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浅井健一「SHERBETS」インタヴューアーカイヴ:奇跡的に集まった4人の音作り

ローリングストーン日本版 6/21(火) 16:00配信

ローリングストーン日本版 2015年7月号アーカイヴ
SHERBETS インタヴュー



いろんなことがあっても大事に育てていきたい。奇跡的に集まった4人だと思うから。

※ 本インタヴューは、2015年7月号に掲載されたアーカイヴです。

Sherbetsは、BLANKEY JET CITYのキャリアを今や超え、浅井健一にとって最長寿バンドとなった。昨年、3年ぶりのアルバム『きれいな血』をリリース。スピーカーから流れ始めると、水の中でゆらゆら揺れながら、月面でポヨーンポヨーンと跳ねながら、聴いているかのような感覚に陥った。まるで、地球から重力がなくなったみたいだ。歌声が、どこか優しい。聴く人を包み込み、ふわりと浮かせてくれる。彼らの「演奏する気持ちよさ」が浮力につながる。人は音楽で、浮ける。

─本誌前号(2015年6月号)のインタヴューで、浅井さんが「(表題曲の)"きれいな血"を聴いて、福士さんは1日半動けれんかったって」と言っていましたよね。

浅井健一:悲しくなって、動けなくなったの?

福士久美子:なんか、心にきちゃって。感動して、ずっと涙が溢れて・・・曲の中に入っちゃったら、音楽ができなくなっちゃうくらいハマっちゃって。『この曲、なんかすごいなぁ』って。よくライヴでも感動して、演奏しながら涙が出そうになったりするんですけど、この時はアレンジのまとめとかを考えようとしてたら・・・、もう動けない。おかげでレコーディングの日は寝不足でした(笑)。本当にすごくいい曲なんだな、と思いましたね。

仲田憲市:この曲、確か最初はタイトルが違ったよね?

浅井:"ひとりぼっち"

仲田:ああ、"ひとりぼっち"か。"きれいな血"になったけど、最初のタイトルどおり、ひとりぼっち感をすごく感じた。

外村公俊:PVを作りたかったよね。

─今回のアルバム収録曲だと、「LADY NEDY」と「ひょっとして」のPVがありますね。

浅井:"ひょっとして"のPVを先に撮って、"LADY NADY" はナンバー2のポジションだったんだけど、見てみたら『"LADY NEDY"のほうがいいじゃん』という話になって、そっちから発表していこうとなったの。

─タイトルを「ひとりぼっち」から「きれいな血」に変えたのは、なぜですか?

浅井:アルバムタイトルを最後に考えとって、"きれいな血"という言葉が出てきて、これにしようと思って。そん時に、まだ仮題だった"ひとりぼっち"のタイトルを考えないかんなと思っとったら、『この曲って"きれいな血"だがや』と気がついたから、それにした。

─その言葉が浮かんだ状況って、覚えていますか?

浅井:自分の仕事部屋で机に向かって、いろいろ考えとってさ。そん時に出てきたひとつ。

─いくつか候補があったなかから、『きれいな血』にした理由は?

浅井:アルバム全体に合ってるなと思ったし、かっこいいなと思ったし。今まで英語のタイトルばっかだったけど、そろそろ日本語のタイトルつけたいなと思っとったところに"きれいな血"が浮かんで、これだったらすごくいいな、と。

─アルバム『きれいな血』、聴きました。矛盾した表現ですが・・・、音のない世界で聴いているかのような。重力のない感覚になりました。・・・水の中というか、月で聴いているみたいというか。

浅井:そこまで行ったか。

仲田:シラフでしたか?

─ 一滴も飲んでおりません(笑)。気がついたら、ずっと一点を見つめて聴いていたんです。

浅井:それは・・・、うれしいよね。自分のなかでは、今回のアルバムはイケてるのかイケていないのか、ちょっと不安な部分があって。

─なぜですか?

