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西武・多和田プロ初勝利の裏にあった、ヤクルト山田との真っ向勝負――課題と手ごたえの勝負球

ベースボールチャンネル 6/21(火) 11:00配信

1球の重みを感じた球界最強の右打者からの一発

 ピンチでどんな投球を見せるかは、すべての先発投手にとって試金石となる。冷静に状況を見極めて意図のあるボールを投げられるか、あるいは打者の気迫に飲まれて失投してしまうのか。その差が、勝てる投手か否かの分岐点だ。

 6度目の先発でプロ入り初勝利を狙った西武のドラフト1位ルーキー・多和田真三郎にとって、6月19日に行われたヤクルト戦の5回裏、その場面は訪れた。

 5対3でリードして迎えたこの回、無死1塁から大引啓次に甘いスライダーを右中間へのタイムリー3塁打とされて、1点差に迫られる。坂口智隆は空振り三振に打ち取ったものの、川端慎吾に四球を与えて1死1、3塁。

 ここで打席に迎えるのは、球界最強の右打者である山田哲人だ。しかも、この日の第1打席では手痛い2ラン本塁打をレフトスタンドに運ばれている。

「今日は自分のできることをマウンドですべて出し切ろうと思いましたが、1球の重みを感じた登板となってしまいました」

 多和田が後悔の一つとして振り返ったのが、初回に山田に打たれたスライダーだった。真ん中高めに抜ける失投となり、逆転本塁打を浴びている。

 試合後、捕手の炭谷銀仁朗はこう話した。

「(山田は)浮いたボールはしっかり捉えますね。(ボールで四球になってもいい場面だと)僕ももうちょっと伝えれば良かった。1点先制していただけにね」

 一方、多和田は失投の原因をこう分析する。

「3ボール、2ストライクになって、三振をとりたいという欲が出て。それがダメだったと思います」

 自分自身の気持ちのコントロールを狂わせたことが、最悪な結果を招いた。
 続く3回に迎えた山田の2打席目では、初球のスライダーが真ん中低めに外れると、ストレートを4球続けてショートゴロに打ち取っている。そうして迎えた5回の3打席目のピンチでは、どういう攻め方を見せるのか。

 初球から145km、143kmのストレートを続けたが、いずれも外角に外れた。3球目に選択したのが、外角低めのスライダーだ。これをボールゾーンに投げると、山田のバットが空を切る。

 続く4球目、炭谷から再び出たスライダーのサインにうなずくと、外角低めのコースいっぱいに投げ切った。山田に手を出させずに2ストライクと追い込んだ。

 ここで2球続けて追い込んだスライダーには、大きな意味がある。

 富士大学1年時の明治神宮大会でノーヒットノーランを達成した神宮のマウンドだが、この日の多和田には合っていなかった。試合後、炭谷がこう明かしている。

「スライダーが指に引っかかることが多いなと思っていたんですけど、神宮は(プロでは)初めてのマウンドですからね。『マウンドが固くて膝が痛いです』と言っていたんです。それでも後半はスライダーをあまり引っ掛けなかったし、修正できていました」

 そう振り返ったのが、まさに山田を続けて追い込んだスライダーだった。

 一方、潮崎哲也ヘッドコーチ兼投手コーチは、ピッチャー心理をこう語る。

「(山田に1打席目に)打たれた球はスライダーだけど、明らかに投げ損じて真ん中高めに入ったボールだから。そういうのはあまり気にしなくていい。きっちり投げられたら大丈夫、という自信があれば納得するボールになるから」

 3打席目で山田に続けたスライダーは、バッテリーの思惑が一致した2球だった。1打席目の結果球とは違い、明確な意思を持って2ボール、2ストライクに追い込んだ。

 そして、勝負球に選択したのは外角低めのストレート。シュート回転してやや中に入ったものの、力のあるボールだった。

 だが、山田はきっちりライト方向に鋭くたたく。犠牲フライとなり、ヤクルトが5対5の同点に追いついた。

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最終更新:6/21(火) 11:04

ベースボールチャンネル

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