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パズルから顔をあげるには

コーチ・エィ 6/22(水) 8:10配信

液晶テレビの1インチあたりの価格をご存知でしょうか。

かつては1インチ1万円と言われていたのが、現在は32インチのハイビジョンテレビが3万円程度で売られています。およそ1インチ1000円の計算です。テレビの性能は、長い年月をかけて画質や重量など、さまざまな面で向上し、売り上げが伸びました。しかし、2000年代半ば、その性能が一般顧客の求める水準を超えて以降、製品の差別化が難しくなり、際限なき価格競争に陥りました。(※1)

“画面はきれいであるべきだ”という「前提」の元で性能向上を追及し、売り続けた結果、顧客の求める水準を超えた時点から改善の割には売上につながらない、ということが起きたのです。つまり、顧客が満足する水準への到達前に、過去の前提を根本から見直し、対応する機会を持つことが必要だったのではないかと思います。

しかし、日常の中で「根本」を見直すことは、なかなか難しいことです。

科学史の研究にみる「根本」を見直すヒントとは?

90年代後期に科学史を研究したMIT教授トーマス・クーンは、著書『科学革命の構造』で、科学における進歩がいかにして起こるのかを記しました。「パラダイム」という言葉はこの本で登場し、「ものの見方・考え方を根本的に規定している概念的枠組み」として現在も用いられています。(※2)

「パラダイム」とは、簡単に言えば「考えの前提となる共通認識」のようなものです。天文学でいうところの天動説、地動説にあたります。

クーンは「パラダイムに則った研究」を「パズル解き」に例えました。既存のパラダイムによって「こうなるはずだ」という完成図があり、それに向けた研究はパズルピースをはめていく作業のようなものだと考えたのです。

しかし、実際に科学者たちが研究を進めていくと、パラダイムでは説明のつかない現象に出くわします。パズルでうまくはまらないピースが見つかった、という状況です。そうした場合、科学者たちは既存のパラダイムに沿って考え、「理論を場当たり的にいじくって対処」する場合がある、とクーンは言います。

16世紀初期までは、天文学者は天動説の予測と実測値の食い違いに対して、理論体系に特別な補正を加えることで対応していました。その結果、天文学は複雑化し、一方を直せば他方に食い違いが現れるという有様だったそうです。

そこで現れるのが、コペルニクスの地動説という新しいパラダイムです。クーンは「変則性をより深く認識することが、理論の変革への前提となる」と述べ、パラダイムでは説明できない事象の変則性を認め、「既存のパラダイムを疑う姿勢」が、科学の革命的な発展につながることを示唆しています。「変則性」はビジネスでいうならば、思ったより売上があがらない、上手くいかないという事態といえるでしょう。

しかし、既存のパラダイムを疑うことは容易ではありません。というのも、当事者には「当たり前」のことであり、人はそもそも、「自分がどんなパラダイムを持っているのか」を認識できないことがあるためです。また、既存のパラダイムで成功体験があればあるほど、それを見直すのは難しいということもあるでしょう。

ビジネスでも、新しい市場が見えない、赤字部門でも継続してしまう、といったことがあります。例えば、眼鏡は「視力の矯正をするための道具」という前提の中にいると、ブルーライトをカットするための眼鏡や、花粉対策用の眼鏡という新たな可能性に目を向けるのは難しいでしょう。

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最終更新:6/22(水) 8:10

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