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広島・中村恭平への指導法から見る、「育成のカープ」の面目躍如

ベースボールチャンネル 6/19(日) 6:50配信

2015年はわずかに1試合。抜本的な見直し

 ここ2シーズン、勝ち星はなかった。「未完の大器」と呼ばれた男も27歳を迎えた。150キロ超の速球を武器にスケールの大きなピッチングを見せ、2013年にはプロ初勝利も飾った。しかし、2014年は一軍登板なし、2015年はわずか1試合しか一軍の出番は与えられなかった。

 いつしか、あのスケール感は陰を潜めていた。そんな中村恭平にファームの首脳陣は明確な方向性を示した。

 ・強い球を投げていこう
 ・インコースの球を効果的に使おう

 あくまで、中村の圧倒的なストロングポイントを生かしていく考えである。佐々岡真司二軍投手コーチは証言する。

「いかに腕を振るかです。小さくなってはダメ。そのためにはフォームの面もありますが、メンタルの要素もあると思います」

 大胆な提言もあった。

「腕を振ることです。そのためには、投球だけでなく、守備での送球から腕を振っていこうと言いました。極端な話ですが、それで悪送球になっても仕方ないくらいの思いでした」

フォークの腕の振りがヒント

 もちろん、精神論ではない。佐々岡投手コーチが求めたのは、やみくもな腕の振りでなく、「(体を)タテ回転でしっかり使うこと」を指している。

 そこは本人も自覚するところである。
「ラインは出すイメージですが、やはり、腕を振ろうとしても横振りになってしまうことが多かったです」と振り返る。

 考えを巡らせる左腕は、自分で「ヒント」を見つけた。
 フォークを投げるときの感覚である。

「フォークを投げるとき、理想に近いような腕の振りに近いものがありました。考えれば、去年の悪い時は『とりあえずストレートとスライダー』というピッチングになっていました」

 フォークは威力抜群だった。5月29日、ベイスターズ戦で6回途中まで無失点の好投を支えたのは、中村のフォークボールであった。そして、それに伴う「腕の振り」が彼の魅力を蘇らせた。

「意識づけ」と「理論の裏付け」――二軍での日々が「未完の大器」を新たなステージに導いた。

「ピッチングが小さくならないようにして欲しい。コントロールを気にしても彼の魅力はない。ただ、荒れ方はフォームで抑えていく」(佐々岡コーチ)

 長所を伸ばすか、短所を消していくか……指導者の永遠のテーマであろう。しかし、二者択一とは限らない。
 長所を伸ばすなかで、短所が消えていく。中村恭平の躍進は、本人のポテンシャルはもちろんだが、「育成のカープ」の面目躍如である。

 先発5試合、防御率3点台の安定感である。
 プロ6年目、期待の左腕は初の「シーズン2勝目」に挑む。その向こうには、無限の地平が見えてくるはずである。




坂上俊次

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:6/19(日) 6:50

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