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明暗分けた『植物図鑑』と『MARS』から、ティーンムービーのヒットの法則を考える

リアルサウンド 6/23(木) 19:49配信

 先週末の動員ランキングで2週ぶりに1位となったのは『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』。2位『64-ロクヨン-後編』と3位『ズートピア』がともに好推移を続けている中での1位返り咲きは、本作の興行面における高い実力を示している。以前、本コラムではEXILE兼三代目J Soul Brothersの岩田剛典の起用をヒットの最大要因として挙げたが、キャスト人気の結果は(劇場での舞台挨拶などによる動員も含めて)主に初動に表れることをふまえると、ロングヒットの兆しを見せている本作は、作品テーマそのものに観客から広く共感が集まっているとするべきだろう。すみません、見くびってました。(参考:興収では初登場1位! 『デッドプール』が日本で大ヒットを記録した意義)

 トップ10に初登場となったのは、『貞子vs伽椰子』、『クリーピー 偽りの隣人』、『MARS~ただ、君を愛してる~』の邦画3作品。その中でも意外だったのが、初登場8位に終わった『MARS~ただ、君を愛してる~』の苦戦だ。197スクリーンで公開、動員5万9,206人、興収7,903万9,600円という公開週土日2日間の記録は、今年の同じくショーゲート配給、同じく公開前に前章となるテレビシリーズを日本テレビ系で放映、そして同じくジャニーズ・タレント主演のティーンムービー『黒崎くんの言いなりになんてならない』と比べて、スクリーン数では123%と増加しているにもかかわらず、動員、興収ともに約40%という数字。ここまで低いと、もはやキャストが原因というよりも、企画そのものに難があったと言わざるをえない。

 『MARS』の原作は、惣領冬実が1996年から2000年にかけて『別冊フレンド』で連載していた人気少女漫画。累計500万部を超えるベストセラー作品で、原作そのもののパワーは十分。もっとも、90年代末という連載時期の世相も反映してか、作品世界はダークで少々バイオレント、主要キャラクターもそれぞれが深いトラウマを抱えている。映画化された本作の宣伝コピーが「甘い恋愛なんて、くだらないー」であることからも、昨今のティーンムービー・ブームのいわばオルタナティブを標榜した作品だということがわかるだろう。世代的に自分にとっては親しみを覚える世界で、試写で本作を観た時も「この感じだったら男の自分でも十分に物語に入り込めるな」と好感を覚えていただけに、自分が共感できるようなティーンムービーは、逆に今の主要な観客層から好反応を得られないという切ない事実を突きつけられたかたちだ。

 潔くベタな「泣き」をフィーチャーした『orange』や『植物図鑑』のような感動系の作品、あるいは昨年までの「壁ドン」、今年に入ってからの「ドS男子」といったようなその時期のトレンドに沿ったちょっとコメディタッチの少女マンガ原作作品。昨今ティーンムービーのジャンルがブームと言われるようになって久しいが、結局のところヒットしているのはそのどちらかだ。『MARS』のように傾向が明らかに異なる作品によって、ティーンムービーにおけるオルタナティブな流れが生まれるまでには、まだ時間がかかるのかもしれない。

宇野維正

最終更新:6/23(木) 19:49

リアルサウンド

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