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「最近の若い者は」などという常套句を寄せ付けない。頼もしいぞ、高校生! 第3回高校生直木賞レポート

本の話WEB 6/22(水) 12:00配信

 高校生直木賞は過去1年の直木賞候補作の中から、高校生が自分たちにとっての1冊を決める試みで、一昨年から始まり、今年で3回目の開催です。

 北は北海道、南は九州から19校が参加。参加校を2班に分けて、第153回、第154回の直木賞候補作それぞれについて校内予選で議論してもらい、その結果を受けて下記の最終候補作に絞られました。

 青山文平『つまをめとらば』(文藝春秋)

 門井慶喜『東京帝大叡古教授』(小学館)

 西川美和『永い言い訳』(文藝春秋)

 深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社)

 宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)

 柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋)

 この6作をさらに校内予選にかけたうえで、受賞作を決定する全国大会に各校の代表生徒が臨みました。

 参加校数は過去最多で、昨年に比べて7校増。嬉しい悲鳴を上げつつも、「19名での議論が成立させられるのか?」と、実行委員会の面々は頭を悩ませるばかり。

 本家・直木賞の選考委員は9名なので、高校生直木賞全国大会では約2倍の人数をさばくことになります。司会を務めるのは本家同様に「オール讀物」編集長ですが、いつもとは違った緊張感を漂わせていました。

 さらに、今回は新たな試みとして、オーディエンス席を設け、新聞などマスメディアの取材も入ることに。「衆人環視のもと高校生は緊張せずに話せるか」「会場全体に議論の声が行き届くだろうか」など、不安の種は尽きません。会場設営の段階から、机や椅子の配置を試行錯誤したり、マイクを導入したりとできる限りの工夫を凝らしたものの、本番で上手くいくかはわかりません。

 落ち着かぬ気持ちを抱えたまま、ゴールデンウィーク真っ只中の5月4日、全国大会当日を迎えました。

 議論の席についた高校生たちは最初こそ緊張していて初々しかったのですが、それも束の間。こちらの心配をよそに、隅々まで響き渡る声のボリュームと歯に一枚たりとも衣を着せぬ物言いで、会場はどんどん熱を帯びていきます。かなり意見が割れたものの、3時間半の激論の末、受賞作は『ナイルパーチの女子会』に決定! 議論終了後には急遽、著者の柚木麻子さんと高校生が電話で直接会話するというサプライズもあり、大盛り上がりのうちに第3回大会は幕を下ろしました。

 高校生直木賞のおもしろさの一つは、どのような小説が受賞にふさわしいかの基準を高校生たち自身が考え、議論を通して固めていくプロセスにあります。『ナイルパーチの女子会』については、「心が抉られすぎてつらい。友人に薦められるかという観点でいうと×をつけざるをえない」という意見も多く出た一方で、「我が校では“人生に影響するか”というコンセプトで選考し、全員が本作に〇をつけた。現代のネット社会では、高校生がブログやツイッターで自分の日常を発信できる。そのキラキラした部分だけを抜粋して他人から『いいね』をもらえる肯定感を無意識に欲しているのではないか、と考えさせられた」という声も。物語から受けた衝撃を前向きに捉える流れが次第に生まれ、受賞決定に至りました。

 高校生たちが自分のことばで意見を述べあう雄姿には、「最近の若い者は」などという常套句を寄せ付けない凛々しさが満ち満ちていました。頼もしいぞ、高校生!

 若いエネルギーにあてられて、傍聴した我々も心地よい疲労感に包まれたのでした。

 選考会の詳しい模様と柚木さんの記念インタビューは6月22日発売のオール讀物7月号に掲載します。是非そちらもご覧ください。

第3回高校生直木賞
http://koukouseinaoki.com/

最終更新:6/22(水) 12:00

本の話WEB

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
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