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中日・堂上直倫、不動のショートへ立ちはだかる高い“心”の壁

ベースボールチャンネル 6/22(水) 11:00配信

プロ野球選手として磨くべきは技術よりハート

 谷繁元信監督の下で再建を推し進める中日ドラゴンズでは、次代を担うべき新たな力が少しずつ花を開かせている。その中で“ようやく”という感があるのが堂上直倫だ。

 元中日投手で、球団職員も務めた堂上 照を父に持ち、地元の愛工大名電高で活躍した大型遊撃手は、ドラフトでも中日、巨人、阪神が1位入札で競合。抽選の末に、3歳上の兄・剛裕(現・巨人)と同じく、子供の頃から憧れてきたドラゴンズのユニフォームに袖を通すことになる。

 入団当時の監督だった落合博満は、堂上の潜在能力の高さと課題をこう語っていた。

「直倫の内野守備は、プロの世界でもトップクラス。ただ、欲がないというか、のんびりしすぎている。お兄ちゃんは努力家だけど融通が利かなくて、兄弟二人の性格を足して2で割ると、いい選手になるんじゃないかと感じることがある」

 1年目からファームでサードの定位置を与えられ、打率.244、5本塁打36打点を挙げると、大きなチャンスが3年目に訪れる。
 井端弘和(現・巨人コーチ)の故障で二塁手として出場機会を得ると、82試合に出場して打率.263、5本塁打30打点をマーク。クライマックスシリーズ、日本シリーズでもスタメン出場を果たすなど、大きな飛躍を遂げたのだ。

 ところが、そこで落合が懸念していた欲のなさが顔を覗かせる。春季キャンプで体調を崩したり、小さな故障で自分から戦列を離れたり……。2012年に高橋周平が入団すると、アライバ・コンビの後継者候補という声も聞かれなくなり、いつしか守備固め要員になってしまう。

レギュラー定着に必要なもの

 それでも、ゼネラル・マネージャーとなった落合は確かな守備力を高く買っており、堂上の気持ちに火を点けようと試みる。2014年のドラフトで遠藤一星を指名し、福岡ソフトバンクで育成選手だった亀澤恭平の獲得を容認した。遠藤と亀澤は、堂上と同じ1988年生まれ。世代のトップを走ってきた堂上に、苦労してプロに飛び込んだ同級生をぶつけ、アスリートの本能である負けん気を引き出そうとした。また、兄の剛裕が自由契約になったことも、堂上の一本立ちにはプラスに働くと思われた。

 堂上自身も、背番号を兄の着けていた63に変更するなど強い決意を示したが、亀澤が開幕一軍に名を連ね、シーズン途中から遠藤も台頭する中、堂上は2010年以降では自己最低の43試合出場にとどまり、谷繁監督の戦力構想からも外れかけてしまう。

 これだけ燻っているにもかかわらず、2014年から選手会副会長を務め、歳下の選手たちからは慕われる人間性。一般社会なら、間違いなく若手のホープと持てはやされるだろう。しかし、堂上が身を置くのは、結果を残した者だけが生き残れるプロ野球界なのだ。

 今季も、開幕戦に遠藤と高橋がスタメン出場したものの、堂上は試合終盤の守備要員。だが、亀澤と遠藤が1週間余りで登録を抹消されると、打線に勢いがあったことも手伝い、守りへの信頼で4月3日の東京ヤクルト戦からスタメン起用される。

 地味ながら、プロで10年目を迎えたショートの守備は堅実。ただ、1カ月ほど経つと心身の疲労もピークになり、特に打撃面で精彩を欠くようになる。そして、谷繁監督が堂上の起用を続けるか否か判断しようとした5月8日の巨人戦――。2回表に先制の1号ソロ本塁打を放つと、3安打6打点の大活躍で勝利に貢献し、何とか徳俵で踏みとどまる。

 ここまで、中日のショートは堂上という働きは見せているが、まだシーズンの先は長い。名実ともにレギュラーと呼ばれるためには、何が必要なのだろう。落合はこう見る。

「どうしたら試合に出られるのか、レギュラーになれるのかを考え抜き、実現するのは大変なこと。けれど、スタメンで起用されるようになったら、自分のコンディションがどうであれ、試合に出続けなければならない。その苦しさは、出られない苦しさの何倍にもなる。だから、そこで消えていく選手が多いんだ。乗り越えるためには、よく食べて、よく眠って、心を病まないこと」

 果たして、今季の堂上は高い壁を乗り越えられるか。いや、乗り越えてほしい。なぜなら、チームの将来をも左右する大きな闘いだと思われるからだ。

横尾弘一

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:6/22(水) 11:00

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