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新入り子猫がやってきた!44匹の子猫を救った「わさびちゃん母さん」の現在

サライ.jp 6/24(金) 17:30配信

「空前の猫ブーム」といわれる今だからこそ、外で過酷な生活を送る野良猫たちの「猫生」にも思いを馳せて欲しい――。3年前、SNSで話題になった子猫のわさびちゃん。飼い主だった母さんは、今も子猫の保護活動を続けている。5月の末に2匹の子猫の里親が見つかってほっとしたのも束の間、6月18日に新たに生まれたばかりの6匹の子猫を保護して、大忙しの日々を送っている。

5月27日、一匹の子猫が里親さんに家族として迎えられた。保護名「はいはい」。新しい飼い主さんには「VIVO(ビーボ)」と名づけられた。遅れること半月の6月13日、はいはいの兄弟「もしもし」も、新しい家族との生活がスタートした。

この子猫たちは3月31日、札幌市南区の住宅街で、野良の母猫が生んだ6匹のうちの2匹。本来なら過酷で辛い野良猫生活を強いられるはずだった。

でも――。6匹の子猫は、わさびちゃん母さんに助けられた。

わさびちゃん母さん(以下、母さん)は、カラスに襲われ瀕死の状態の子猫わさびちゃんを父さんと一緒に救出、懸命の介護をし、日に日に元気になっていったわさびちゃんの様子をツイッターで発信したことで知られる。

懸命に生きようとするわさびちゃんの姿や、小さな命をいつくしむ父さん母さんの姿を綴った書籍『ありがとう!わさびちゃん』(小学館)は、多くの人々に影響を与えた。わさびちゃんが亡くなった後、「わさびちゃんが教えてくれたこと」を胸に、野良猫の保護活動を始めた母さんが、最初に保護した子猫が一味ちゃんたち兄妹子猫。その成長の記録も『わさびちゃんちの一味ちゃん』としてまとめられた。

その結果、野良猫たちの実態や実際に保護され幸せを掴んだ猫たちのルポが多くの人を勇気づけた。さらに、『ありがとう!わさびちゃん』を原作とする児童書『わさびちゃんとひまわりの季節』も小学生の推薦図書に選ばれている。この3冊の「わさびちゃんシリーズ」は、累計21万部を突破するベストセラーになり、多くの不幸な猫たちが救われるきっかけを作った。

■今も保護活動を続ける母さん

あれから3年。母さんは、わさびちゃん以降56匹もの子猫を保護。うち44匹がわさびちゃんちで育ち、母さんが見つけた里親さんのもとへと巣立っていった。

母さんは、冬の寒さの厳しい北海道で野良猫になるか、保健所に送られるかという命の瀬戸際に追いこまれた子猫の命を救っていたのだ。子猫ばかりではない。子猫を産んだ母猫たちも保護したり、不妊手術を受けさせたりしてケアする活動を続けてきた。

『ありがとう!わさびちゃん』の担当編集者が語る。

「父さんと母さんは、“わさびが残してくれたものだから”といって、印税のほとんどを野良猫の保護活動や寄付に使っています。そこまでやらなくても、と思うくらいです。本当に頭が下がります」

今年3月31日に保護された6匹の子猫は、母さんと、母さんが過去に保護した子猫たちの里親さん2家族とで2匹ずつ手分けして育て、里親さんを探すことになった。これまで保護猫を譲渡してきた里親さんたちが困った時に助けてくれる。真剣な里親探しと譲渡後に培った信頼関係あってこその助け舟だ。

里親さんが決まるまでの間、わさびちゃんちで育った保護名「もしもし」と「はいはい」の日々の様子は、母さんのブログ「わさびちゃんち」で毎日報告。多くのフォロワーが2匹の微笑ましい成長の様子や行方を温かく見守った。

■里親探しは「娘を嫁がせる親の気持ち」で

母さんの里親探しの方法はこうだ。

まず、保護した子猫に病気がないかなどを調べるため、動物病院へ。諸々の検査をして健康状態を調べ、月齢に応じてワクチン接種や駆虫をさせる。

その後、こまめなお世話をし、時期がきたら里親募集を開始。まずは知人や過去に里親さんになってくれた方たちに、猫を飼いたい人が周りにいないかを聞き、条件に合う人や家族がいれば面接する。そういった人や家族がいなければ、インターネットの里親募集サイトを活用。多数ある申し込みの中から、条件に合いそうな人にコンタクトをとる。

メールのやり取りなどで話が進めば、里親募集中の保護猫を連れて先方のお宅訪問をし、直接会って話をする。ペット不可のマンションではないか、脱走しやすいような構造ではないか、猫のトイレ掃除をはじめちゃんとお世話できる人なのか、家族にアレルギーの人はいないか、猫が病気になったり怪我をしたりしたら動物病院に連れて行ってくれるか、万が一本人に何かあっても猫を引き取ってくれる人はいるのか、家族として生涯大事にしてくれるのか……などなど、住環境を見ながら、直接話をするのだ。「娘を嫁がせる親の気持ち」といえばわかりやすい。

メールや電話でのやり取りでは好印象だったのに、実際に会ってみたら互いに認識が違うようだ、といったこともままある。そうやって丁寧にお見合いをするのは容易なことではないが、安易に譲渡するわけにはいかない。保護猫の命と幸せがかかっているのだから。譲渡された猫を虐待したり殺傷したりするといったニュースがあとを絶たない悲しい現実がある。母さんは真剣だ。

■「少しでも不幸な猫たちの役に立ちたい」という願い

6月18日、また新たに父さん母さんは子猫5匹を保護。保護活動を通じて知り合った人の知らせで、野良猫たちに餌やりをしている家の庭で産み落とされた子猫たちだ。このエリアでは既に母さんの活躍で知る限りの雌猫の不妊手術は終わっているのだが、餌やりをする人のもとには、どこからともなく猫たちが流れてくる。餌を与えるだけで不妊や去勢の手術をせず放置した結果、またしても野良の子猫が生まれた。

もしもしとはいはいの時同様、わさびちゃんちと協力者2家族が手分けしてお世話することになった。母猫は、諸々の状況から判断し、TNR(trap-neuter-return、捕獲し、避妊/去勢手術を受けさせ、元の場所に戻すこと)し、今後も地域で見守っていく予定だという。

こうして今回、またも救われた猫たちの命。母さんは個人で保護活動をする傍ら、2014年には本の収益の中から100匹のメス猫の不妊手術キャンペーンも実施するなど、「すべてのにゃんこに幸せを」の合言葉のもと、精力的に活動を続けている。

母さんに話を聞いた。

「今、私たちがこうしてささやかながら保護活動をしたり、ブログや本で保護猫たちのことを伝えたりすることができているのは、わさびの存在あってこそです。わさびという小さな子猫の存在は、あまりにも大きかった。全部わさびが残していってくれたものだと思っています。あの子が私達のもとに来てくれたのにはきっと意味があると思うし、わさびのためにも、少しでも不幸な猫たちの役に立てればと思って活動しています」

わさびちゃんちには、影ながら応援してくれる仲間たちがたくさんいる。わさびちゃんの影響を受けて保護活動を始めた人、ペットショップで購入するのではなく保護猫を飼うことにした人、温かい言葉をかけてくれる人、保護猫たちのことを気にかけてくれる人、支援の手を差し伸べてくれる人……みんなみんな、気持ちはひとつ。わさびちゃんからの「家族を捨てないで」のお願いを胸に、頑張っている。

わさびちゃんは、ずっとみんなの心の中で生きている。


■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。

文/平松温子

最終更新:6/24(金) 17:30

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