浅井:今まで作ってきてさ、毎回これは絶対にすげえってところまで到達してたんだけど、今回はひょっとして、そこまでいっていないんじゃないかという不安があって。でも、意外とイケるかもと思って、今、うれしい。

─すごく、聴いていて浮遊感がありました。

浅井:お世辞、言っとんじゃなくて? それ、演技じゃないよね?

─そんなすごい演技力があったら、違う職業に就いてます。

浅井:(笑)・・・あばらが痛い。

─ど、どうしました!?

浅井:昨日、あばらケガしちゃって。

福士:えーっ!

─すみません、真剣に感想を伝えたかったのですが、あばらを痛くさせちゃって。

浅井:いや、いちばんうれしいわ。ありがとう、本当に。

─こちらこそです。歌詞も見て、ポジティヴな言葉が散りばめられてるな、と思いました。

浅井:そうだね。この歳になると、ポジティヴなことを言いたいから。若い時はメチャクチャなことを言っとったけど、人生の後半にさしかかってくるとさ、前向きにいきたいんだよね。

─アルバムを作る時って、どうやって作り始めるんでしょう。浅井さんが招集するんですか?

浅井:『作ろうよ』と言って、みんなでリハに入って作り始める。それで、再来月くらいにはレコーディングするよっていう感じ。

─昔は合宿してましたよね。

浅井:今は、福士さんがスタジオをやっていて、そこがこぢんまりしているんだけど、いい感じのところでさ。そこでね、狭いけどドラム入れて、みんなで"せーの"で録ってる。ただ、一回座ったら、あんまり動きたくなくなるんだよね。移動するのが大変で。

福士:隙間が、あんまりないからね。

浅井:ジャングルの奥地で、草をかき分けているような感じになるから。

仲田:ベンジーと俺の距離、1メートルもないくらいだったし(笑)

─だからこそ一体感が出るみたいなことはあるんですか?「この距離がいいんだ!」的な。

福士:そんなことはないです(笑)

浅井:いやいや、大きいスタジオで『じゃあ聴いてみようか』となるとさ、ギター置いて、でかいドア開けて移動して、コントロールルーム行って聴いて、"もういっぺんやろうか"とまた戻る、となる。でも、そこは移動しなくていい。コントロールルームでやってるから、"聴いてみようか"となったら、ヘッドフォン取って聴くだけ(笑)

外村:俺だけは、別の部屋なんだけどね。

─何となく、4畳半くらいの所でレコーディングしてるイメージなんですけど・・・。

浅井:20畳くらいあるんだよ。ただ物が多いから、移動が大変なだけで。

─けもの道みたいな道をかき分けるんですね(笑)。そうやって作られたアルバムで、皆さんの思い入れの強い曲はどれですか?

仲田:今回のアルバムを作っていて少し不思議だったのは、今まではどっちかと言うとダークやマニアックな系統が好きだと自分では思っていたんだけど、案外"ワナフィー"とか好きかな、と。そう思った自分にびっくりと言うと大げさだけど、意外だったというか。5月の渋谷のライヴで久々に "Pola Rola"(『Johnny Hell』収録)をやったんだけど、シンプルで軽快なところがちょっと"ワナフィー"を思い出したね。そういう曲って、自分ではあんまり好んでいないと認識していたんだけど、最近は好きかな。

福士:私は・・・、"きれいな血"には最初に言ったようにメチャメチャやられて。あと、自分が詞と曲を書いた"She"は、延々と終わらない戦争ばかりやっているこの世界に腹が立ってたんですが、そんな時期に後藤健二さん(イスラム国に殺害されたフリージャーナリスト)のことがあって、政治や戦争や人間についていっぱい考えて。そんな想いを伝えられたらいいなと、この曲ができました。最初は少しだけオブラートに包んだ歌詞にしたんだけど、やっぱり全部、まっすぐ言っちゃおうと思って、あとから一部書き換えたんです。"ワナフィー"は、私もすごく気に入っていて。コーラスを入れる時に、『バズに言うみたいに』ということになって、バズは私が前に預かって飼っていたニューファンドランドというの黒いフサフサの大きな犬なんですけど、そう考えたら急にうしくなって、はりきってコーラスを入れてました。この曲を聴くといつも、バズのいた光景が浮かんでくるんです。仲田さんと同じく、意外とすごくいいなぁと思ったんですよ。聴くと元気になるし、笑えるし、"思い描こう行きたい世界を""この世は夢でできてる"ってステキなことを言ってるし。それから外ちゃん(外村)が作った"ミツバチ"は、改めてまた詞を聴いていたら、外ちゃんって、こういう心も持ってるんだよな、と思うとグッとくるところもあったり。

