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学校不祥事の顛末-児童に包丁を向けて「静かにせえ」-(1)

教員養成セミナー 6/18(土) 11:00配信

暴行罪・脅迫罪に該当  “悪ふざけ”では済まされない行為

【今月の事例】
 A県教育委員会は、児童らに包丁を向けるなどしたとして、同県B市内の公立小学校に勤務する男性教諭を同日付で停職6カ月の懲戒処分にしたと発表した。

 県教委によると、教諭は昨年9月頃、担任を務める特別支援学級の児童6人が調理実習で騒いだ際、流し台から刃渡り約16センチの包丁を取り出し、「静かにせえ」と言いながら約3メートル離れた場所から刃先を向け、数日後には同様に1~2メートル離れた場所から刃先を向けた。さらにはその後、実習で包丁を持っていた児童の手を持って、刃先を自分の腹部に向け「こうやってやるんじゃ。切腹」と言って自分の腹を切るまねをしたという。保護者や市の介助員の指摘で発覚。教諭は「静かになると思って(包丁を)見せた」などと話しており、提出していた辞職願が11日受理された。
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1 危険な態様の行為

本事案では、特別支援学級の児童に対する以下の3つの行為が問題となっています。
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〈行為1〉「 静かにせえ」と言いながら約3メートル離れた場所から刃渡り16センチの包丁の刃先を向けた行為

〈行為2〉 1~2メートル離れた場所から同包丁の刃先を向けた行為

〈行為3〉 包丁を持っていた児童の手を持って、刃先を自分の腹に向け「こうやってやるんじゃ。切腹」と言って自分の腹を切るまねをした行為
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 〈行為1〉と〈行為2〉は、暴行・脅迫に当たる行為です(刑法第208条、第222条第1項)。〈行為3〉は、冗談では済まない危険性をはらむ行為である上、児童の心情への悪影響という意味で言えば、〈行為1〉や〈行為2〉よりさらに悪質だとも言えます。


2 男性教諭の言い分

 この男性教諭には、「離れた場所から包丁を見せただけ」「冗談のつもりだった」「自分の腹に刃先を向けた。児童に向けたのではないから危険はなかった」などの言い分があるのかもしれません。しかし、そもそも包丁の安全な扱い方を教えるべき調理実習で、こともあろうに児童を静かにさせようとして刃先を向けるなど、冗談でもやってはいけないことであり、教員としてあるまじき行為です。教育的指導にも当たりませんから、行為の違法性が阻却されることもありません。まして、〈行為3〉は悪ふざけを通り越した行為であり、弁解の余地はありません。


3 指導力の欠如

 子供を静かにさせるため、暴行・脅迫行為という違法行為を利用している点で、男性教諭には指導力が欠如していると言わざるを得ません。

 また、〈行為1〉では約3メートル離れた場所から包丁を向けていましたが、数日後には1~~2メートルの場所から包丁を向けているように、危険な行為が繰り返し行われてきたばかりか、〈行為3〉に至るまで、次第に児童との距離が詰まってきています。漫然と違法行為を繰り返し、しかもエスカレートしているという点でも、厳しい処分が下されて当然と言えるケースです。


4 特別支援学級での行為という悪質性

 特別支援学級の場合、不適切な指導が行われても、児童が被害を訴えることができないことがあります。

 男性教諭がそれを認識しつつ、「どうせ学校外へばれることはない」などと高をくくって不適切な指導を繰り返してきたのであれば、そもそも特別支援学級で教鞭をとる資格はないでしょう。


5 同僚の教員は気付いていたのではないか

 本事例では、教員以外の関係者からの指摘により不祥事が発覚しています。もし、同僚の教員は気付いていたけれども、男性教諭をかばっているうちに、〈行為1〉から〈行為3〉までエスカレートしていったとしたらどうでしょう。早い段階で同僚が男性教諭を注意していれば、〈行為3〉に発展することはなかったかもしれません。そうだとすれば、気付いていた同僚の教員にも、責任の一端があると言えるのではないでしょうか。

 特別支援学級の場合、児童が被害を訴えることができないケースもあることから、同僚の教員がかばい立てすると、不祥事が容易に隠ぺいされる構造があります。同僚の責任も極めて重いと考えてください。

 違法行為や不適切な行為を現認したら、適切に対処することは公務員としての義務です。注意して辞めさせる、管理職へ報告し善処を求める、公益通報窓口へ相談するなどの対処をすべきであり、“見て見ぬふり”だけは絶対しないと肝に銘じていただきたいと思います。


※「教員養成セミナー2016年7月号」より

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

最終更新:6/18(土) 11:00

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