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日銀の黒田総裁の記者会見-中期的な意味合い

NRI研究員の時事解説 6/17(金) 9:15配信

はじめに

今回のMPMに関しては、金融政策の現状維持を決定したこと自体よりも、円相場の上昇が加速的に進んだことが注目を集めている。円高の理由の一つは「イベント」リスクであり、結果如何では減衰することも考えられる。しかし、いかなる理由であっても、昨年夏以降に円高が進んできたことは、経済動向だけでなく、中期的な政策運営にも様々な影響を持ちうる。

景気判断

今回のFOMCはSEPやdot chartのレビューのタイミングであったが、日銀の経済や物価の見通しの改訂は次回(7月)のMPMで行われる。しかし、この点を考慮してもなお、日銀による今回の景気判断は前回会合(4月)からほとんど変わっていない。変更点は、住宅投資の評価を引き上げたことと、インフレについて(ユーロ圏と同じく)足許はマイナスになるとの見方を示したことだけである。

その意味でも、今回の声明文のポイントは、むしろ国際金融市場の不安定性に関する言及である。つまり、こうした不安定性が経済主体のセンチメントを悪化させたり、デフレマインドの払拭を遅延させたりするリスクがあるとした。(FOMC後の記者会見におけるイエレン議長ほどにストレートではなかったが)黒田総裁は、こうした不安定性の背景の一つが、Brexitを巡る不透明性の高まりであることを示唆した。

危機対策と追加緩和

日本の金融市場にとっては、国際金融市場の不安定性は円高と長期金利の低下として顕現化している。記者会見では、市場の安定化のためにどのような手段を活用するかを問う複数の質問がみられた。これに対し、黒田総裁は主要な中央銀行間による協調対応の活用を示唆した。その上で、具体的な手段への言及を避ける一方で、日銀が既に主要な中央銀行と緊密な情報交換を行っていることを説明した。

一般に、一時的であるとみられる金融市場のストレスに対し、ある種の危機対策で対応することは合理的に見える。加えて、世界的な金融危機への対応の経験を通じて、市場は主要な中央銀行による危機対策には相応の信頼を持っているように見える。それでも、今回の円高に関しては一時的でない可能性のある背景も存在するだけに、市場から見れば、危機対策を講ずるだけで十分であろうかという問いが発せられるかもしれない。

そうした背景の一つは、日米の金融政策運営の先行き見通しの変化がある。つまり、米国に関しては、今回のDEPやdot chartを見る限り、FOMCは次回の利上げに関して一段と慎重であるとの印象を受けたかもしれない。他方で日本に関しては、4月のMPMでインフレ目標の達成見込みを再び延期したにも関わらず、追加緩和の実施を見送っただけに、インフレに対する政策反応関数が減衰しているとの見方がある。

これらを総合すると、円高圧力は特定のイベントだけに依存するのでなく、一定の期間は残存することも考えられる。そうなると、今回の円高も金融システム安定に関する問題から、実体経済に関わる問題へと変質する。その結果、日銀は、円高の結果として生ずるインフレや経済活動への下押し圧力を抑制するため、追加緩和を検討することになる。実際、本日の記者会見でも、黒田総裁は、円高の定着に伴う経済活動への負の影響に対する懸念を示した。その上で、必要な場合には躊躇なく追加緩和に踏み切る考えを再び強調した。

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最終更新:6/17(金) 11:27

NRI研究員の時事解説

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