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人に好かれようとするよりも、人を好きになる生き方 『14歳の君へ―どう考えどう生きるか』 (池田晶子 著)

本の話WEB 6/22(水) 12:00配信

忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。
今日は俵万智さん。

 本屋さんで、たまたま手にとった本だった。以前このコラムで紹介した『悲しみの秘義』(若松英輔著)に、池田晶子の文章が引用されていて、名前が心に刻まれていた。あ、あの人の書いたものだ、タイトルからすると12歳の息子に、ちょうどいいかもしれない……。

 しかし、いったん読みはじめると、私自身がすっかり魅了されてしまった。友だち、勉強、戦争、お金、幸福……十代の半ばから感じはじめる、社会や世界や人生に対する疑問やモヤモヤ。それらについて、まことにわかりやすく、深く、著者は語りかけてくれる。答えを教えるというのではなく、こんなふうに考える方法があるよと、こんなふうな見方をすれば、幸せな方向へ道が開けるんじゃないかと。

 五十代になったからといって、疑問やモヤモヤが解消しているわけではない。いや、むしろそういう問題と向き合うことすらしなくなっているぶん、十代以上に、心に沁みてくる面がある。

 とはいえ、さすがにいい大人なので、暗記だけの勉強のつまらなさなどについては、先回りしてわかったような気分で読む。が、ではなぜ勉強するのか、ほんとうの勉強とは何かを、このように鮮やかに子どもに伝えられるかというと、いささか心もとない。歴史や宇宙について、もう少し早く本書に出会えていたら、自分の十代は違っていたかも、とも思う。

「おお、私は間違っていなかった!」と嬉しくなるページもあった。「人に好かれようとするよりも、人を好きになるようにしよう」というくだりだ。「人に好かれようとするよりも、人を好きになる方が、断然面白いこと」「人に好かれることは、自分じゃどうもできないことだけど、人を好きになることなら、自分でできることだからね」と著者は言う。

 自慢じゃないが(自慢かもしれないが)私は、人を好きになるのが得意だ。惚れっぽいとも言う。自分が人生で得たよきものは、ほぼこの性質のおかげのような気がしていたが、このたび確信に変わった。

 文字通り14歳にはもちろん、大人が立ち止まって人生を考えるのに、とても素晴らしい指針をくれる一冊だ。

 12歳の息子にもすすめたいが、一か所だけまだ読ませたくないところがあった。「宗教」の冒頭「サンタクロースが本当にいると思っている人は、さすがにもういないよね。」……やっぱり14歳くらいまで、待とうかな。

文:俵 万智

最終更新:6/22(水) 12:00

本の話WEB

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。