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学校不祥事の顛末-児童に包丁を向けて「静かにせえ」-(2)

教員養成セミナー 6/19(日) 11:00配信

子供たちにとって 安心・安全な場所であるべき学校

【今月の事例】
 A県教育委員会は、児童らに包丁を向けるなどしたとして、同県B市内の公立小学校に勤務する男性教諭を同日付で停職6カ月の懲戒処分にしたと発表した。

 県教委によると、教諭は昨年9月頃、担任を務める特別支援学級の児童6人が調理実習で騒いだ際、流し台から刃渡り約16センチの包丁を取り出し、「静かにせえ」と言いながら約3メートル離れた場所から刃先を向け、数日後には同様に1~2メートル離れた場所から刃先を向けた。さらにはその後、実習で包丁を持っていた児童の手を持って、刃先を自分の腹部に向け「こうやってやるんじゃ。切腹」と言って自分の腹を切るまねをしたという。保護者や市の介助員の指摘で発覚。教諭は「静かになると思って(包丁を)見せた」などと話しており、提出していた辞職願が11日受理された。
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■児童が受けた心の傷は計り知れない

 今回は、公立小学校の男性教諭による不祥事事例です。この教諭は、刃物を使って、特別支援学級の子供たちを静かにさせようとしました。この行為自体、「指導」でも「教育」でもなく、「脅し」であり、さらに言えば「脅迫」です。また、自らの行為を省みることなく、再び刃物を使って悪ふざけをしている点も看過できません。

 教師とは本来、児童の“安全”を確保し、“安心感”を与えるべき存在です。子供もまた、教師がそうした存在でいてくれることを願っています。本事例の教諭は、そうした信頼関係をすべてないがしろにしており、児童が受けた心の傷は計り知れません。

 本事例を新聞等で読んだ保護者や一般の方々から、厳しい批判を受けるのは当然のことでしょう。行政上の責任としては、他の不祥事事例と同じく「信用失墜行為の禁止(地方公務員法第33条)」に抵触し、停職6カ月の懲戒処分は当然のことと言えます。状況次第では、刑事上、民事上の責任が問われる可能性もあることでしょう。

 特別支援学級は、子供一人一人の教育のニーズに即し、その能力を最大限に伸ばすことが求められています。そうした場で行われた行為に対し、腹立たしい思いがする関係者は少なくないでしょう。


■児童生徒は常に“受け身”で“弱い立場”

 指導する教師と教育を受ける児童生徒。その関係性において、児童生徒は常に“受け身”で“弱い立場”にあるといっても過言ではありません。特別支援学級の児童生徒は、自分の意見や考えをうまく表現することができないことも多く、それゆえに教員の脅しや脅迫によって受ける動揺や恐怖感は、人一倍大きなものがあります。本事例の児童が不登校になっていないかどうか、とても心配です。

 本来、教師は子供たちの“範”となるべき存在であり、“教え導く”立場にあります。児童一人一人のよさや可能性を把握し、最大限に伸長させるために、個に応じた指導やきめ細かな指導に努める。そうした教育があってこそ、子供たちは教師を信頼し、安心して学校生活を送り、自己に対する肯定感や有用感を高め、心身を最大限に成長させていくことができます。

 それと比べて本事例の男性教諭の行為には、子供の個性や能力を把握したり、個に応じた適切な指導を心がけたりといった、教師に求められる使命感、自覚が微塵も感じられません。おそらく、それ以前も独りよがりで自分勝手、かつ威圧的な指導を繰り返していたことでしょう。教師に必要な資質としてよく挙げられる「高い専門性」も「豊かな人間性」も欠如していると言わざるを得ません。

 「指導」とは子供たちをより良く変容させることであり、教員を目指す人たちには肝に銘じてほしいと思います。そして、自身の指導力を高めるために、日々学び続ける教師こそが、児童生徒はもちろん、保護者や同僚からも信頼を得られるのです。


■代償は甚大

 通常ならば、この教諭は停職6カ月が過ぎれば、勤務していた学校に戻ることとなります。しかし、果たして子供や保護者が、彼の復帰を受け入れるでしょうか。

 これまでの例を見ると、保護者や子供が拒否するケースが大半です。児童が受けた恐怖心、保護者が抱いた不信感からすれば、当然のことでしょう。復帰させた際には、学校はさらに混乱を来すに違いありません。

 結果としてこの教諭は復帰することなく辞職をしましたが、学校がその信頼を回復するには相当な時間がかかることでしょう。身勝手で傲慢な行動の代償は、あまりにも甚大です。何よりも影響を受けるのは児童生徒であり、教師たる者はそのことを忘れてはいけま
せん。


※「教員養成セミナー2016年7月号」より

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

最終更新:6/19(日) 11:00

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