ここから本文です

巨額資金を動かす機関投資家の、知られざる4つの実態

会社四季報オンライン 6/16(木) 19:31配信

 投資主体別売買動向などで開示されているように、「機関投資家」は株式市場におけるメインプレーヤーだ。一方で、多くの個人投資家にとって「機関投資家」ないし「ファンドマネジャー(以下:FM)」というのは、実態のよくわからないえたいの知れない存在だろう。

 私自身、日々FMとして仕事をしているが、同じサラリーマンとは言っても、一般的な事業会社と比べると、ずいぶんと特殊な世界であるという実感はある(事業会社という言い方も大概だが)。

 そこで今回は、FMに関して、個人投資家に知っておいてもらいたいことを中心に述べていきたい。

■ 実態その1 「見えない」タイプのFMが多い

 一言でFMと言っても、その種類は実にさまざまだ。公募投信などで個人のお金を運用するFMのように「見える」タイプがいる一方、私的基金・公的年金のような特定機関投資家のお金を運用する「見えない」タイプもいる。

 一般的に個人投資家が認識するFMは、「見える」タイプであることが多い。彼らは個人投資家がお客様であるので、ファンドに資金を呼び込むため、積極的に情報開示をしている。

 一方で「見えない」タイプのFMというのは、秘匿性の高い資金を運用しているため、顧客情報はもちろんのこと、FMの素性や、運用資産の大きさ、運用戦略、保有銘柄、パフォーマンスなど、すべての情報が非開示だ。もちろんメディア等に出ることもない。外部の人が、どのようにリサーチしても、彼らの情報を得られることはない。

 重要なことは、株式市場における最大の投資主体は、この「見えない」タイプの投資家であるということだ。「見えない」にもかかわらず、大きな影響力を持っている。そういった主体がうごめいているのが、株式市場なのである。

■ 実態その2 短期投資 < 長期投資

 よく個人投資家の書き込みなどで、「機関が入っている」「機関のおもちゃにされている」といったような、機関投資家が何やら需給を恣意的に操作して、個人投資家をもてあそんでいるかのような表現を見掛ける。しかし、これは個人投資家の妄想である。

 運用資産の大きい機関投資家が、流動性の少ない株を回転売買させることは、著しく経済合理性を欠いており、(間違って発注してしまった場合を含め)運用規約や社内のシステム的にも、そのような売買はできないようになっている。運用資産の小さいアルゴリズム運用であれば可能かもしれないが、違法性が高まるため、そもそもリスク&リターンに見合わない。

 1億円を運用するのと、100億円を運用するのでは、見える世界がまったく異なる。100億円規模の運用をする場合、自身の売買インパクトによって株価が動いてしまい、短期売買で利益を得ることなどできない。ファンドサイズが1000億円を超えてくると、さらに別の世界となる。企業業績の変化を精緻に予想し、長期投資を行わなければ利益が出なくなってくるのだ。

 上述の「見えない」タイプの投資家のなかには、新規の資金を受託する場合、1ショット100億円というサイズで資金流入があったりする。つまり、資金力のあるファンドほど、投資期間は長期になり、売買回転率は低くなってくるのである。

■ 実態その3 「本気」で企業業績を予想している

 個人投資家の言うアナリストレポートは、証券会社のアナリストがリテール営業向けに書いたものであり、機関投資家は意思決定に使用していない。運用資産の大きい機関投資家は、自前のアナリスト(バイサイド・アナリスト)部隊を抱えており、より踏み込んだリサーチと業績予想を行い、適正な企業価値を算出している。

 例のごとく、バイサイド・アナリストやFMが、企業にどのような取材をし、どのような業績予想をし、どのようなリターンを見出しているかが、ファンドの顧客以外に情報が漏れることは決してない。世間に銘柄の視点や注目の度合いがばれることも嫌うので、決算説明会のようなオープンな場で質問することもない。

 業績予想を行うに当たっては、何度も先方の企業とミーティングを重ねる。今期や来期の業績がどのようになるかという視点よりも、その企業の本質的な競争力は何であるのかを見極めたり、競争環境に変化がないかを確認することに重点を置くことが多い。当然、経営陣の質についても深く調べ、ガバナンス体制や、組織の企業風土なども徹底的に調べたうえで、その企業の将来の業績予想を作成していく。

 もちろん、それだけ調べても予想が外れたり、想定外のことが起こってしまい、期待した株価パフォーマンスを得られないことは多々ある。しかし、大きな資産を運用しながら、他社よりも優れた成績を残すには、一つひとつの投資において、絶対に勝つ自信が持てるまで、リサーチやディスカッションをするしか方法がない。機関投資家は、この点において想像以上に本気で取り組んでいると思ったほうがよい。

1/2ページ

最終更新:7/25(月) 10:36

会社四季報オンライン

会社四季報オンラインの前後の記事

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。