外村:そうだね、僕も思い入れの強い曲を聞かれたら"ミツバチ"かな。作曲は手伝ってもらったけど、改めてこの曲を聴いて、さすが俺だなと思ったね。一時期はこの曲を聴きすぎて、もういいかって、聴きたくないところまで来ていたんだけど、ほんの2~3日前に聴いたら、やっぱりさすがは俺だな、と(笑)

浅井:あ、ここで言っとくけど、"Blue Lagoon"は仲田先輩の歌じゃないからね。

仲田:そんなこと、言わなくてもいいよ!誰も気づいてなかったのに(笑)

─"僕の友達は 毎日お酒ばかり飲んで 店を渡り歩く"という歌詞は、仲田さんのことじゃないんですか?

浅井:きっちり言っとくけど、仲田先輩の歌じゃないからね。

外村:何回も強調しておきたいんだ(笑)

浅井:ハンパないよ、この曲どころじゃないから。この曲の上をいくからね、先輩は。

仲田:いやいや、大げさですよ。

福士:でも私、この詞を聴いてるとどうしても笑えちゃうんだよね、思い出して(笑)

浅井:これを見て歌詞って本当のことを書けばいいんだって考える人、いっぱいいると思う(笑)。それとNew Ruby Tuesdayは、演奏もバッチリで奇跡的なテイクだと思ってるかな。一発で録ったんだけど。

─以前、浅井さんが「Sherbetsではよく奇跡が起きる」と言っていましたが、今回のアルバムでも実感されました?

浅井:その奇跡が、あるにはあるんだけど、いつもより少ないのかな、というのが自分の中で心配なところだった。でもそういうやつこそ、世間に広まるということもあるんで。いつも"奇跡がすっごい入っとるで、絶対すごい!"と、意気揚々と宣伝活動するんだけど、数字を見てあれ?となることがあるから。今回は、その逆だったらいいと思ってる。なんか、歌いやすかったしね。エンジニアやマイクがよかったし、声がいいふうに表現できて、リラックスして出せてさ。昔は"歌うぞ"という感じの声だったんだけど、普段の、いちばんいい感じの"歌の声"になってる気がしとって。そこらへんはすごくいいな、と思う。

─ほかにも奇跡は起きたんですか?

浅井:全曲、いいテイクは録れたから、奇跡とまでは言わんかもだけど、いっぱいあると思うよ。

─このバンドにしかできない音楽ですし。

浅井:うん、それが大事だと思う、バンドって。

─改めて、皆さんにとってSherbetsとは?

浅井:この4人でしか表せない世界があるから、それが上手くできた時はうれしいんだよね。ライヴでもそうだし、音楽を作っとっても、すごく良い曲ができた時は喜びなんだよ。ひとつの世界がここにあるから、その喜びを目指して頑張っていこうと思った。自分が、喜びたがってる。

─浅井さんは、ほかにもいろんな活動をしていますが、特にこのバンドにしかできないことって、何だと思いますか?

浅井:手触りというか、質感が全然違うじゃん、Sherbets って。この4人で出すとさ。メンバーそれぞれの性格、やってきたこと、いろんなことが混ざり合って、反応し合ってそういう世界がで若い時はメチャクチャなことを言っとったけど、人生の後半にさしかかってくると前向きにいきたいんだよねきる。Sherbetsの音は、ほかのバンドでは出せないと思う。独自の冷たさというか、ちょっとダークな感じもあるし。"Baby Revolution"(『Natural』収録)みたいに、たまにおもろい感じもある。

─それでは、仲田さんにとっては?

