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白アスパラガスのためだけに訪れる 札幌「ラ・サンテ」の230℃塩釜焼き

CREA WEB 6/17(金) 12:01配信

vol.10 札幌
都内で頼むのをぐっと我慢して、札幌に出かける

 6月の北海道は心地がいい。

 なんといっても梅雨がないのである。空気がカラッとしていて涼やかな風が時折、頬を撫でる。

 街を、森を歩くのに、なんといい季節だろう。だから、出来得ることなら6月は、避暑ならぬ避梅雨で北海道に旅をして、新緑に輝く山々と大地に触れることにしている。

 山奥ならまだ山菜も収穫できるが、この時期に食べたいのは、アスパラガスである。

 5月から都内でも「白アスパラガス」の名前がメニューに載るが、頼むのをぐっと我慢して、札幌に出かける。

 めざすは、宮の森にあるフレンチレストラン「ラ・サンテ」。この店のスペシャリテ、「北海道産白アスパラガスの笹の塩釜焼き」を食べるのである。

 アミューズは、小さな器に入れたクリームチーズとカブのムース上に、黒千石豆と十勝マッシュルームで作った、土に見立てた茶の粉がかけられている。

 そこへニョキッと白アスパラガスの穂先が顔を出す。土から掘り出すように串でアスパラを取り出して食べる。

 ああ、これから現れるアスパラへの期待が高まり、アスパラをいただく感謝が深くなる。粋な突き出しである。

 続いてのスープも白アスパラガス。ほのかな甘さ中に、苦味がかすかに現れて、食欲を刺激する。

 さらには、脂が体全体にしっとりと回って、しなやかできめ細かい身がはらりと舌の上で崩れる「時鮭のスモーク」に顔をほころばす。

穂先から根元までの、それぞれの味や食感の違いが、明確にわかる

 そしていよいよ待ちかねた白アスパラガス様の登場である。

 塩釜を割る。アスパラが現れる。取り出す。

 あたり一面に、ほの甘い香りが漂う。皿に乗せる。

 ああ、もうたまりません。熱々をかまわず齧り付けば、「生きているよ」と、アスパラが囁く。

 熊笹と塩で包まれ、230℃で蒸し焼きにされたアスパラガスは、命の気配をたっぷりと残し、シャクシャクと穂先を噛めば、ほの甘い香りが漂って、切ない気分となる。

 コリッコリッ。根元を噛めば、大地のほろ苦い養分が口一杯に満たされて、ありがとうと呟く。

 火が通されているのに、生命の躍動を宿している。穂先から根元までの、それぞれの味や食感の違いが、明確にわかる。

 それこそが、まだ生きているという証なのだろう。

「フランスやドイツのアスパラガスでも試したのですが、あちらはバターで炒めたりする、強い調理が向いている。しかし安平町の八木さんが作るアスパラは、この料理法が一番です」

 高橋毅シェフはそう言って、優しい目になった。

 シャクシャク。コリッコリッ。

 命が弾け飛ぶ。

 生かされている喜びがせり上がる。

 いつまでも噛んでいたくなる料理である。腹は膨れないのに、もうこれだけで十二分に充足した気分となってしまう料理でもある。

 もちろんこの後も、この店のもう一つのスペシャリテ、桜の木の薪火を使って焼かれた仔羊肉も、アスパラのソルベ! も食べたけどね。

ラ・サンテ
札幌市宮の森にある、道産食材を中心とした本格フレンチとワインのレストラン。2015年3月に、神社小路と呼ばれる通り沿いの一角へ移転。メインホール14席、個室8席。バリアフリー対応。5月末から6月にかけては、安平・追分の八木さんの露地のホワイトアスパラガスや、道東・足寄の石田さんのミルクラムがおすすめ。要問合せ。

所在地 札幌市中央区北3条西27丁目2-16
電話番号 011-612-9003
営業時間 ランチ(土日祝のみ) 12:00~15:00(L.O. 13:30)、ディナー 18:00~22:30(L.O. 21:00)
定休日 水曜、第2・3木曜
アクセス 地下鉄東西線西28丁目の3番出口から、徒歩約3分。環状通の向側の宮の森スポーツ倶楽部東側の駐車場出口沿いの手前の緑色の大きな家の陰になった、2軒目の小さな一軒家。店の手前に駐車スペースが2台分あり。
URL http://la-sante.jp/

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

マッキー牧元

最終更新:6/17(金) 12:01

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