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RUN-D.M.C.のDMCが語る、過去、現在、未来

ローリングストーン日本版 6/21(火) 19:00配信

ラップグループとして初めてグラミー賞ライフタイム・アチーヴメント・アウォードを受賞したRUN-D.M.C.、メンバーのDMCが語る過去、現在、未来とは。



「マイケル・ジャクソンですらラップの絶大な人気を認めた1986年に、俺たちは賞を受け取るべきだったけどな」

「壁をぶち壊し、フロアを切り裂き、屋根を突き抜け、ドアをなぎ倒す」RUN-D.M.C.のその言葉は決してはったりではなかった。アルバムセールスはゴールド・ディスク、そしてプラチナム・ディスクに輝き、シングルをトップ10に送り込み、ローリングストーン誌の表紙を飾るなど、彼らはラップグループとしてあらゆる分野でパイオニアとなった。そして今年のグラミー賞において、ハービー・ハンコック、ジェファーソン・エアプレーン、セリア・クルーズ等と共に、RUN-D.M.C.はラップグループとして初めてライフタイム・アチーヴメント・アウォードを受賞するという快挙を成し遂げた。

※ライフタイム・アチーヴメント・アウォードは、長年にわたる芸術的かつクリエイティブな音楽活動をするアーティストを称え表彰する功労賞。

2002年のジャム・マスター・ジェイの不遇の死を受け、RUN-D.M.C.は解散を発表したが、2012年から2015年には期間限定で再結成を果たし、幾つかのフェスティバルに出演している。また現在リヴァーエンド・ランは、HGTVの「リヴァーエンド・ランのお家改造」や、クッキング・チャンネルの「日曜のディナーはリヴァーエンド・ランにお任せ」といった、ケーブルテレビ番組の司会者としても人気を博している。一方でDMCは自身のコミックブランド「DMCコミックス」を設立した他、現在は自身の幼少期をテーマにした2枚のロックアルバムの制作に取り組んでいるという。彼の過去、現在、そして未来について、ローリングストーン誌はDMCに話を聞いた。

ーRUN-D.M.C.はラップグループのパイオニアとして、これまでにも様々な記録を樹立してきました。グラミーのライフタイム・アチーヴメント・アウォード受賞の知らせを耳にした時の気分はいかがでしたか?

チャック・Dならきっと、「グラミーなんてクソだ」って言うんだろうな。実際に俺も最初はそう思ったよ。オークランド・レイダーズの名選手だった故ケン・ステイブラーが「フットボールの殿堂入りをしようがしまいが、自分の生き方が左右されることはない」と話していたようにね。俺にしてみれば、過去に何度もノミネートされて一度も受賞できなかったのに、今頃ライフタイム・アウォードをくれるってのかって感じだった。俺たちがラップグループとして初めてノミネートされた時、グラミーにはまだラップのカテゴリー自体が存在していなかった。当時は事実上の対象外だったけど、状況が変わった今改めて賞を贈ろうっていうわけだ。

でも過去にこのアウォードを受賞したアーティストたちの仲間入りできることは、とても名誉なことだと思ってる。昔俺はこう言ったんだ。「アメリカン・ミュージック・アワード、グラミー、MTV、VH1、バイアコム、俺はどのアワードも受け取るつもりはない。ランはどう思ってるかわからないが、少なくとも俺はアフリカ・バンバータとズールー・ネイションが『プラネット・ロック』でアワードを受け取るまでは、RUN-D.M.C.が受賞する資格はないと思っている」ラップ・グループとして初めてロックの殿堂入りを果たしたグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイヴだって受賞していないんだぜ。ヒップホップにおける真のパイオニアたちの功績がしっかりと認知されていないのは、本当に残念でならないよ。

受賞のことは光栄に思ってるよ。でも、ラップ・アーティストして自分のエゴイスティックな意見を語らせてもらうと、マイケル・ジャクソンでさえラップの絶大な人気を認めた1986年に、俺たちはグラミーを受賞するべきだった。彼に会った時こう言われたよ。(甲高い声で)「君らは86年にアウォードを総なめすべきだった。僕は世界中を飛び回っていたけど、君らの音楽を耳にしない日はなかったよ。まさにムーヴメントだった」ってね(笑)敬礼までされたんだ。俺たちは慌てて「マイケル、どうか頭を上げて」って言ったんだけど、彼は本気で俺たちに敬意を表してくれていたんだよ。

ー87年のグラミー受賞式には出席しましたか?

もちろんさ。アメリカン・ミュージック・アワードにも出席したよ、ひとつも受賞できなかったけどな(笑)4部門ぐらいノミネートされてたのにな。

ー当時どのように感じていましたか?

別に気にしなかったよ。というのも、俺たちは周囲のミュージシャンたちからはリスペクトされていたからだ。「君らは最高だ」ってボン・ジョヴィに言われたりね。俺たちにとっては賞をもらうことよりも、そういった影響力のあるミュージシャンやアーティストたちからリスペクトされることのほうが重要だったんだ。当時は誰もが俺たちに敬意を表してくれた。「うちの子供たちも君らのファンなんだ」って言われたりね(笑)不思議な気分だったよ。


1987年グラミー賞受賞式でのランDMC(Photo by Ron Galella/WireImage/Getty Images)
ーあなたたちは80年代の音楽シーンに風穴を開けましたが、同時代に活躍したU2やR.E.M.といったロックバンドと比較すれば、その功績が正当に評価されているとは言い難いと思います。

そのとおりだな。俺たちは今でもその状況を変えないといけないと思ってる。自分自身のためだけじゃなく、このジャンルの発展のためにもね。過去に俺はメキシコのロックバンド、モロトフの曲に参加したんだけど、彼らはこう言ってた。「『ウォーク・ディス・ウェイ』のビデオでマイクスタンドをつかんだスティーヴン・タイラーがぶち壊したのはあの部屋の壁だけじゃない。カルチャー、ファッション、黒人と白人の関係、メタルヘッズとパンクス、君らはあらゆるものの境界線を無効化してみせたんだ」

商業的に成功したことで、今はヒップホップが金やセレブのイメージと結びついてしまっていて、本来持っていたカルチャーとしての重要性が忘れられてしまいつつある。壁を壊し、視野を広げ、イノベーションを起こすっていう精神もね。それこそがRUN-D.M.C.が追求したものだったんだ。俺たちはすごく成功していたけど、周囲にはデ・ラ・ソウルのような優れたライバルたちもいた。今のヒップホップのシーンにはそういうのがないと思うんだ。俺たちが86年に自分たちのスタイルを追求していた頃、ラキム、KRSワン、クール・G・ラップ、ポロといったやつらは俺たちを脅かす存在だった。ビッグ・ダディ・ケインが『エイント・ノー・ハーフ・ステッピン』『ロウ』をリリースした時は、俺たちの時代は終わったって思ったもんさ(笑)

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最終更新:6/21(火) 19:00

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