAP)


1)セルフケア~労働者が自ら行うストレスへの気づきと対処

●ストレス反応をコントロールする方法を学び、ストレス耐性を高める

労働者が自ら行う「セルフケア」から、メンタルヘルス対策の第一歩は始まる。その際、自分でストレス反応をコントロールする方法を学び、職場でのストレス耐性を高める「セルフコントロール研修」と呼ばれる手法が有効だ。この手法は、自分のストレスの「現状」をよく知り、上手にストレスと付き合うための「心理学的スキル」を学ぶものである。ここで大切なのは、ストレスをどう捉えるかということ。例えば、新しい仕事を担当することになった時、それを“脅威”と捉えるのか、“コントロール可能なもの”として捉えるのかによって、その後の状況は大きく違ってくる。

もし、脅威と捉えた場合、不安な気持ちに包まれ、どう対処していいのか分からず、ストレスがどんどん溜まっていくことになる。それに対して、コントロール可能なものだと思えば不安な気持ちになることは少ない。むしろ、困難であることをポジティブに考え、難しい仕事にもやりがいを感じ、積極的に対処するだろう。このようにストレスをどう捉えるかによって、心身の反応は両極端なものになるのだ。そのためストレスに遭遇した時に、どういう対処方法を取るかが重要になる。さらに、対処のバリエーションをいくつか持つことも重要だ。自分自身でストレスをうまくコントロールできれば仕事の生産性が向上し、仕事に対して前向きになれるだろう。

また、自分自身でストレスに対処していく(セルフケア)には、以下のような行動やスキルを習得することが有効である。



<「感情・思考」の状態を記録する>
ストレスを感じた時、自分の「感情・思考」の状態を毎日記録していく。意識して日々の感情・思考を記録することによって、自分の認知のパターンや傾向に気づき、ストレスを感じない別の考え方を探すことができるようになる。

<「リラクゼーション」スキルを習得する>
「リラクゼーション」とは、ストレスを受けて発生した感情や生理反応を、できるだけ軽減していくことである。リラクゼーションによって体の反応を変えることで、感情も変えることができるようになる。例えば、「筋弛緩法」「呼吸法」「自律訓練法」といった手法を学び、ストレス感情の減少、肩こりなど筋肉の緊張の減少を図ることができる。さらに、ストレス性疾患(胃潰瘍、パニック不安など)の予防を図っていくことも可能だ。

<「対人関係」スキルを習得する>
「対人関係」を良好に保つことは、会社組織においては非常に重要なことである。また、自分の意見や考えを相手に上手に伝えることができれば、それは自信へとつながっていく。例えば、「アサーション」(意見、考えとして言うべきことは言う)と呼ばれる「対人関係」スキルを習得することによって、職場における人関関係を円滑に進めることができるようになる。


2)ラインによるケア~管理者が行う職場環境の改善と相談への対応

●日頃からの管理・指導とともに、専門家へのつなぎ役としての知識を身に付けておく

次がラインによるケアで、管理者が部下のストレスにどう対処していくかである。管理者には部下の健康状態とともに、労働時間や仕事の量・質をチェックし、職場での人間関係が円滑に維持されているかどうかを常に把握しておくこと求められる。部下がストレスをためていないか、またそのストレスに対処しているかどうかを見極め、心身ともに健康で仕事ができるよう管理・指導し、部下の心身の健康に配慮するのだ。そのためには、部下の不満や抱えているストレス、仕事に対する意欲や気力などについて、話を傾聴する時間を確保することが重要である。

このとき注意しなければならないのは、部下が病気かどうかについては専門家でなければ正しく判断できない、ということ。もちろん“前兆”を感じ取ることは、ケア対策として大変重要なので、管理者は専門家への“つなぎ役”として、必要最低限の知識を身に付けておく必要がある。一見、健康そうに見える人でも、内面はそうではないことが少なくない。管理職は日頃から部下がどういう状況の時にストレスを抱えやすいのかを知り、その対策について部下と一緒になって考え、前向きに仕事に取り組めるよう働きかけていくことが大切である。


3)自社内の産業保健スタッフによるケア(内部EAP)

●産業保健スタッフなどが職場環境やストレスの状況を評価し、管理者と協力して改善を図る

続く「EAP」(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)とは、メンタルヘルス対策として相談室を設けたり、カウンセラーを配置したりして、従業員を支援するプログラムのことである。職場のストレス、上司や部下との人間関係、セクハラ・パワハラ、キャリアに関する問題、プライベートな悩みなど、働く人の仕事の生産性に影響を与える課題の原因と客観的に向き合い、解決の糸口を探し、健康な状態で安定して働く状態をサポートするものである。

そもそもEAPは、アルコール問題が大きな社会問題となった1940年代のアメリカで、アルコール依存症になった社員の早期発見・早期治療を目的として始まったものである。その後、メンタルヘルス全般へ応用されるようになった。

EAPは、内部で行う場合と外部で行う場合がある。内部EAPは、自社内の産業保健スタッフなどが職場環境やストレスの状況について評価し、管理者と協力してその改善を図ることを主目的としている。また、自社内に労働者の心の健康相談に応じる相談機能を設置すると同時に、専門的な治療を要する労働者に対しては、適切な外部EAPを紹介し、心の健康問題を有する労働者の職場復帰や職場適応を指導・支援することが求められている。


4)外部の専門家によるケア(外部EAP)

●近年ではカバーする領域が広がり、利用率が向上

最後は外部によるEAPだが、近年、利用する企業が増えている。その理由は大きく二つ。一つ目は「コスト」が安いことで、二つ目は内部EAPと比べて「利用率」が高いことだ。外部EAPは社外にあるためプライバシーが厳格に守られ、利用する従業員にとってハードルが低いので、結果的に疾患に至る前の早期対応が可能になるからだ。

また、現在ではEAPの認知度が上がり、新たにEAPを扱うプロバイダーも数多く出てきた。その結果、利用者にとって比較・検討しやすい状況になっている。さらに、EAPがアルコール依存症やうつ病などの疾病への対処だけではなく、心身の問題の予防やカウンセリング、そして家族やプライベートな問題、あるいはキャリアや将来的な問題にまで広くカバーするようになってきたことも、利用率を上げる要因になっている。

EAPは、「面談」によるカウンセリングが基本。EAPで扱う問題が、フェース・トゥ・フェースでなければ正確にアセスメントできない類のものだからだ。また、その後のフォローアップ、それに対するカウンセリングやトレーニングも重要だ。なお、電子メールや電話、ファックスなどはあくまで補助的なツールである。

EAPを受けたくない理由としてよく挙げられるのが、「守秘義務は守られているのか」「カウンセラーは信用に足る人なのか」「カウンセリングは自分の問題解決に役立つ手法なのか」などである。導入の際には、このような点からまず解決していくことが課題である。

1/2ページ

最終更新:6/16(木) 7:30

日本の人事部

記事提供社からのご案内(外部サイト)

日本の人事部

株式会社アイ・キュー

毎週更新

無料

日本最大のHRネットワーク。企業研修、採用
、評価、労務などのナレッジコミュニティと
して、イベントや雑誌などと連動しながら
「人・組織」に関する課題解決をサポート。

Yahoo!ニュースからのお知らせ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。