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「私がシンガポールの教育を使って日本を外から揺さぶります!」ー田村耕太郎

Forbes JAPAN 6/17(金) 17:30配信

元参議院議員で、現在はシンガポール国立大学の教授を務める田村耕太郎氏。現職中から日本のグローバル化について熱心に取り組み、現在もシンガポールからグローバル社会について最新かつ刺激的な情報を発信し続けている。日本が世界のなかで存在感を発揮するためには何が必要か、田村氏に話を聞いた。
(インタビュアー:フォーブス ジャパン副編集長/WEB編集長 谷本有香)



谷本有香(以下、谷本):グローバル化が世界の潮流となっているいま、田村さんが書かれるものを読んでいると、日本はとても遅れをとっているという危機感を持たずにはいられません。日本はいま、世界の中でどのような位置付けなのでしょうか。
 
田村耕太郎(以下、田村):今年3月、アメリカのアリゾナにノーベル賞受賞した科学者や世界最大級の投資家、政治家、世界的ユニコーン起業家など、世界中から選ばれた150人が集まりました。そこに行って再認識させられたのですが、日本に対して本当に無関心になんです。そこは一般公開している世界経済フォーラムなどと違い、クローズドで世界最高の議論をする場所なので外交儀礼はありません。日本のテクノロジーを使って何かしたいとか、日本と一緒に仕事したい、という声が全く聞こえてこない。最初から相手にされていないんです。

たとえばAI(人工知能)を見てみても、日本では囲碁でAIが人間に勝ったことが大きな話題になっていますが、アメリカのAIは実はもっともっと先を行っています。日本ではアメリカやシンガポールでは社会インフラになっているウーバーさえもほとんど普及していません。やっと日本でも広まってきたフィンテックという言葉にしても日本にはないに等しいと言われています。私もそうだと思います。

谷本:なぜ日本はそこまで遅れてしまったのでしょうか。

田村:リーダーのレベルの違いですね。トップのレベルの高さ、層の厚さが比べ物になりません。日本のトップの多くは世界レベルでもまれていません。そもそも、日本の組織のトップで英語を話せる人があまりにも少なすぎます。だから世界の舞台で一次情報を入手したり、世界第一線の人材と自由に意見交換したりする機会がありません。

よく言われている話ですが、内需でまだ食っていけるので、そもそも組織やそのリーダーに、事業の規模やレベルを世界基準にスケールしようという意識が低いですよね。

その次が、多様性への慣れの欠如。アメリカや欧州やシンガポールにいると実に多様な文化的・宗教的背景を持った人で社会が出来上がっています。もちろん、国籍も多様で、国籍や文化的背景を超えて結婚して、そういう背景のもとに生まれた子供もたくさんいますから、社会の多様性は加速しています。

それに対して、日本はまだまだ排他的な社会です。もちろん、その排他性のおかげで治安や社会秩序が保たれているので恩恵もありますが、これからはその逆効果も出てくると思います。例えば、100%遺伝的に同じ日本人でも、組織や集団の秩序を乱すものはどんどん排除しようとする力が日本社会や組織にまだまだあります。そんなことでは、日本人とは全く違う背景で育った多様な外国人を、受け入れるなんて不可能です。

いまや赤ちゃんや幼児でさえ、うるさいから乗り物に乗せるなとか、近くに保育所を作るなという声が上がると聞きます。とても残念です。日本は、社会の秩序を保つことが最優先ですから。

それでは多様な意見がぶつかりあい、新しい考えが生まれてくるような可能性も広がらないですよね。アメリカのように多様性を受け入れられる社会に比べて、どんどん発想の豊かさや社会の柔軟性が遅れてしまうのも当然です。
--{必要なのは、幼児期からの教育を変えること}--
谷本:世界に通用するリーダーを育てていくためには、何が必要だとお考えですか。

田村:世界に通用するというか、激動の21世紀を生き抜くという発想のほうがいいでしょう。人材オリンピックをやっているのではないので(笑)。私は、もう出来上がった人向けの教育とこれからの人向けの教育両方やっています。もう出来上がった人に多くを期待するのは難しいと現実的には思っていましたが、何事も遅すぎることはないので、中高年になってから、21世紀対応人材になる人もいらっしゃいます。

そういう可能性のある人には国立シンガポール大学での私のエグゼクティブプログラムに来ていただいて、世界最高の講師陣とシンガポールで議論して覚醒していただきます。おかげさまでのべ200名を超える、ファミリー企業オーナー、起業家、大企業幹部、霞が関官僚、医師、会計士、弁護士の方々が私のプログラムを修了し、世界で羽ばたいておられます。

