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原油価格が下落し始めた本当の理由

JBpress 6/17(金) 6:10配信

 WTI原油先物価格は6月8日に1バレル=51.23ドル(終値)に達して以降、下落に転じている。英国のEU離脱という警戒感も加わり、WTI原油価格は5日連続で下落し、15日以降の時間外取引では47ドル台で推移している。

 直接のきっかけは6月10日に米石油サービス会社ベーカーヒューズが、「米国の石油掘削リグ稼働数が2015年8月以来の2週連続の増加となった(328基)」と発表したことにある。「原油価格が1バレル=50ドルになれば、リグ稼働数が増える」という市場の予想通りとなったため、原油価格は10週間ぶりの大幅安となった。

 米国でリグ稼働数が増加したのは2015年7月以来のことである。当時の原油価格は1バレル=60ドル前後だった。その後、シェール企業が生産体制を効率化しているので「同50ドルでも増産態勢に入り、原油市場の供給過剰が進むであろう」という見立てである。

 原油価格は、今年に入って付けた12年ぶりの安値(1バレル=26ドル台)から約90%も上昇しており、市場で高値警戒感が出ていたことも見逃せない。このような不安心理に加え、「増産に備えるシェール企業が50ドルになれば販売価格を確定するために先物の売りが大量に出る」との観測から、「売り」が「売り」を呼ぶ展開になったようだ。

 しかし、市場関係者のこうした反応は“過剰”と言わざるを得ない。米エネルギー省は6月13日、「7月のシェールオイルの生産量は7カ月連続でマイナスとなる(日量12万バレル減)」との見方を示した。つまり、リグ稼働数が増加しても、実際の原油供給に反映されるのはかなり先のことになる。

■ 「原油市場が供給不足に陥る」予測は非現実的

 市場関係者の弱気とは対照的に、OPECは強気の姿勢を崩しておらず、原油が供給過剰になることはないと見ている。

 OPECは6月13日に公表した月報で、「OPECが5月(日量3236バレル)のペースの生産量を維持した場合、第1四半期の過剰供給(日量259万バレル)が下期には日量16万バレルの供給不足となる」との見通しを明らかにした。

 確かに米エネルギー省によれば、5月には世界の世界の原油供給量の3%以上にあたる日量360万バレルの供給が途絶した。地域別には、カナダ、ナイジェリア、リビア、イラク、南スーダン、イエメンなどが、自然災害やテロなどで生産停止に追い込まれている。

 また、中国の原油生産量もこのところ低調である。中国政府が13日に発表したデータによれば、5月の原油生産量は前年比7.3%減となり2001年2月以来最大の落ち込みを示した。

 しかし、OPECの読み通り市場が供給不足に陥ることはなさそうである。

 まず、中国の石油会社が不採算油田をリストラするなど設備投資を減少させれば、中国の原油需要が冷え込む可能性がある。

 またOPEC内に目を転じると、最近はイランの増産以上にイラクが協調体制を乱す「元凶」になりつつある(6月13日付ロイター)。

 イラクは国内の治安状況が深刻なままだが、原油生産量は2012年半ば以来、日量120万バレル増加した(5月の生産量は456万バレル)。さらに2020年までの生産量を日量600万バレルにまで引き上げる計画を有しており、これが実現すればOPECの現在の生産量の全体の6分の1となる。

 イラクが増産を続ける理由は、ISと戦う軍事費がうなぎ上りに拡大しているからである。原油価格が下がれば、収入を確保するためにますます増産せざるを得ない。

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最終更新:6/17(金) 10:35

JBpress

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