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日本旅行ブームに湧くタイ。もっとも人気なスポットは「上野」の何故?

HARBOR BUSINESS Online 6/21(火) 16:10配信

 タイ人の日本旅行ブームが止まらない。

 2012年にタイ国際航空が札幌直行便を就航させ、直後の札幌の雪祭りに訪れるタイ人が激増したことでブームが始まった。それを受けて日本政府は2013年7月から、タイ人の15日を超えない滞在に対して短期査証(観光ビザなど)の免除を決定。2016年4月は単月の外国人訪日者総数が208万人超と過去最高、2か月連続で200万人を突破し、タイ人も2016年1~5月期だけでも前年比15%増となっている。

 ブーム当初は団体旅行で来るタイ人が多かった。日本の北から南の主要都市を5日間で巡るなどハードスケジュールのツアーが目立ち、徐々に1~2都市のゆったりしたスケジュールへと人気が変遷。今はリピーターの個人旅行が増加している。

 1990年代後半に日本人が個人でタイに行き始めたころに今のタイ人日本旅行ブームが似ていて、かつての日本人のようにタイ人旅行者たちはコストパフォーマンスに優れた宿を必死に探している。日本ではサッカーの日韓ワールドカップのころに南千住近辺の日雇い労働者の街が外国人向けのゲストハウス街になった。さらにそのエリアが拡大しているのか、南千住から南に下った浅草周辺もゲストハウスが増え、タイ人の姿も見受けられるようになった。

 そんな日本旅行を個人で楽しみたいタイ人の中には安い宿に泊まりたいが共有スペースが多いゲストハウスは嫌だという人もいる。そういった人は今、上野に足が向かっている。成田や羽田からのアクセスもよく、アメ横もそばという好立地にタイ人が注目しているようだ。

◆上野でも特にタイ人に人気の宿とは?

 その中で特にタイ人が集まってくるのが「上野NEW伊豆ホテル」だ。

 今年68年目の老舗で、木造の旅館から始まり、その後地方からの出張者向けビジネスホテルとなった。現在は創業者の孫に当たる取締役支配人の飯田氏が取り仕切っている。氏は前職の出張でタイに行ったことがある程度なのだが、意図せず宿泊客の大半がタイ人になっている状態だという。

「欧米のリピーターも少なくない中でタイ人が増えたのはこの数年です。どうやらタイのネットなどで情報が出ているようですが、詳しいことはよくわかっていません」(飯田氏)

 欧米の宿泊客はイギリスの有名ガイドブック「ラフガイド 東京版」に記載されていることで訪れていることが確認できているが、タイ人客に人気になった理由がよくわかっていない。そこで、筆者がタイ語でネット検索をしてみた。タイには日本の2ちゃんねるに相当するネット掲示板「パンティップ」があり、タイの日本好きはそこで様々な情報収集をしているとされる。

 果たしてそこで「上野NEW伊豆ホテル」についての情報交換はなされているのか??

◆2008年から「タイの2ちゃん」で話題に

 思った通り、掲示板内に「上野NEW伊豆ホテル」に関する書き込みがいくつか見受けられた。2008年にこのホテルの名前がすでに挙がっており、「ここの従業員は英語が話せるので宿泊しやすい」と褒められている。また、日本旅行ブームが大爆発する前夜である2013年4月には投稿者の質問に対し東京の安くて泊まりやすいホテルのベスト3にここの名前を挙げている人がいた。

 タイ人は東南アジアの中では近年まで本をあまり読まない傾向にあったこともあり、SNSが発達する以前は口コミが情報源だった。

「パンティップ」は文字情報とはいえ口コミ情報同様のため、タイ人の性質にマッチしたのだろう。無記名で投稿できる掲示板だが、タイ人は罵詈雑言などを書くことはあまりないので、情報を信用して「上野NEW伊豆ホテル」に流れてきた。さらに、新たな宿泊者たちが「アゴダ」などの予約サイトで好意的なレビューを書き、より人気が上がっていると思われる。

 それにしても、なぜ上野がタイ人から注目を集めているのだろうか?

◆タイ人に人気の上野の名物スポットは?

 上野のアメ横は現在は中国系を筆頭にさまざまな人種が集う国際的な街になっており、服飾店ですら免税対応店が大半であるなど、国際化も進んでいる。とはいえ、なぜタイ人に上野が注目されているのだろうか? アメ横を歩いていたタイ人に話を聞いた。

「表参道や渋谷などにも行きますが、上野は服や靴がたくさんありますし、秋葉原も近い。さらに多慶屋があるので東京で一番行きたいのは上野ですね」

「多慶屋」は紫色のビルが目印の、東京メトロ日比谷線仲御徒町駅の前にある巨大なディスカウント店だ。この店の存在が上野にタイ人が集まる大きな理由のひとつであると考えられる。言葉が苦手でも最初からディスカウント価格で買いものができる。「上野NEW伊豆ホテル」の飯田氏も「多慶屋」のタイ人客受け入れの手際のよさに感心している。

「多慶屋がこの近辺で最も早くタイ人客への対応を実施したところだと思いますよ。タイ語の案内板などをいち早く作っていましたから」

◆今後も定着しそうな上野人気

 タイ人は比較的おとなしいタイプが多く、部屋の使い方などで多少のトラブルを起こす人はいるものの、概ね優良顧客である。そのため、「上野NEW伊豆ホテル」でもよりタイ人に来てもらいやすくするため、タイ語の注意書きなどを設置したり、現在はタイ語のウェブサイトも制作中だ。

「顧客をタイ人に絞った場合、日本旅行のブームが過ぎてしまったら大打撃ですから、日本人やほかの国の方にも来てもらいたいとは思います。タイ語のウェブサイトは集客というよりは感謝の気持ちを前面に出す方向で考えています」

 タイ人にとって日本旅行はある程度定着してきている。これからタイも不景気になることも言われているが、日本旅行を続けるタイ人は不景気になっても一定数はいるはずだ。タイでなにが起きようと日本に着いたらまず上野に向かうというタイ人もしっかりと定着するのではないだろうか。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/21(火) 16:10

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