現実的には幼児期からの教育を変えることだと思っています。私には4歳の娘がいますが、21世紀をハッピーに自信を持って生きていってもらうためにシンガポールで多様性あふれる環境で自分の頭と感性で決断をしていく教育を楽しんでもらっています。

今のシンガポールには、多様な教育のオプションがあります。世界中の高度人材が、「シンガポールで子育てしたい」と言っています。

私の娘や友人の子供が通っているインターナショナルスクールの平均像から紹介します。まず、教師の質が高いですね。英語、中国が話せるのは当たり前。キャリアチェンジして投資銀行で働き始める人もいるくらいで、つまり投資銀行や弁護士事務所にいてもおかしくない人材が教育に入っているのです。まあインターナショナルスクールの教員の待遇は日本の保育士さんや教員の方よりずっといいそうですが。

シンガポール政府もシンガポールにあるインターナショナルな教育機関も次世代のための教育投資を惜しまないんです。インターナショナルスクールといっても300億円近くかけてつくられた学校も珍しくありません。日本なら大きな大学がいくつも作れるスケールの学校もあります。

日本では保育園や幼稚園は子どもを預けるところとしか認識されていませんが、シンガポールや欧米のリーダーが幼児を通わせる場所は完全に教育の場なんです。「幼児教育こそが人生の成功を最も左右する」との研究成果を出して、シカゴ大学のジェームス・ヘックマン教授は2000年にノーベル経済学賞を受賞しましたが、私の周りの親御さんたちはこれをよく理解しています。

人生の成功がそこにあると思えば、幼児教育なんてコスパのいい投資だと思います。私の周りの親御さんが自らの幼い子供たちを通わせるシンガポールの幼児教育は、科学的なトレーニングを受けたプロの教員と彼らが作った素晴らしいカリキュラムからなっています。私自身も、子どもを通わせながら、とてもバリューがあるなと実感しています。


谷本:具体的にはどのような教育が展開されているのでしょうか。

田村:これはインターナショナルスクールに加えて、塾も含めての話ですが、まず、これからの時代に不可欠を思われる3つの言語を習得します。英語、中国語、コーディング。英語と中国語は、先生との会話の中で覚えます。シンガポール政府もこれを推奨し、有形無形のサポートをしています。

コーディングとは、日本では、プログラミングといった方が通じやすいと思います。これから先、人間とAIそしてロボットが一緒に生活する時代が間違いなくやってきます。AIやロボットのようなテクノロジーに圧倒されることなく、自ら主体的にそういうテクノロジーを使いこなす人材に育てていかないと、いくらテクノロジーが進化しても未来は明るくならないかもしれません。
--{早い時期から専門性の高い知識を}--
シンガポールのインターナショナルスクールや塾では、こうした最先端の教育を子どもに強要するのではなく、幼児心理学や認知神経学に基づいて、子どもが好奇心を持って遊びながら習得できるように工夫しているのが主流です。

たとえば私の娘は、レゴでロボットを作り、そのロボットを動かすためのコーディングを自分で書き上げるトレーニングをゲーム形式で遊びながら塾で学んでいます。楽しくてしようがないので、その塾に行く日を指折り数えて待っていますし、朝起きたら自分で勝手に練習しています。

また、自分の特性を幼児期に自覚させるのも一つの特徴。日本では大学生が就職間近になって自分の適性診断を受けたり、何がやりたいか考え始めたりする場合がほとんどだと思います。私もそうでした。

しかし、シンガポールで娘が通う塾では、9歳くらいから最新のプロファイリング技術を使って、子供たちは自らが、どんな適性があるのか知っていきます。そして自らがなりたいものと自らの適性を比較して、小さいころから科学的データとともに自分と向き合いながら教師と一緒に各自の人生を考えさせます。小学生のころから自分が本当にやりたいことや科学が割り出してくれる自分の特性や強みを考えていくことはとても有意義だと思って、感心して見ています。

谷本:非常に興味深いですね。日本ではそうした教育を実現するのはまだまだ先になりそうでしょうか。

田村:私が持ってきますよ(笑)。すでに動きは始まっています。日本で次世代を育てる素晴らしい企業さんとシンガポールの先端教育がコラボして日本で今言ったような教育が始まります。

一方で、世界を見ている起業家やファミリー企業のオーナーたちは、前述の私が国立シンガポール大学で開催しているエグゼクティブプログラムに来てアジアを学び、そのうえでアジアに自ら家族ともども出てこられて、事業もお子さんも21世紀対応されている方もたくさんいます。これらシンガポールの超一流の教育の力を使って外から日本に揺さぶりをかけていきます(笑)。こうご期待!

田村耕太郎◎The Keys Academyアドバイザー、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院 兼任教授、Milken Instituteシニアフェロー。元参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。

谷本 有香

最終更新:6/17(金) 17:30

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