仲田:いっぱいバンドはあるのに、あまりピンと来るバンドが、皆無とは言わないけど、なくて。そんななかで、ベンジーが言ったことと似ているけど、俺ら4人の個性やいろんなものが、ぶつかったり溶け合ったりして、いいものが生まれて、いいライヴをこなしてきて。それが続いていることは、素敵なことで。うん、もっとたくさんの人に聴いてもらいたい、というのはあるかな。このアルバムが突破口になってくれるといいね。もっと浸透して、ある程度のファンがいてくれて・・・、そしてこれからも続いていきたいと思います。

─福士さん、いかがですか?

福士:バンドを一緒にやって、いいと思える音や世界を作れることは、奇跡の出会いかな、と私は思うんです。Sherbetsはひとりひとりに個性があって、本当に世界を持っているバンド。音楽は、あるレベルを超えると生きてきた人生そのものの音色が出せるようになると思うんですが、Sherbetsもその人そのものの音が出ていて、4人で合わせた時に特別な世界ができ上がる。みんなで音を出していると単純に気持ちいいし、するするっと世界ができていく感じも自然で。そういう特別な4人が集まったバンドなんだな、って時々感じます。だから自分の中では、すごく大切にしたいんです。バンドはちゃんと育てていかないと、大きな木にならないと思うので、いろんなことがあっても大事に育てていきたい。それくらい、奇跡的に集まった4人だと思うから。

─そして外村さん、お願いします。

外村:よく無事で、ここまでやってきたと思うよ(笑)。何ごともなく。

福士:生還しました(笑)

外村:ビートルズを聴くと、ビートルズだってわかるじゃん。Sherbetsも音を聴いたら『あ、Sherbetsだ』ってわかる。そういうのがもっともっと多くの人に、広まったらいいかな。たくさんの人が、例えば街で流れている僕らの音をふと聴いて、Sherbetsじゃんってわかるようになったらいいな、と思う。

─これだけキャリアが長いのに、まだまだ無限の可能性を感じる。不思議なバンドです。きっと皆さんの中でも、Sherbetsでやってみたいこと、まだあるんじゃないかと思うのですが。

浅井:すごくかっこいい曲を今までたくさん作ってきたから、急にみんなが気づき始めて、ライヴにお客さんがもっとたくさん来るようになったり、CDがとんでもなく売れ始めてほしいな。あとは・・・外国のフェスに出たい。英語の字幕を、ちゃんと入れてもらってさ。

仲田:いいね、外国のフェス。それなら俺はグラストンベリー(・フェスティバル)に出たい。

福士:私も、前から海外のフェスは行きたいと思っていて。あと、Sherbetsが今結成して何年目だったか忘れちゃったけど・・・

─Sherbetsになってからは、17年目ですね。

福士:20周年を迎える時は武道館とか、東京ドームとか、それくらいの会場で公演ができるくらいみんなが聴いてくれるように・・・、Sherbets音楽が愛されたらいいな、と思います。

外村:うん、武道館でやりたいなぁ。

福士:でも20周年は3年後か。それだと遅いから、もうちょっと早くやりたいね。

外村:それよりも、もっとCDが売れてほしい、それがいちばんだけどね。まずは聴いてもらわないと、何も動かないから。

SHERBETS
シャーベッツ ○ 1996年、Sherbetを結成し、シングル『ゴースト』でデビュー。98年にSherbetsへと改名。2011年、一度解散を発表するが、直後に撤回。現在のメンバーは浅井健一(ヴォーカル、ギター)、福士久美子(キーボード、コーラス)、仲田憲市(ベース)、外村公敏(ドラム)。
http://sherbets.tokyo/

Mio Shinozaki

最終更新:6/21(火) 16:00

ローリングストーン日本版

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