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障がい者の力をかりた「農福連携」で、耕作放棄地を再生

HARBOR BUSINESS Online 6/24(金) 9:10配信

 農業の担い手不足解消と、障がい者が活きいきと働ける場の拡大につながる「農福(農業・福祉)連携」の動きが注目を集めている。そんななか、自然栽培(無農薬・無肥料栽培)農法で農福連携に乗り出す障がい者施設が増えている。

◆農業と福祉の連携で1万ヘクタールの耕作放棄地を再生

 昨春、愛媛県や愛知県などの5施設が「農福連携自然栽培パーティ全国協議会」を結成。この1年で、北海道から沖縄までの27施設が参加するネットワークに成長した。コメ作りと野菜作りで耕作放棄地の再生をめざし、連携を深めている。農福連携の全国組織は初めてのこと。

 現在、日本国内には約40万ヘクタールの耕作放棄地がある。埼玉県とほぼ同じ広さだ。この2.5%にあたる1万ヘクタールの再生をすすめる。

 こうした動きが活発化するなか、自然栽培農法の先進地・愛知県豊田市で5月20日、自然栽培パーティとヤマト福祉財団共催による第1回全国フォーラムが開かれた。会場は、農業・福祉・流通の関係者、市民ら約500人で埋まった。フォーラムは前半、スクリーンを使いながらユーモアを交えて各団体の活動を紹介、たびたび会場から笑いを誘った。

◆障がい者だけでなく、高齢者や就労困難者の働ける場所に

 全国の障がい者施設での平均工賃は月額1万4000円ほど。これに障がい年金の6万5000円を加えても、生活保護費にも届かない厳しい状況だ。だが、自然栽培パーティの佐伯康人代表が運営する愛媛県松山市の障がい者支援施設では、2006年に就労支援をはじめて今では10町歩の耕作放棄地を農地に復活させ、平均工賃5万5000円を実現しているという。その活動は福祉関係者の注目を集め、佐伯代表は全国各地を飛び回って栽培法の普及を図っている。

「(障がい者の)仕事は限られていて、一人ひとりに合った作業をかならずしも見出せていない。だが農業なら『百姓』と言われるぐらいだから、さまざまな仕事を生み出せる。障がい者だけでなく、高齢者や就労困難者の働く場も生み出せる。さらに無農薬・無肥料だから、食べるだけでなく耕作も安心・安全。(福祉の側も)“困って”ばかりいないで、世の中を楽しくしていきたい」

 佐伯代表はこう話し、さらに力説する。

「農業はすそ野の広い産業。障がい者施設だけでも500か所、それ以外に生きづらい人を支援する組織や企業も含めて、1000か所の参加を見込んでいます。栽培だけでなく、農産物の二次加工や販売などさまざまな仕事も生み出せる」

◆障がい者と社会がつながることで地域が活性化する

 後半のパネルトークでは、農家の側から「農福連携」の実践に手応えを感じている地元・豊田の野中慎吾氏(農業生産法人みどりの里の農場責任者)が、適性を見極めて作業を任せると、はじめは暗かった女性が作業を習得して笑顔になり、社員よりも的確に摘み取り作業などをこなすようになった例などを紹介。「スタッフがフォローすればうまくやれる」と訴えた。

 工賃アップについては「結構難しい。でも、そこで収穫した野菜を持って帰ってもらうと、障がい者の表情がみるみる明るくなる」と、現物支給によってモチベーションが維持され、その野菜を販売することによって、工賃をはるかに超える高収入につながったエピソードも披露した。

 内にこもりがちな障がい者が外に出て汗を流す農業の現場。その仕事ぶりが外から見えることから、地域の人とふれあい“社会とつながる”機会が確実に増える。障がい者と地域の人々がつながれば、新たな価値観を生みだし、地域の活性化にもつながる。

「障がい者が農業を変え、農業から地域を変え、日本を健康にする」

 この流れは、全国各地でどこまで広がるのか、自然栽培パーティの活動から目が離せない。

取材・文/田中裕司(ノンフィクションライター。著書に、「不可能」と言われたイチゴの自然栽培に挑む30代農家の姿を描いた『希望のイチゴ~最難関の無農薬・無肥料栽培に挑む~』など)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/28(火) 17:45

HARBOR BUSINESS Online

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北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。